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いじめっ子は変わるのか?

小山田圭吾さんの過去のいじめ問題がどんよりと心を支配している。さまざまな意見があるが、これだけ多くの人がいじめはNOと言いながら、世の中にはなぜか沢山のいじめがある。大人になってからもだ。

小山田さんの話で、私も自分の中学生の頃を思い出した。


私の中学は、D小学校、W小学校、N小学校という近隣の小学校3校から進学してきた生徒で構成されていた。
私の小学校はD小だったが、これが私の学年に限るかもしれないが非常に健やかなる学校で、いじめといういじめを目にしたことは無い。

しかし、W小とN小には酷いいじめがある、という噂は耳に入っていた。中学一年生として最初の登校日を迎えた私は、そんな世にも恐ろしいいじめっ子たちと同じクラスになったらどうしようと戦々恐々としていた。

その恐怖は現実のものとなる。私は、N小からやってきた鳴り物入りの問題児、Tくんと同じクラスになったのだ。Tくんは柔道部で身体がバカデカく、小学生の頃は県大会でもベスト3級のフィジカルの持ち主だった。武道をやっているくせに道を外れたいじめ加害者だ。ルックスは完全にジャイアンである。いじめっ子のイメージとしてはステレオタイプ過ぎて、逆にリアリティを失うくらい。

そして確かに中学でも彼はいじめっ子だった。あまり具体的なことは覚えていないが、身長もクラスで3番目くらいに低く、痩せっぽちの小鹿のようだった私にとっては、Tくんに目をつけられたらひとたまりもない。当時の私は何も出来ず、いじめの傍観者だった。これは今も心が痛くなる。

T君のいじめのターゲットだった子は、クラスにも何人かいた記憶がある。なんなら、W小のいじめっ子や、我がD小のいじめっ子素養のあった子らとも徒党を組み、大勢力の頂点に君臨していた。

それが二学期になったある日、学年の集会で、T君は血気盛んな生活指導の体育教師から、「この中にいじめの主犯がいる」とみんなの前で吊し上げられた。いじめられていた1人が、勇気を出して先生に全てを語ったのだ。
「もう絶対にいじめはしません」
Tくんは私たちの前でそう誓わされた。

90年代、体罰も余裕で横行していた頃だが、その時先生からは手はあげられなかったと記憶している。
殴られたわけでもないのに、大きな体でしょんぼりするTくんのあの時の顔は忘れられない。

それからである。
Tくんは、人が変わったようにいい奴になった。
いじめを密告した子ともむしろ仲良くなって、いつも同じグループで遊んでいた。陰でいじめていたとかでもない。本当に仲良しグループになっていたし、武力あるTくんがいい奴として存在することで、その周囲からいじめは無くなっていた。

いいジャイアンとなったTくんは、これまた気は優しくて力持ちの分かりやすいステレオタイプで、私も俄然付き合いやすくなった。当時流行っていたバスケットシューズのことを色々教えてもらったり、修学旅行も同じ班だったり、中学を卒業するまでに多くの思い出がある。

人はこんなに突然変われるんだ。当時の私はそう思っていた。

しかし後になって思うと、それは違う気がする。
彼は本当は、少なくても中学に上がった頃には、いい奴だったんじゃないかという気がするのだ。

何が彼をいじめっ子にさせていたのだろう。人からいじめっ子と思われているため、その役割を演じざるを得なかったのか。本当はやめたい葛藤があったのか。

とにかく、先生に怒られたことは、彼にとっていじめっ子を演じることをやめられるきっかけになったんじゃないか。私はそんな気がするのだ。

中学生の頃を思い出すと、結局1番の問題児として入学して来たTくんは、小学校の頃はどれだけ酷いことをしていたのか全く分からないが、結局いい奴だったという記憶しかない。明確にいじめをしていたというわけではないが、人を見下しバカにしている奴や、本当に性格が悪いなと思う奴は他にいた。田舎なので本格的な不良になり、窃盗で捕まった奴もいたし。私の記憶の中で悪はTくんではなく、そういう連中だ。


あと思い出すのは、小学校の頃はTくんたちのいじめのターゲットのひとりで、おそらく辛い小学校時代を過ごして来たのだろうJくんという子がいたことだ。

私は中2になり、Jくんと仲良くなる。
彼は中1で私やTくんのクラスではなかったために、その頃はもういじめられてる様子はなかった。

そして音楽に詳しかった彼が、私に教えてくれたもののひとつがフリッパーズギターなのである。

小山田さんのいじめ話がロッキンオンに載ったのが94年1月なので、私たちはちょうど中学2年生…。
Jくんはロッキンオンを読んだのだろうか。

さて、私がなぜJくんと仲良くなったかというと、私には中2の時に同じクラスになったK君という親友がいて、KくんとJくんは同じ科学部だったのである。

Kくんについてはまたいつか。

(続く)

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