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ぼんやりとした信号

郷愁 三好達治
蝶のやうな私の郷愁!……。蝶はいくつか籬まがきを越え、午後の街角まちかどに海を見る……。私は壁に海を聴く……。私は本を閉ぢる。私は壁に凭れる。隣りの部屋で二時が打つ。「海、遠い海よ! と私は紙にしたためる。――海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がゐる。そして母よ、仏蘭西人の言葉では、あなたの中に海がある。」

https://www.aozora.gr.jp/cards/001749/files/55797_55505.html

昨日の日記の「ぼんやりとした信号」が、ちょうどうまく描写された詩を思い出した。

蝶のひらひらと捕まえどころのない思いは、一瞬にして、海岸にまで到達する。

思いの主は昼下がりに部屋で本を読んでいただけなのだ。

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