「PR」ってそもそもどういう意味?PRの定義と、なぜ今PRが重要なのかを、わかりやすく説明します。
皆さんは、「PR」という言葉を聞いて、何を想像しますか?
PR = 自己PR? マーケティング?広報?
PRの定義を改めて考えてみると、明確に答えることができる人は、あまりいないのではないでしょうか?PRの定義を改めて考えてみると、明確に答えることができる人は、あまりいないのではないでしょうか?
「広報へ配属されたけれども、何から手をつけていいかわからない...」
「PRが電車広告ではないことはわかっているけれども、厳密な定義がわからない...」
「PRってなんで必要なのか、明確な理由がわからない...」
今回の記事では、議論がPRの意味と、なぜPRの重要性が高まっているのかを、事例を交えながらお伝えしたいと思います!
1,PRとは何か?
PRとは「Public Relations(=公共との関係性)」の略のことです。
アメリカ最大のPR業界団体PRSA(アメリカPR協会)は、PRを以下のように定義しました。
アメリカPR協会、PRSA( Public Relations Society of America)
“Public relations is a strategic communication process that builds mutually beneficial relationships between organizations and their publics.” (和訳)"パブリックリレーションとは、組織とその周りにある一般社会との間に、双方の利益になるような関係性を構築する、コミュニケーション戦略のことである"
社会は大なり小なり、多様な人々の集まり(一般社会)で構成されています。
例えば、企業一つとってみても、「従業員」「株主」「消費者」「顧客」「投資家」さらには「国際社会」や「従業員の家族」まで、多岐にわたる人の集まりが存在します。これらのステークホルダーとの良好な関係性を構築することがPRです。
では、どのように「双方の利益になるような関係性を構築」をするのでしょうか?日本で初めに戦略PRを実践した、井之上パブリックリレーションズ 代表 井之上 喬氏のPRの定義が、非常に参考になります。
株式会社井之上パブリックリレーションズ 代表取締役会長兼CEO
パブリック・リレーションズ(PR)とは、個人や組織が最短距離で目標を達成する、「倫理観」に支えられた「双方向性コミュニケーション」と「自己修正」をベースとした、リレーションズ(関係性構築)活動である*1
一目見ただけでは理解が難しいかもしれませんが、PRの姿勢として、重要な要素が網羅されています。以下に3つの要素を解説します。
2,PRに必要な「倫理観」とは?
なぜ倫理観が必要なのでしょうか?利害関係の異なるステークホルダーと、関係性を築くためには、普遍的な倫理的価値観をシェアすることが必要不可欠です。例えば、最近でも、ステレオタイプを元に作られたCMが、人種や女性蔑視に繋がり、批判を受ける事件がありました。
倫理観を欠いたプロモーションは、短期的なアテンションを獲得することはできますが、長期的に見てデメリットの方が大きいです。
3,PRに必要な「双方向性コミュニケーション」とは?
双方向性とは、情報の発信者と受信者の間で、相互にフィードバックが起きている様子のこと。一方的な情報発信は、情報の受信者の声を聞かない、傲慢な態度として、信用を損ねてしまいます。
日本マクドナルドが異物混入事件を起こし、消費者の信用が損なわれた事件で、記者会見に臨んだ執行役員が「お客様に対する対応は適切だった」と一方的な主張をし、多くの非難を浴びたことを覚えている方も多いのではないでしょうか?
情報の受け手の声を真摯に聞き、応じる姿勢が、基本的な姿勢になります。
4,PRに必要な、「自己修正」とは?
一般社会は静的なものではなく、日々変化をし続けています。
そのため、自らを変化させながら、多様なステークホルダーの声に答える努力が必要になります。例えば、メルカリのプロダクトチームでは、「メルカリ消費の世の中ゴト化」として、一時的な「流行りモノ」ではなく、消費者の行動や、色々な市場等広く世の中に影響を与える存在であることを、調査報道やセミナーを通じて訴求をしています。
自己修正がないPRは、独りよがりのブログと同じように、廃れて行きます。
PRは、一方的な情報発信ではなく、良好な関係性づくりであること、ご理解いただけましたでしょうか?
5,なぜ今、PRが重要なのか?
PRの定義はなんとなくわかったけれども、なぜ今PRが重要なのかわからない。
そう思った方もいるのではないでしょうか?PRの必要性がわかる、2つの理由をお伝えします。
1) 情報爆発により、人が処理できる量以上の情報が出回るようになった
▲国立情報学研究所が発表した資料。情報爆発(info-plosion)が定量的に示されている
国立情報学研究所が発表したデータによると、2007年までの10年間で、世の中に流通する情報量は410倍に増加しました。SNSの発達により、情報発信者が爆発的に増えたことが理由です。
一方で、人間の処理できる情報量には限界があります。そのため、世の中に流通する99%の情報が、処理できない状況になっているのです。
2) 情報受容者の方が、情報の選択が可能になった
限られた情報しか受容できない中で、受容者は情報の「取捨選択」をするようになります。一方で、情報を発信する側は受容者を選ぶことはできません。そのため、表面的・一方的な発信が淘汰される時代になったのです。
つまり...
