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細江慎治氏インタビュー再録(第4回)

#細江慎治
株式会社スーパースィープ 代表取締役音屋
ナムコにおいて「ドラゴンスピリット」(1987)を皮切りに、「リッジレーサー」シリーズなどの、時代を代表する様々なゲームミュージックを作曲する。ナムコを退社後、アリカを経て、スーパースィープを設立。様々なゲームに楽曲を提供するとともに、スィープレコードからCDをリリースするなど、精力的な活動を続けている。

設立直後のアリカに合流


鶴見:前回までのあらすじをカンタンに説明しますと、ナムコに在籍していながらトルバドール・レコードという同人音楽活動をスタートさせた細江慎治は、自らの運営する草の根ネットを拠点に、人脈を広げ、より大きな活動をするようになっていき…そしてある日、ナムコを辞めてしまった、と。

細江:うんうん。

鶴見:さて、細江さんは設立されたばかりのアリカに合流して、アリカのサウンド開発となったワケですが、佐宗(綾子)、相原(隆行)の2人もナムコを退社して、ほとんど同時期にアリカへ入社していますね? 確か、引き抜いたというワケではなかったと聞いた覚えはありますが…。やっぱり、細江さんがアリカへ行くという話になったから、「アリカいいじゃん!」となった?

細江:「給料上がるよー」って云ったら、来た(笑)。

鶴見:細江・佐宗・相原の3人が揃えば、ナムコ時代とほとんど変わりませんね。そして、アリカの仕事だけじゃなく、外部の仕事も受けてましたよね? 確か、当時SCEにいた私は「仕事受けられるよー…高いけど(笑)」と聞いた覚えがありますが?(笑)

細江:「高い」って云ったのは…たぶん…三原(一郎)じゃないかな?(笑) 外部の会社からのサウンド仕事も「アリカ」で受けていたから。

鶴見:当時の、外部から受けた仕事を見ると…「ブシドーブレード」「DRIVING EMOTION TYPE-S」…スクウェア系が多いですね。アリカは、当時のスクウェア方面と、資本的・地理的に「近い」会社でしたよね、直接的なスクウェア資本ではないにしても。それがあったから、スクウェア系の仕事を多く受けた?

細江:当時のスクウェアは分社流行りで、ポジトロンっていう元ナムコ系のチームが基本を作ってた会社があったり…ドリフ(=ドリームファクトリー)とかもそうだよね…その縁で仕事を受けるとかはあった。

鶴見:そういえばあの頃は、開発の人間がチームごと大手を辞めて、スクウェア資本で独立する例が多かったですよね。「引き抜き」みたいに云われてましたが…細江さんたちも「スクウェア資本に引き抜かれた」と思われてませんでしたか?

細江:思われてた(笑)。ナムコの中で、最初は「スクウェアに行った」と思われてたからね。だから送別会すらしてもらえなかった(笑)。

鶴見:あの時代は、本当に多くの人間が、色んな会社に移籍していましたよね。私もSCE時代は沢山の人間をSCEに(中略・裏話)でしたよ。今じゃ考えられませんね…って、表に書けない話はさておき(笑)。──外部の開発と仕事をする、というのは初体験でしたよね? やっぱり、やり方の違いに戸惑った?

細江:良くも悪くも、放置されていた。

鶴見:また放置プレイですかーッ!(笑)

細江:自分たちじゃなくて、「プロジェクト自体」が(笑)。

鶴見:つまり、しっかりコントロールされていないプロジェクトと関わって…。

細江:ずいぶんな数のプロジェクトが失敗してるよね。

鶴見:外から見ていると、アリカで制作した「ストリートファイターEX」ぐらいまでは、新しい仕事のやり方を模索しているなあ、という印象を持っていましたよ。というか、ストリートファイターEXで「ああ、はっちゃけ始めたな」と(笑)。

細江:アリカに入った頃は(アリカ内部の仕事は無くて)ヒマだったのが、徐々に忙しくなってきたから(笑)。

鶴見:ひょっとして、忙しくないと調子が出ない、特異体質なんですか(笑)。

細江:ホントのところは、ストリートファイターEXはサウンド3人で相談して、原点回帰しようと。メロディを重視した作りで一昔前の作り方に戻った。

鶴見:そして、アリカのゲームミュージックと云えば、「テクニクティクス」。これでナムコ時代の曲をモティーフに作ったモノが、まさに「はっちゃけ度マックスだなあ」と(笑)。

細江:あれはスィープになってから。

ついに独立の「機は熟した」?


