潮騒ぎな釣りロック【Under Pressure】

◉随分前に仕事仲間と渋谷で飲んでる時、隣の外国人カップルがイギリス・ロンドンから新婚旅行中とのことで「そりゃおめでとう、ようこそ東京へ！一杯奢るよ」なぞ恰好をつけてみた。
初めての日本、初めての東京、初めての渋谷。
ウルトラハッピーハードコアノイズミュージックをスクランブル交差点で巻き散らす「バーニラバニラ高収入！」を目撃したり「J-Pop America Funtime Now!」の本場でマリオのぬいぐるみ着て公道を走ったり、これは果たしてかっこいいのか？かっこ悪いのか？よく解らなくなって疲れ果て会話も弾んでなかった異国の新婚夫婦が、ローカル民からクラフトビール馳走になればテンションは一気にあがり会話も弾む。

特に奥様は日本が大好きなご様子。小さい頃から憧れの国だったらしく東京→京都→大阪→広島→福岡→沖縄の行程を組んでるとか。友人が流暢な英語で「日本人でも京都や広島は仕事がない限り10年に一度も行かない、いや、ほとんどの人が一生に一度ぐらいしか行かないと思う。贅沢な旅ですね、素晴らしい旅になると思います」
と発したので、俺もいつか初めて会ったイギリス人に言いたかったことを伝えた。
「もし、宇宙人が地球にやってきてお前らの音楽を聴かせろって言われたら迷わずビートルズを選ぶ」。
疲れた目が安堵に変わりニヤっとした旦那さん「イギリス人として誇らしいしすごく嬉しい。だが俺はブラックサバスだ！」てなリバープールを完全無視した応答...流石は音楽大国に生まれ育ち暮らす英国人。
「ワタシハXJAPANノダイファンデス！」て言われたときに「めんたいロックを聞いてみろ！博多は日本のリバプールだ！」て返す感じだろうか。
帰りのタクシーで人生3度目ぐらいのブラックサバス初期を聞いたらバリバリかっこいいやんか。また新しい音楽に出会えた。

◉ハードロック・ヘビメタの類は今も昔も正直苦手。ボンジョビやモトリークルー系ハードロックは音、恰好を見ただけで気分を害するか笑い転げるかどっちか。ニルヴァーナもファーストは当時から共感できず単にアメリカ系ハードロックやんと思ってて、好きな曲で口づさめるのは「POLLY」ぐらい。歌詞の意味を最近知って食傷。シャッフルで流れてくると2秒でスキップ。それがハードロック・ヘビメタ系。

小学生高学年の時、実家のガレージが５つ年上の双子の実兄によりバンド小屋化され、前衛的な形や色のヘアースタイルをひっさげた不良少年少女たちが日々10人ぐらい屯し、次兄が組んでたヘビメタバンドは「うギャょーなんでんかんでんよかろうがぁぁいゃじゃぁぁぁー」と小学生には悍ましい歌詞と生音が鳴り響く家で育ったのが、今ふと思った要因かもだ。

◉高校生の頃、突然帰省してきたヘビメタ次兄に「オモロイ釣りおしえちゃるけ行くぞ」と言われおんぼろミラージュで田川郡添田町のダムに行き、スピニングタックルに変な臭いの虫の様なゴムを付け投げてほおっておいたら「おぉなんかキタキタ、ちかっぱひいとるばい」と慌てふためいて釣れたのがブラックバスだった。二人で2桁以上釣れた記憶がある。晩飯時息子たちから話を聞いた父は嬉しそうに「ほほう」とニヤニヤし、次の日に街で一店舗だけあったバスタックルを置いてる釣具屋に行き一式購入。その後やってくる空前のブラックバスブームの前でありボースなど絶対にない幸せな頃で、暇さえあればダムへ向かう一家。

◉ある日、あろうことか親父は朝4時に「オイ、起きろ」「はぁ？」「釣り行くぞ」「オトン俺今日学校ばい」「今日の授業は釣りより大事なんか？」「いや、いつもと変わらん」「ほな行くぞ」「オカンに怒られるばい」「オカンに怒られるのと釣りどっちが好きや？」「しゃーしー、解ったいくばい」

薄暗い田舎道をディアマンテで走る道中親父は「学校は面白いか？」「おもろいばい、小中高なら間違いなく高校が面白いね。友達もちかっぱ個性的でオモロイ奴が多い」「お前中学の時荒れてたからなぁ」「荒れてた？そやね、オトン職員室に何度か呼ばれてあんときゃ悪かったごめん」「高校の先生は好きか？」「好きな先生が多いね、変わっとるよ。東大出て漢文古文教えてくれる先生はベスパ乗って学校来るしレコード1万枚ぐらい持っとる。なんで国語の先生しよるんやかね。生物の先生やら教科書1ページも開かずひたすら黒板とベシャリでノートを徹底して取らせそのノートが評価に繋がりバリ怖えーと。体育系の先生やらこないだ往復ビンタで同級生ぶんなぐって鼓膜やぶれて更迭→最後に涙ぐみながらお前たちは俺の宝物だ、とか言いよったが宝物に往復ビンタはねーばい（笑）」「よい先生に出会えて良かったな。学校は飽きんか？」「飽きるに決まっちょーやん、オトン知らんかもしれんが、朝学校行くふりして速攻帰ってきて着替えてスロット行くときあるばい俺」「勝てるんか？」「当たり前たい、勝つけ朝一で行くんたい。負けるのにわざわざいくバカがおるかい」「ほなお前が正しいんやないか。でもときどきオカンの財布から万札無くなる時は朝一行かんやったなと思っちょく」「がはは、バレとった？」「当たり前たい、お前のすることぐらい解るくさ」「ほーほたらかけようやオトン」「何を？」「今日どっちが数釣るか？」「笑わせんな、お前が学校、スロット行きよる時に俺は毎日このダムに行きよんたい。負けるわけがなかろーが」

俺は3､4匹。親父は15匹ぐらい。完敗。スロットで勝った金（オカンの財布から引っこ抜いた万札）全部巻き上げられた。

◉コロナで暇を持て余し、子供たちと一緒に映画「SING」を見終わった後「パパは何の曲が好きだった？」「うーんと、ヤマアラシの女の子の「手を振ってハローもうあんたに用はなーい」もいいし、ラストの「ゴールデンスランバー」って曲はもう1000回ぐらい聞いてて好きとか超えてる。でもね一番好きなのは主人公が落ちぶれたときに流れてたデビッドボウイの「Under Pressure」かな。「どうして？」「うまく答えられないけど大人になればデビッドボウイがどれだけ恰好いいか。あの人がジョインするだけでこうも変わるものか？」ってことが解るはず。兎に角かっこいいんだよ。そして周りが彼のせいでどんどんかっこよくなる。

フレディのパートを歌う「ケイルアンドロシー」強烈にイカしてません？
https://www.youtube.com/watch?v=rkzcszmeVrs

FUNK奏でたらこれやし。
https://www.youtube.com/watch?v=oOhjZJyNOx4

※渋谷から神泉を抜け、松見坂にある真っ赤の扉のBAR「Lin Endorphin」
https://twitter.com/LiNENDORPHIN?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor

女性マスターめちゃくちゃベッピンさんで超腰が低く当たり前だけどイカシタ音楽ばかりかけてくれる。営業再開したらしょっぱなに掛かるのはUnder Pressureではなさそうだ。