二冊目を手に入れたい。

好きな本を本屋で見かけると、買わなければと思う。家に帰れば枕元の本棚にしまってある本を。

本来であれば、わたしはハンガーを買い揃え、ノイズキャンセリングヘッドホンのために貯金をしなければならないのに、何冊も積み上げられ、孤独に佇む愛しいあの本を見ると、つい財布の中の2000円を確認してしまう。

愛しいあの本は家に何冊あったって良い。ひとつで読み、ひとつで眺め、ひとつで触る。嗅いだり、頬擦りしたり、たまには一緒に眠るのも良い。旅行をして、沢山の写真と切符を挟もう。

何者でも無いよりは、わたしの家の子であったほうが幸せだと信じている。

しかし、わたしにはわたしの生活があり、愛すべきあの本は多くの人に愛されるべきであるので、そっと2000円を財布に戻し、本屋を出る。

傲慢な人間だと、つくづく思う。

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