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潮騒ぎな釣りロック【Boys Jump The Midnight】

今春無事小学校へ進学した長男のことで頭が痛い。ロキソニンが手放せない。次から次へと悪態をついてはママに叱られるが屁とも思っていない。1日1時間と決められ、制御されてる任天堂スイッチのパスワードを悉く解析ハッキングし親の目を盗んでマインクラフトをやり続けてる。つい先日一体どんな夢を見てるのか寝言で「うるせーてめぇぶっとばすぞ、ぺっ」とか「は?お前ヤモリも手で触れねーの?だっせーなそれでも男かよ、ちんちん見せてみろよ、どうせちいせんだろ」とかムニャムニャではなくハッキリとぬかしてる。

気分はNY一の不良ルーリードが歌った「I'm a waiting for my man 26dollars in my hand」だ。誰かロキソニンをダースで売ってほしい。
※話は逸れるがルーの名曲「パーフェクトデイ」をスーザンボイルがカバーしたいと申し出た時「嫌だ。俺はお前の声も歌い方もパフォーマンスも大嫌いだ」と断ったら、スーザンがギャン泣きしたらしく「そんなに泣くなよ、分かったよ、いいよ、好きにしな」って言ったエピソードに爆笑と感動した覚えがある。女の涙に弱いのはあのルーリードでも同じなんだ。

話を戻す。
俺の幼少期を思い出したら息子は致し方あるまいとはたと気づいた。九州のド田舎で育った俺は「い・け・な・い」という概念を持ち合わせていなかった。友達と共謀し錦鯉を養成している豪邸に忍び込み、池でばしゃばしゃ泳ぎ、100万ぐらいしそうな錦鯉を何匹も外に放りだしてきゃっきゃ笑いながら悪戯をしたことがある。顔面蒼白→蒼赤の逆鱗老夫婦にこっぴどく怒られた。また隣家の田んぼでは今にも実った米の収穫が行われるというときに友達と共謀し全ての稲をきゃっきゃ笑いながらなぎ倒したこともある。あれは気持ちよかったなぁ。解体業を営んでらっしゃるのか、廃車をバラバラにし綺麗に磨き、干していたピカピカのフロントガラス=もちろん売り物には、粉々に割れるまで石を友達と共謀し投げつけ「キサンだちゃなんしよんか!どこのくそガキかーぶちくらす!!!」と女主人に追い回されきゃっきゃ笑いながら全力で逃げたこともある。※フロントガラスは本当に美しく粉々に割れる、あの快感ったらこの上極まりない。

住んでる世田谷のご近所さんに息子がこれをやったら「悪魔の子」扱いされるだろう。

そんな息子の事を真剣に考え、俺はある時から「危ないからやめなさい、ごみを捨ててはダメ、そして拾いなさい、電車で静かにしなさい、あれもダメこれもダメ」と口やかましく言うことを一切やめた。

その代わり何度も何度も「お前はヒーローになれ。どんな職業であれ趣味であれスポーツでもなんでもいい。みんながかっこいい、あいつは本物だと思われるヒーローだ。歳を重ねていくとお前の前に汚いやつ、嫌なやつが多分出てくる。巨大な権力を盾に弱いものをいじめるやつ。自分のことしか考えず文句ばっかり言うやつ。自分では何もしないくせに偉そうなやつ。金で人を支配するやつ。お前は違う。みんながお前を見て感動したり拍手したり舎弟にしてくれとか言われる、そんなヒーローだ。パパはこないだ引退したイチローと同世代だけど、イチローはスーパースターでヒーローで世界中の野球ファンを虜にしたんだ。野球が小さいころから好きで夢中だったらしい。夢中になれるものがあれば何でもいいからできるだけそれを長くプレイしヒーローになれ」と。それだけ口酸っぱく何度も何度も言うことにしてる。

昔、実の親父に「息子には釣りを一から教え、一人で勝手に行くようになれば育児は無事終了だ」と言われたことがある。なるほど。釣りはまず思考を高め何度も間違っているのでは?と繰り返し繰り返しプレイし水の下を想像しないと釣ることはできない。ライン一つとっても結び方が無数にある。仮に大震災が起き、綱を使う場面に遭遇したとき「絶対に外れないライン結び」はきっと役に立つだろうし、食糧難になって海で釣るしかないとなったら言うに及ばない。勿論そんなこと起きないことを望むが、人生はいつ何が起きても不思議ではないし、今まで何度も惨事を見てきた。

ゴールデンウィークに息子と二人で釣りに行くつもりだ。長女とはよく二人で出かけるが息子と二人で遠出は記憶にない。息子は釣りに夢中になってくれるだろうか?それは俺の指南次第だろう。俺の釣り仲間は最高にいかしてる連中ばっかだし、指南してもらってるから俺も夢中になれるわけだ。アジかなぁ、いやキスかなぁ。デカイの釣らせてやりたいなぁ、スズキ?いやいやキャスト練習させてからだ。カサゴ?メバル?いかんいかん。本人に何を釣りたいか決めさせよう。

先日妻と口論になった。いつものことだし夫婦喧嘩なぞ犬も食わぬが、興奮し激高した俺はついつい子供の前で妻をめちゃくちゃに罵倒し始めた。
その時息子が
「パパだって悪いこと一杯してるじゃん、あれもこれも、ママが悪いんじゃない、悪いのはパパだ!これ以上ママをいじめると僕が許さない!」
と目と拳に力を込め言い放った。

息子は一歩づつ俺のヒーローになっている。間違いなく優勢遺伝だ。

中学生にもなれば恐らく真夜中にこっそり家を抜け出し、友達と街に繰り出して、沢山悪さをするんだろう。高校生になれば渋谷センター街デビュー。大学は行かず外国で暮らしてる気がする。どこで何をしてようが息子はきっと俺のヒーローでいてくれる筈だ。

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