雑記(六九)
ラピュタ阿佐ヶ谷が今年の三月から、レイトショーの特集上映「絢爛ロマンポルノ時代劇 艶情夜話」をやっている。連日二十一時から、一般千三百円で一本立て。都内の映画館では、ときどきシネマヴェーラ渋谷でロマンポルノの特集があるが、定期的に観られるのはラピュタくらいではなかろうか。
上映作品は、曽根中生の『色暦女浮世絵師』、『性盗ねずみ小僧』、『㊙女郎市場』、加藤彰の『艶説 お富与三郎』、『性談 牡丹燈籠』、『㊙極楽紅弁天』、小原宏裕の『情炎お七恋唄』、長谷部安春の『戦国ロック 疾風の女たち』、白鳥信一の『㊙女郎残酷色地獄』、藤井克彦の『大江戸性盗伝―女斬り―』、田中登の『㊙女郎責め地獄』の十一本。三月二十五日に『色暦女浮世絵師』からはじまって、六月十四日に『㊙女郎責め地獄』で終わる。
濡れ場が多いのは当然だが、それに劣らず、血の流れる場面も多く、どの作品も、死のイメージと切り離すことができない。『色暦女浮世絵師』では、強姦をくり返す男に夫婦生活を破壊された浮世絵師の妻(小川節子)が男の股間に刃を下し、鮮血がしたたる。『艶説 お富与三郎』で、お富(続圭子)と情交にふける丑松(中原功二)を、かつてお富と恋仲だった与三郎(五條博)が背後から刺し、しかしとどめを刺せない与三郎に代わって、お富が何度も短刀を突き立てる場面の凄惨さも忘れがたい。
曽根の『㊙女郎市場』の主人公のお新(片桐夕子)は、どうも頭の回転が周囲に追いつかない様子だ。その体つきを見込んだ女衒の吉藤次(益富信孝)によって女郎屋に売られたお新は、さっそく客をとりはじめることになるが、女郎の何たるかも理解していないお新と、それをどうにかものにしようとする客たちとの騒動が延々と続く。天井が抜けたり、女郎屋に牛が乱入したりする場面はひたすらに可笑しく、ばかばかしいが、お新と交わった吉藤次が、快感のあまり絶命し、その遺体が打ち捨てられた場面は衝撃的である。
大八車に載せられてゴザを被せられただけの吉藤次の遺体に、お新は追いすがり、覆いかぶさり、またがって、遺体と情交し、男の性器はまだ生きている、という意味の台詞まで口にする。まるで、男はその性器においてしか価値を持たない、と言うかのようであり、夢中で身体を動かしながら発せられるために、観客は、それが、真理に触れているかのような感覚さえ持ってしまう。
曽根の『㊙女郎市場』は一九七二年、大島渚の『愛のコリーダ』は一九七六年。その色彩の感覚も含めて、両作はほとんど一直線につながっているように思える。
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