鶴見:スーパースィープとして独立しましたが…。

細江:最初から、独立する方がいいとは思っていた。それをアリカに伝えつつ(仕事をしていたが)、資金的にも何とかなりそうなんで、独立した。結果的に、黒字が出るのに3年かかったけどね。

鶴見:ナムコを退社する時に「フリーとして独立する」という選択肢も考えていた…そこへ「仲間と一緒に」という要素が加わったワケですね。で、「機も熟した」と?

細江:自分の「機は熟した」けど、世間の機は熟してなかった(笑)。ゲーム業界が衰退を始めた頃だったんで、色んな人に止められた。会計系の人とか税理士の人にも「止めた方がいいんじゃないですかねえ…」と(笑)。

鶴見:でも、断固として独立した、と。その理由は?

細江:やっぱり他の会社と仕事をする上で、アリカの開発の中にいるっていうのは…漏洩を気にする会社があるんで。いくら(機密保持)契約をしてても、「見られちゃうのでは?」と思われるからね。

鶴見:で、スィープとして独立して外へ出ることによって、今まで「ちょっと…」と尻込みしていた会社の仕事も受けられるようになったワケですね。なるほど、「機は熟した」と思ったのは、そういう潜在的な取引先が増えてきたから、独立すれば仕事が増えるという算段が立ったということなんですかね?

細江:いや、そこまでは考えてなくて。「なんとかなるべえ」、と(笑)。

鶴見:このインタビューを通じて解ってきたんですが、細江さんの、そういった節々でのテキトーな選択が、後から見れば「大きな流れに乗っている」ってことが多いですよね。やっぱりいつも思ってるんですかねえ…「俺の歩いた跡が道になる」とか?(笑)

細江:むしろ「ペンペン草も生えません」みたいな(笑)。

鶴見:ほらまた、テキトーな言葉を選択してる(笑)。

(一同爆笑)

スーパースィープとして独立


鶴見:スーパースィープの立ち上げメンバーは確か…。

細江:3人。佐宗さんと、渡部恭久(Yack.)。

鶴見:Yack.は結局スィープも辞めてフリーになりましたけど、でも立ち上げの時にはタイトーを辞めてきたワケですよね。最初から、人は増やそうと思っていたんですか?

細江:スィープ自体、将来的には人を増やさないとやっていけないな、とは思っていた。──立ち上げ当時はヒマだったけど。目茶苦茶ヒマだったね。しばらくヒマだった。

鶴見:いや、そんなに「ヒマ」を連発しなくても(笑)。よっぽどヒマだったんですね。

細江:お金が無くなりました(笑)。ゲームの開発スパンって、1年前後のが多いじゃない。だから、会社を作ってもヘタすりゃ1年は仕事を出してくれないワケで。アリカの仕事の続きはあったけれど、狭間は多少あったね。

鶴見:でもまあ、地道に仕事が増えて、「スィープレコード」のCDも出し続けて、人も増やさなきゃで、今に至る、と。
──ではここで唐突に、スーパースィープの会社案内をしていただきましょう(笑)。所在地は東京の五反田で、「代表取締役音屋」は細江慎治、と。今現在、社員は何人なんですか?

細江:9人。作曲するのが7人で、経理とかの業務が1人と、八木(貴弘)ちゃんが1人。

八木:はーい。

鶴見:なるほど、うさん臭いCDプロデューサーの八木ちゃんが1人、と(笑)。

八木:うるさい(笑)。

#八木貴弘
スーパースィープ所属のCDプロデューサー。ゲーメスト誌のライター、秋葉原トライタワー店員、アリカの企画などの職を経て、サイトロンにてディレクターとして様々なゲーム音楽CDの制作に関わる。サイトロンがハピネットに吸収合併された後、退職してプラプラしていたところを細江氏に見込まれて、スーパースィープに入社。

鶴見:業務内容は? …というか、会社を設立する時に「定款」を書いたと思うんですけど、どんな業務をする会社にしようと思っていましたか?

