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映画 『夜明けのすべて』感想(2024)

2024年公開の映画でもう今年のベスト映画なのではないかぐらいの映画。

2/9公開の三宅唱最新作の『夜明けのすべて』試写で先に見る事ができたので、ひと足先にレビューします。

三宅監督の前作『ケイコ目を澄ませて』は16㎜フィルムの質感、余白と表情の演技と東京の風景のショットが際立っていた映画だった。

今作は前作同様、これらの要素が含まれている。PMSを持つ藤沢さんとパニック障害を持つ山添が同じ職場で寄り添いながら日常を過ごしてその時の出来事を映していく。

病気のことは主題のようにはおもえず、あくまで要素の一部であるように思えて主題は「君たちはどう生きるか」だと思った。宮崎駿はタイトル詐欺…………

よくある邦画だと話を脱線して登場人物の背景や回想のシーンが挿入されてそれで時間的制約もありわけがわからなくなっていく映画が多い。

山添がなぜここで働くことの背景になったのはシーンとして安易に入れず、山添の部屋にある『モノ』で示している。登場人物の表情でいまどういう気持ちなのかがわかりやすい。三宅監督の演出の良さで俳優の良さを出している。三宅監督の才能であると思う。

男女の物語だと恋愛に繋がってしまいますが、あくまで同僚という関係性でいまその環境にいるから支えている。

生きていると長い付き合いではないが、短い期間でめちゃくちゃ印象残る人はいたのではないかと思う。例えば、学校の先生など。

男女の友情というくだらない議論がありますが、あくまでも各々の関係性に委ねるスタンスでよかった。同性異性でも恋愛感情も持つ人がいるが男女は恋愛するものというバイアスが捨てているという点で2020年代的価値観の映画である。

人は変化していくという当たり前のことがいかに人生の豊穣さについてよく見つめることで日常に新たな視点ができ優しくなる。

生きづらさについて卒論を書いたのですが理想の映画だった。

過剰な比較や勝ち負けをするまえにまず自分の近しい人間関係についてみなすべき現代社会への処方箋のように美しい。



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