エルクヘアカディス
略称“EHC"。
ドライに限らず他の全てのジャンルの、あらゆるパターンの中で使用頻度ナンバーワンのパターンだと思います。
すなわち、最もポピュラーで、ほとんどの方が、このパターンで最低でも一匹は釣っていることでしょう。
「フライフィッシングの底辺拡大に寄与した大功労者」と形容し、同時に高く評価していますが、このアソビ特有の“高すぎる敷居”をグッと低くしてくれたことは間違いありません。
この“パターン”ならではの特徴をあげて下さいといわれれば、機能面を中心に20ほど羅列できます。
しかし、ひとつだけとなるなら「雰囲気が並外れてポップ」という点を躊躇なく挙げます。
スターター やビギナーの方にとっては最大の魅力でしょう。
しかめっ面よりニコニコ顔の方のほうが、断然とっつきやすいのと同じです。
その一方、当然のことながら紹介しつくされています。
“よく浮き、よく見え、よく釣れる。
しかも、タイイングが簡単”なる常套フレーズとともにです。
スタイルに関してもボディカラーに関してもEHCには、一応、スタンダードがあります。
キーワードは『45』。
その意味も含め、ハックルも含めたボディカラーについて解説します。
そもそものオリジナルは「ヘアズイヤ・ファー&ファーネス」。
しかし、現在では様々なカラー(組合せ)が使われています。
バリエーションは10数種。
その中から敢えて“STANDARD”として選んだのは「ピーコック・ハール&グリズリー」。
理由は単純至極。
アンケートで最高得票を得たからです。
ダントツ1位。
各自の理由は様々なれど要は「1年を通してよく効く」という点につきます。
ピーコック・ハールは古くから“魔法の素材”といわれる別格素材であり、グリズリーも“万能”といわれるカラー。
実際、EHCの性能が最も発揮できる釣り上がり時には、水中から見て、色はむろんボリューム感もあるため視認度が高く、アピール度は満点。
この濃緑なる色は水中からはほとんど黒化しますが、そもそもこの黒なる色自体が“万能色”。
体色が黒、ないしは水中から見ると黒化するナチュラルは、それこそ多数います。
陸生昆虫はもちろん、カディスやストーンフライ、メイフライ、そして双翅目類にもです。
それも年間を通重要種です。
さらに #18クラスならミッジングにも使えます。
ウイングがなければ「グリフィスナット」。
“よく効く”と(必要以上に)いわれるミッジ・パターンですが、それで釣れる状況なら「EHCスタンダード」でも十分、というより視認性は断然上ですから、より使いやすいものです。
ボディカラーの明度が高くハックルがダーク調だとリブ模様がでますが、コレ、何となく効きそうなカンジ。以上は、あくまで一般渓流での釣り上がり用、すなわち「広汎用型」を前提にした話。
シビアな状況でしたら、むろん色はナチュラルになるべく対応。
マッチザハッチにもソコソコ)効くものです。
それもメイフライのハッチ時にです。
ちなみにEHCは1950年代後半に考案されたものですが、いわゆる“純粋オリジナル”ではなく、既存パターンの改良バージョンです。
そもそものオリジナルに関しては、わが国に紹介されたのは1980年代初めの頃。当時、よもやこれほどまでにポピュラーになるとは夢にも思いませんでした。
【出典・引用・参考】
山と渓谷社 流れを釣るドライパターン108 P51
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?