細江:定款はね…音楽系の会社の定款はこんなもんですよ、と司法書士の人が持ってきたんで「じゃあそれそれ」とOKしただけ。

(一同爆笑)

鶴見:じゃあ特に、将来に向けての「野望」は書かれていないんですね(笑)。うさん臭いCDプロデューサーを入れるのも、ごく一般的な話だった、と(笑)。

細江:そういうCDのプロデュースは、それまでも自分でやってた。ただ、自分で作曲とCDプロデュースを両方やるのは大変なんで、専任の人間を置こう…と思っているところに、プラプラしてる八木ちゃんが現れて(笑)。

鶴見:人材がいたから任せた、と(笑)。自分が道を作った跡に、別の担当者をアサインして通らせる、みたいなことですね。綺麗に云えば(笑)。

社長になっても現場仕事


鶴見:色々な業務は専任のスタッフに任せるということは、社長業が忙しくなってきたんですね?

細江:社長業が大変ってのは、あんまりない。全然ない。…という甘い見積もりが、赤字の方になびいていくのか(笑)。

鶴見:とすると、細江さんの仕事としては、今までと変わらない現場仕事がメインなんですね。忙しいと云っていたのは、純粋に現場仕事が以前より格段に増えたと(笑)。
そういえば先日、ゲーム雑誌編集の人間と話していたら、「昔の方が、ゲーム音楽作家としての細江慎治という名前が目立っていた」みたいなことを云っていましたけど…。

細江:任天堂とかの子供向けのゲームだと、カスタムロボも…NARUTOもそうか。数で云えば、そっちの方が断然売れてるんだけど、名前は出てても「誰が作っているか」は意識されない。

鶴見:(カメラに向かって)そういうことなんですよ!

一同:誰に向かって云ってるの?(爆笑)

鶴見:自分も子供向けにゲームを作っているんで、ついヒートアップしてしまいました(笑)。いや実は、自分が作っている「ラチェット&クランク」というシリーズで、細江さん佐宗さんにとある曲をやってもらったんですが…確かに、特に表には出しませんね。

細江:子供向けだと、まあ、ユーザーは意識しないからね。

鶴見:さて一方、ユーザーが意識する外部の仕事と云えば、ビーマニに楽曲を提供していますよね? どういう経緯だったんですか? 「テクニクティクス」で、ナムコ楽曲のはっちゃけたアレンジっぷりが認めれてオファーが来たとか?

細江:いや、あれはね、たまたま(笑)。

鶴見:またまた(笑)。

細江:アリカと色々関係のある、カプコンの東京開発が新宿にあって「今度飲もうよ」という話になってた。で、飲みに行ったら、隣のビルにコナミの開発が入っていたんで、「せっかくだから連れてきました」と、ビーマニのサウンドの人たちがゾロゾロとやって来て(笑)。

鶴見:じゃあ、飲み会の最中に…。

細江:盛り上がって、「今度仕事でやりましょう」と(笑)。

鶴見:「飲み会で人脈が出来る」というのはナムコ時代と変わらないものの、仕事のフィールドは、外に出たことで、確実に広がったワケですね。
──あと、太鼓の達人にも参加されてますよね。ちょっとそこで「最難曲」について、ナムコのLINDA AI-CUEと一悶着あったとか?(笑)

細江:太鼓の達人で、発注があったんで曲を書いたんだけど──今までは、LINDAがいちばん速い難しい曲を作っていたのが…

鶴見:「今回は俺が乗っ取ったぜ!」、と(笑)。

細江:細かく叩かせれば難しくなるんだけど、まあ「細かく叩かせてもプレイヤーに許される曲」。LINDAが云ってるだけで、本当かどうかは判らないんだけどね。

細江:あれもビーマニと一緒で、どんどん難しい方へ難しい方へとシフトしてるから。コアな人たちは凄い。

鶴見:まあ太鼓の達人はライトユーザーも多いですけど、難しい曲は相当イッちゃってますもんね。ビーマニ・ドラマニ系は、ほとんどがコアなユーザー向けにイッちゃってますし。

クラブ活動へは普段着でどうぞ


鶴見:ビーマニ系と云えば、曲を提供する際の名義が「Samplingmasters MEGA」ですけど、同じ名義で、クラブイベントにDJとして参加していますよね?

細江:「LINEAR」というイベント。隔月で年6回やってて、もう4年になる。

#LINEARは09/01/24にVOL.30を迎えた。詳細については、http://linear.nu/

鶴見:「サンプリングマスターズ」名義ということは、やっぱり「どテクノ」でBPM(テンポ)もむちゃくちゃ速くて、来場者を踊らせまくっているんでしょう? どんなジャンルを選曲しているんですか?

