エルクヘア・カディス

これから伝統になりゆく
最もポピュラーなカディス・パターン


イギリスからアメリカに渡ったタイイングの技術は、そこで独自の発展を遂げる。その当時、フライの多くは、カゲロウを模したパターンであった。タイイングの歴史のなかで、カディスの研究は長いことおざなりにされていたのだ。このエルクヘア・カディスが考案されたのも、フライがアメリカに渡
った9世紀後半から、半世紀以上たった1957年。アル・トロスによって考案された。驚いたことに、このフライの原型は、ニンフの土台づくりにひと役買ったスキューズのフライだという。
タイイングの際、こだわってほしいのは、ウイングのボリュームである。ボリュームを少なくし、かよわい感じに仕上げると、魚たちにはリアルに映る。スレた魚にはこのほうが効果的だ。しかし、流れの速いポイントで使うときや、一にも二にも浮力を求めたいというときは、少し多めに巻くとよ。
これぐらいのボリュームでないとダメ、といった基準はない。釣り場の状況に合わせて、使い分けよう。



アイ後方にウイングを取り付けるスペースを残し、シャンク中央まで下巻きとしてスレッドを巻く

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ボディバックルに使うグリズリー・ハックルを選ぶ。ゲイプ幅の1.5倍までの長さが目安

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下巻きのすぐ後方から、ハックル材を取り付ける。ハックルは裏が上に向くよう取り付けること

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ダビング材のより付け。ベンドカーブ手前からダビングしはじめるため、スレッド上方にはより付けない

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ダビング材を施していないスレッド上方を使って、ベンドカーブ手前まで巻き進み、ここからダビング開始

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初めにスレッドをハックル材の後方へ回し込み、ここで2巻き。これはていねいなタイイングの一例

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先のようにしてスレッドを2巻きし、ボディを作ってからハックルを巻きはじめると、仕上がりが美しい

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ダビング材をより付けたスレッドをボディに巻いていく。スレッドは巻き重ねない程度に密に巻く

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ハックル・プライヤーを使って、ハックル材を巻き付ける。ボリュームは、このぐらいを目安に


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ニードルの先で、巻き付けたハックルを2分割にする。この作業はこれから取り付けるウイングのためだ



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2分割にしたハックルをこのように手でなでつける。こうすると、ウイングがきれいに載せられる

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スタッカーでそろえたエルクヘアを取り付ける。ウイングはアイからベンドまでの長さとする

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巻き留め位置は、アイ後方の下巻きを施さなかったスペースに。エルクヘアは、1巻き目でフレアさせる

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2~3巻きで巻き留める。常に真上からテンションをかけるように。フレアかげんはこの程度を目安にしよう

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エルクヘアを左手で押さえ、スレッドをウイング前の奥へ押し込むようにし
て、3巻きほど巻き込む

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すると、このようにエルクヘアが立ち上がる。先に巻いたスレッドとエルクヘアを挟み込む感じだ

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カット部にシザーズを当て、刃先がアイに当たった所でカット。切り口の角度はアイの角度とほぼ同じ

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ウイップ・フィニッシュして完成。ウイングのボリュームに決まりはない。肝心なのは全体のバランスだ
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