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バンクシ―展に行ってきた

(この記事は前に消してしまったアカウントの保存用に載せている記事です。時季外れで申し訳ありません。)

ちょっと前にバンクシ―展に行ってきた。

バンクシ―展

めちゃめちゃボリューミーかつ面白い展覧会であった。
たしか70点以上?の作品が展示されているのだ。前回行ったロンドンナショナルギャラリー展が60点ほどだったから、質量としては十分すぎるほどだった。
ホームページにあった苦手なタイプのキャッチコピーに懐疑心と共にめちゃめちゃショボいものを覚悟で行ったのだが、そんなことはない。ブースごとのテーマも明確で、映像作品から立体物からレプリカまでいろんなものがみれて飽きさせない展示になっていた。
なによりイラストがすばらしい。
徹底的な皮肉と批判を1枚のイラストの中で見事に表現していた。とんでも発想力のパレードのような、ストーリーをもった絵が何枚も何枚もある。芸術鑑賞というよりは、アトラクションに乗っているかのようなコミカルさであった。
擬人化ならぬ擬猿化や、実在するキャラクターに不穏を抱かせる構図。ギリギリアウトな絵が多い。『当局によって撤去された』というワードを何べんもきいた。そりゃそうだ。

そんな中で、爆裂な印象をもつのが音声ガイドである。
バンクシ―展には音声ガイドがあり、スマホのアプリをいれれば無料で作品の解説を聞ける。展示作品には簡単なキャプションとブースごと説明しかないので、あったほうがよい。
私もこれは聞いておこうとアプリをいれた。イヤホンも忘れずに持参した。会場で壁に書かれたQRコードを読み取る。
「#201 版権とはなにか」の再生ボタンを押した。
画面の映し出す再生時間は、4分30秒。え。
4分30秒?
長くね?
普通に1曲分くらいの長さがある。なにが話されるんだと思って再生ボタンを押すと、滑らかな女性の声でめちゃめちゃ丁寧な版画やアーティストについての説明が始まった。すべて聞くこと前提のガチなやつであった。
歩みを進め、次の絵の前に行く。見ようと思ったのはバンクシ―のバラまいた偽札による展示である。2分9秒。
横に展示してあるレタリングされた木の板にもガイドがある。1分59秒。
真ん中に展示してある色鮮やかな『ケイト・モス』。3分8秒。
そう、バンクシ―展の音声ガイドは70点以上ある作品のほぼ全てにそれなりの長さのあるガイドがついているのだ。
今までにも音声ガイドのある展覧会を見たことはあるが、大抵は1ブースにつき2作品程度。全体で20点くらいの展示に1分半もないくらいの解説であったはずだ。
それがこちらは70点。しかも平均2~5分の解説。ほぼ分量の殴り合いである。
バンクシ―の作品には必ずといっていいほどバックグラウンドがあり、観覧のためには歴史や社会情勢等の知識がいる。なにがなにを皮肉っているのかにはまず理解しなければならない。1作1作が風刺画を帯びており、わからない人をわかるようにするのだからある程度の長さは不可欠である。
歴史と知識と情勢とおもしろさと見どころと反応。それらを学生向け定食屋の白米のごとく積み上げて完成したのがこの音声ガイドなのだろう。楽しんでほしい。その感情の表れが70個の解説なのである。
いわばこれは主催者側の親切、優しさ。来場者を思いやる気持ちなのだ。ありがたいことです。
だが、いかんせん数が多すぎる。5分って。

最後の展示に病院へ作品を寄贈したエピソード共に「白と黒だけの作品ですが、この場所に少しでも明るさをもたらしますように」というバンクシ―の感謝のコメントが載っていた。
驕りを感じさせないユーモアのあるコメントで、とてつもなくかっこよく心に残っている。もしかしたらバンクシーは愉快な人物なのかもしれないと思って、ほんの少しだけ親近感が生まれた。
展示を通じて、バンクシーが世界中に熱狂的なファンがいる理由がなんとなくわかった気がした。
音声ガイドのボリュームと作品の心に残る感触。
バンクシ―展楽しかったなあ。


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