細江:ハッピーハードコアとか、ガバ。

鶴見:「ガバ」は分かります。「ロッテルダムテクノ」にルーツを持つ、むちゃむちゃ速いテクノですよね。いわゆる「ハードコアテクノ」。「ハッピーハードコア」というのも…?

細江:その系統。あの辺も細分化されててね(笑)。

鶴見:あれ? 元ネタはどこから引っ張ってきているんですか? 確かCDはあまり買いに行かないような話を聞いたような…?

細江:あの手の(曲)はCDにならないのも多いから。もっぱら海外のサイトからダウンロード販売で買ってる。CDにならない・日本で売ってない・売り切れたら再入荷しない…。

鶴見:「3ない主義」か(笑)。まあ、ダウンロード販売で「ポチっとな」出来るんであれば、問題ないですよね。
ちなみにそのイベントって、ギャラの出る「仕事」なんですか?

細江:いや。ノーギャラの…趣味?(笑) 仕事と絡んでるとすれば、CDとかの宣伝ぐらいかなあ…?

鶴見:宣伝ということは、イベントの客層もゲーム好きが多かったり?

細江:あえて区分けするなら「アキバ系」みたいな。まあ始めた頃に比べて、入れ替わってるけどね。

鶴見:アキバ系! 渋谷系とかじゃないワケですね(笑)。なら、「着ていく服が無い。着て行く服を買いに行く服がない」なんてことはなく、普段着でフラっと行っても問題ないですね。ユニクロでOK?(笑)

細江:ユニクロでOK(笑)。

鶴見:じゃあ今度、ユニクロ着て行きます(笑)。

今も「ゲームミュージック」な、元・後輩たち


鶴見:今、ゲーム音楽を好きな人間ってのは、どういう人種なんですかね? 昔のゲームミュージックを好きなオヤジ層は、まあいるワケですけれど…それ以外の若い層にとって、ゲームミュージックってのは…?

細江:BGMになってる。

鶴見:我々オヤジどもが体験した黎明期の「ゲームミュージック」は、まさにゲーム機のハードウェアテクノロジーが進化していくのと軌を一にして、音楽が進化していったワケで、そのあたりが面白かったんですけどね。

細江:テクノポップだったね。でも今は音楽もBGMで「有るのが当然」。

鶴見:そんな中で、あえて「ゲームミュージックを聴かせる」ゲームが、ビーマニであり、太鼓の達人であり…そして実は「iM@S」もそうですよね。

細江:うん、音ゲー。ダイレクトに音楽を聴かせる。

鶴見:で、iM@Sの楽曲をナムコの社内で作ってるのが…未来研や未来犬で知っていた、当時はペーペーだった人間だったりして──この間、カラオケで友達が「エージェント夜を往く」…例の「とかちつくちて」を唄った時に、作詞作曲が「NAMCO(LINDA AI-CUE)」とか書いてあって、むちゃくちゃビビリました(笑)。

細江:あと、佐々木マンも。

鶴見:そう「佐々木宏人」とか書いてあって、それもビビった。お前、「まにきゅあ団」のダンサー、佐々木マンだろー!?(笑)

細江:佐々木マンは、(ナムコ)辞めちゃったけどね。会社が引っ越して、通うのが大変になったとか云って(笑)。

鶴見:そして、佐々木マンと一緒に、まにきゅあ団のダンサーをやっていた佐野電磁は、「DS-10」で、これまた「ゲーム機で音楽を聴かせる」ことに、別方向からアプローチしている。

細江:いまや世界のDS-10ですから(笑)。

鶴見:こうした方々が「細江慎治のDNAを受け継いでる」とか書くと、カッコよくないですかね?(笑)

細江:そんな(笑)。

鶴見:状況的・歴史的には、そう見ても良さそうですがね。

スィープ式「ゲーム作曲家に必要な条件」


鶴見:というワケで、これから細江慎治のDNAを受け継ぐ(笑)、スーパースィープのゲーム作曲家は、どういう人を採用しているんですか、社長?

細江:経験者を入れるんじゃなく、ほぼ新入社員として入社してる。

細江:最初に入った安井君ってのは、元々アリカ時代に面接して…たんだけど、自分らがアリカを辞めるから、その話はポシャって。その後でスィープになってから、熱烈なメールを送ってきたんで…じゃあしょうがねえなあ、と(笑)。

鶴見:その他の方は?