・情報爆発により、人が処理できない大量の情報が、巷に流れている。
・結果的に、情報発信者の力が弱まり、受信者に取捨選択をされるようになった。
情報量の爆発により、情報発信者の力が相対的に下がり、一方的な「伝える」コミュニケーションでは、太刀打ちできなくなった今。なぜステークホルダーとの関係性を見据えたPRが大事なのかを、ご理解いただけたでしょうか?
6,PR戦略の作り方
「理論上では理解はできたが、"良好な関係性"と言われても、実際の施作に落とし込むことは非常に難しい...」そう思った方も多いのではないでしょうか?
上場企業においても、同じことが起きています。電通パブリックリレーションズによると、
...我々の調査では、国内の上場企業(N=479)の中で中長期的な広報戦略を策定している企業は、わずか26.7%という結果が出ています。 つまり、4社のうち3社は、戦略なき広報活動を行っているということです。 阪井 完二、北見 幸一 電通パブリックリレーションズ 企業広報戦略研究所*2
広報目標を作ることでさえ難しい中で、"良好な関係性を作る"という曖昧なゴールを達成するために、何をすれば良いのか?ここからは、PR戦略のPDCAと呼ばれるフレームワーク「自己修正型ライフサイクル・モデル」をご紹介します。
井之上PRの考えるPRとは | 総合PR会社 株式会社井之上パブリックリレーションズ
自己修正型ライフサイクル・モデルとは、PRプラン立案の基本となる考え方のこと。6つのステップを継続的に回し、自己修正を重ねることを言います。
1. リサーチ&シチュエーション・アナリシス
PR戦略構築の第一歩は、組織が置かれている環境を徹底的に分析することです。主にSWOT分析や、メディアの露出分析、競合比較などの、分析を行います。
2,PR目標の設定
1で調査した基礎情報へと、経営目標・マーケティング目標を加え、目標を構築するフェーズです。井之上氏によると、
年間売上高を10%増にするとか、新製品を100万個販売するといった目標は、それぞれ経営目標でありマーケティング目標ではあるが、ここで取り上げるPR目標とは異なる
PRはリレーションズ活動であり、サービスの認知や好感度を目的とするものである。結果的にマーケティング目標へ寄与すべきであるが、それ自体が目的ではない、ということです。
3. ターゲット設定
目標を達成するためには、一般社会の「誰に」対して「どう」関係性を築くかを考える必要があります。井之上氏は、最終的なターゲットを「ビジネスターゲット」、ターゲットに届くためのマスメディアなどを「コミュニケーション・チャンネル」とし、双方のターゲットに対してアプローチすることが重要であると述べています。
4. PR戦略の構築
3で定めたターゲットに対して、どのようにコミュニケートするのかの方向性と戦略をたてます。具体的には、「何を伝えるのか?」のキーメッセージの策定と、ターゲットを動かすための「広報素材の作成」の2つがあります。
5,PRプログラムの作成
方向性と戦略を、具体的なプログラムに落とし込みます。この時、予算規模やスケジュール、内部のコミュニケーション体制の整備など、現実的な視点でプログラムを構築します。
6,インプリメンテーション(実行)と分析・評価
具体的なプログラムを実行し、フィードバックを駆使しながら、改善を重ねるフェーズです。ここで重要なのは、「自己修正機能をいかに速く実行できるか」です。
上の1~6のステップをPDCAサイクルのように回し、修正を重ね、目標を達成することが、PR戦略です。まだ想像が付きにくい方も多いかもしれません。さらに詳しい説明は、近日公開いたします。
7,まだまだPRを学びたい人へ
こんな文章を書きながら、著者自体もPRの初心者です。PRの本質はとても深く、まだまだこの記事でも触れることができない事項がたくさんあります。
これからPRについて本格的に学びたい人へ、以下にお勧めの本、3選を紹介いたします。
1,パブリックリレーションズ 第2版 戦略広報を実現するリレーションシップマネージメント 井之上 喬 (著)
PRを行う人なら誰でも知っているバイブルです。著者の井之上先生は、Appleのマッキントッシュ(Mac) を日本に普及させるPRを担った人物でもあります。本著では、PRの歴史的変遷や、PRパーソンとして必須の姿勢や哲学が書かれている、必読書です。
2,戦略思考の広報マネジメント 企業広報戦略研究所 (著)
3, 最新 戦略PR 入門編 本田 哲也(著)
「戦略PRとは、空気を作ることだ」と銘打つ本書は、PRの双方向コミュニケーションを考える上で、非常に参考になります。一方的な発信ではなく、世論を作り出す戦略は、多大な労力が必要だが、生み出すインパクトは大きい。
非常に長い投稿になりましたが、最後まで読んでくださり、誠にありがとうございました。今回は理論の説明に止まっているので、次回は具体的なケースを元に、Public Relationsの奥深さを紹介して行きます。
私自身も、まだまだPRの初心者であるため、記事を書くことで学んで行ければと思います。今後とも、どうぞよろしくお願いします。
*1:井之上 喬 : パブリックリレーションズ 第2版 戦略広報を実現するリレーションシップマネージメント
*2:阪井 完二、北見 幸一 電通パブリックリレーションズ 企業広報戦略研究所
*3:井之上PRの考えるPRとは | 総合PR会社 株式会社井之上パブリックリレーションズ
しょうへい
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