細江:ネットを辿ってくるとか。人手が足りない時に、どっから現れた人間が、使えそうだったら(入れる)。

鶴見:今は、人手は足りてるんですか?

細江:足りて…ない。けど、使えそうな人じゃないと「応募してこい」とは云えない(笑)。

鶴見:ギャラクシアン3に佐宗さんを、F/Aにぢょんたん(相原)を、リッジに佐野電磁を引っ張ったような、「おメガネにかなう」人じゃないと抜擢出来ないというコトですか?

細江:いやそこまでは(笑)。あの時は社内だったから、素性も相性も分かってたけど。

鶴見:今の時代だと、例えばネット経由で作品を公開している人間と組む、なんてコトは有り得ますかね?

細江:うーん…ゲーム音楽の場合、音楽が出来るだけじゃどうしようもないってこともあるし、ね。例えば携帯機とかの開発だとハードを操作するための低レベル言語(ここではC言語による開発環境を指す)が必要だけど…そのためのソフトウェア的概念を全く受けつけない人だと困る。

鶴見:いわゆる「低レベル言語」ってのは、ハードウェアの知識も必要だから、操る人間には「高レベル」のスキルが必要とされますよね。音楽プラスアルファとして、ゲーム業界に向いたスキルがあってほしい、ということですかね。

細江:ウチは理系成分が必要かな。その代わり、音楽は完璧じゃなくてもいい。音楽が完璧だけの人は一杯いるから。

鶴見:今、何をすれば「ゲームミュージックの最前線」に合流して、頭角を現すことができますかね? 若い人間が頭角を現しづらい、この時代に。──例えば遙か昔、バイトの細江君がドラスピを勝手に打ち込んで頭角を現した「伝説」のように。

細江:「頭角を現しづらい」ってのは、単にオヤジの見方で(笑)。例えばビーマニの曲をやってる若いコは、そっち系の人たちにはすごく売れてる。細分化されたコミュニティの中では「神」みたいな。分散しちゃってるからオヤジには見えにくいけど、カテゴリーごとに、新しい人が出てきて、自分の世界をガンガン築いてる。

鶴見:なるほど、流行歌の世界でも、昭和時代に生まれたような「国民的大ヒット」が、平成時代には生まれづらいようなものですね…って見方自体が、既にオヤジくさいですが(笑)。

細江:それと、プロモーション的意味合いで、名の知れた人を表に出すことが多いだけで…。

鶴見:出来る人間は、いつか頭角を現す…って考えるのはファンタジーですかね?

細江:ファンタジー過ぎる…けど…不況だと伝説が生まれやすいから…逆にチャンスかもしれない。

鶴見:今、不況をひっくり返すようなエポックメイキングな業績を打ち立てれば、圧倒的に伝説になれますものね。アリカ社長の西谷氏が、「ファイナルファイト」「ストII」でやったように。

細江:もしくは、タイムマシンを作る!(笑)。

鶴見:遙か昔に戻って、パジトノフ氏よりも先に「テトリス」を作ったり(笑)。

細江:第1作目からTGM(テトリス・グランド・マスター)みたいな(笑)。

(一同爆笑)

スーパースィープ、絶賛活動中!


鶴見:スィープの新作について…というかですね、色々と謎なモノだらけじゃないですか? まず、「名鉄パノラマカー・メモリアルアルバム」って何ですか!?

細江:じゃあそれは八木ちゃんから。

八木:名鉄の「パノラマカー」ってのが、26日でラストランなんですよ。パノラマカーと云えば、「ミュージックホーン」という、電車が駅に着くときに必ず流れるビープ音のような曲が、昔から有名なんですよ。それを曲にして、ニコニコ動画にアップしていたのが「わんかっぷP」さん。初音ミクの職人さん。

鶴見:ニコニコ動画に「MAD」や「演奏してみた」「歌ってみた」なんかで、光るモノをアップロードしていた人間を、スカウトしたということですか?

細江:いや。そもそもは、著作権的な問題が色々と…(テクニク)ビートは特に、ナムコ音楽なんで…。

八木:三原さんが「何しとんねん!」と(笑)。

細江:じゃあ、それを承認出来る形に直してくださいと。

八木:それで、わんかっぷPさんは、曲も書けるし暖かい絵も描けるということで、お付き合いが始まった、と。

鶴見:なるほどねえ、それで「名鉄パノラマカー」なんですか。

八木:「パノラマカー」は、名古屋組が集まってるんですよ。わんかっぷPさんも名古屋、唄っている「織姫よぞら」さんも名古屋…そして、細江も下呂(岐阜県)だから名古屋に近い、と(笑)。

鶴見:そこに繋がりを見いだしますか!(笑) フリーダムwww
じゃあ、「スクリームの人」もニコ動つながりなんですね、わかります。

八木:「ヴァイオリンで弾いてみた魔界の調べ/スクリームの人」は、私が好きなんで。

鶴見:それは聴いたことがあります。というか、自分は「歌ってみた」に歌唱をうpってる人なんで(笑)、「歌ってみた」「演奏してみた」は、割と聴くんですよ。あれ、いいですよ、わかります。
──それよりも! 「はにい いんざ すかい」(1988年・FACE)! PCエンジンで発売になったゲーム自体はもちろん知ってますけど…なぜ今「はにい」なんですか!?

細江:思い出のゲーム。あのゲームって結構インパクトあったんで、覚えてたの。PCエンジン自体も最初っから色々関わり深かったし。だから「『はにい』しかない!」と。

鶴見:わかりません><
そもそも「はにい」は自分の関わったゲームじゃないですよね?

細江:「はにい」のことを探っていったら、いつも仕事してる齋藤さんて人が元FACEの人だったり…。

鶴見:その人の伝手で?

細江:齋藤さんは「はにい」には関わってなかったらしいけど(笑)。っていうか、それが判ったのは、CDを作るって決めた後だったけど(笑)。

鶴見:全く関係ないじゃないですか! …つまり…「思いつき」?

細江:そう、思いつき(笑)。名作は世に残さなきゃいけない、と思って。「はにい」はイイ!

八木:思いつきなのに、元の曲を15曲+アレンジを10曲も(笑)。

細江:面白がってやってるのは自分だけかもしれないけど(笑)。元FACEの齋藤さんも、「先輩の曲だから」と、快くアレンジを引き受けてくれた。

鶴見:もう、力が入りまくりですね。──じゃあ、「名作は残さなきゃ」シリーズは、まだまだ続く?

細江:続く続く(笑)。「●●●●●の野望」とか。

鶴見:wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwぱねえwww

八木:ラスト1枚の、「リッジレーサー6 ダイレクトオーディオ」は、5と7は出てるのに6が出てないから…止まっていた企画を色々とクリアにして…。

一同:よっ、敏腕プロデューサー!(笑)

(一同爆笑)

細江:スィープレコードは、大きい会社じゃたぶん出来ない「掘り起こし」を、今後もがんがんやるから。

八木:ナムコ物は、唯一復刻をやり残しているから、ぜひやりたい! …やれるタイミングがあれば。

鶴見:なら私は、「BEEP」のソノシートの復刻を希望しておきますよ。「ex.氷水芋吉」として(笑)。

細江:個人的には源平(討魔伝)やってほしいかな。アレンジも「俺にやらせろ」(笑)。

鶴見:面倒なことを専任の八木ちゃんに任せて、面白いことは「俺にやらせろ」というスタンス、だということでよろしいですか?(笑)

細江:よろしいです(笑)。

(一同、一人を除いて爆笑)

八木:うーんうーん…(苦笑)。

鶴見:色んな物が歴史に埋もれてしまう前に…当時の生き証人の脳味噌がジジイ化してしまう前に、早く・大至急・早急によろしくね、八木ちゃん。

細江:切り捨てられる前にやらないとね、八木ちゃん。

八木:うーんうーんうーん…(苦笑)。

細江:皆んなが「何を求めているのか」を知りたいかな。自分じゃない感性で「これがどうしても欲しい!」ってのを。

鶴見:「『はにい いんざ すかい』がどうしても欲しい!」的なレベルのモノですね。

細江:有名どころでは「たのみこむ」「復刊ドットコム」みたいな、ユーザーの要望を吸い上げるところはあるけれど…ウチで対応出来るのは、やりたい。

鶴見:声が集まったら、八木ちゃんよろしくね。

八木:うーんうーんうーんうーん…(苦笑)。

(一同爆笑)

※2008年12月25日/スーパースィープにて収録

再録は以上になります。

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