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FPD市場

要旨

足元では高付加価値製品へのシフトが見られる。液晶ではMini LED、有機ELでは印刷方式での製造、新分野ではマイクロLEDに将来性がありそう。
携帯電話用ではAMOLED一強(Samsung、LG)。車載用でも有機EL(マイクロLEDかも)の採用が増加すると思う。
用途の多様化はディスプレイ需要に直結。ほぼ全ての分野で大型化、高画質化が付加価値となる。
中国が半導体以外の部材製造でトップになる。さらに細かい偏光板部材では、日本企業(富士フィルム、コニカミノルタ)が薄さの強みで寄せ付けないだろう。
ドライバICファブレスメーカーでは、Samsungが強い地位を持っている。大型ディスプレイではNovatek等の台湾勢が強いが今後OLEDの波がきたら危ない。ファウンドリでは技術力で優位なUMCはAMOLED、その他の液晶用では中国勢が台頭。

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第一回

要約
ディスプレイ市場は需要は年率6%の成長見込みで、特に有機ELテレビや折りたたみスマホなど高級品の需要が増加。また、有機ELの代替品とも言えるMini LED バックライトTV LCDパネルが大きく成長。ただし、有機ELはITパネルを中心に成長しスマホでは2022年までに40%を超える主流になる予測。Micro LEDはまだ技術・コストの面で課題。
供給サイドではパネルメーカーは競争激化の影響でシェア維持と値下げのためフル稼働だが、素材メーカーはコスト高がきつい。TV用LCDパネルメーカーは数量を増やしたくなく、大型化したい。現在は有機ELで第8.5世代生産の流れがあり、月に12.8万枚の計画もあり実現すれば有機ELのITパネルでの普及に大きく貢献。技術面では酸化物TFTが魅力的な手段である。
需給で見ると予測難しい。現状は供給過多。

補足
有機ELパネルは発行の仕組みで「RGB」と「カラーフィルター」の分け方があり、製造の仕組みで「蒸着」と「印刷」がある。
RGBは素子がRGBの色で光ってそこで色が作られるためフィルターを必要とせず、カラーフィルターでは白で発行する素子にフィルターを通す形になっている。これを見るとRGBの方が良さげだがRGBは大型化に課題があるらしく、カラーフィルターの方は消費電力と色域のトレードオフ問題を解決したため同じ土俵に立ちどちらが良いのかはよくわからず。現在ITパネルの有機EL化が進む中ではRGB蒸着で作る可能性が高いと言うことで大きなスマホという感じになる。液晶パネルにもバックライトには基本的にLEDが用いられるため、有機ELパネルのカラーフィルター版と液晶パネルの違いは小さいと思う。有機ELパネルのではそれぞれの有機ELで点灯・点滅を管理するが、液晶パネルでは常時点灯でフィルターによって黒を表現するところとカラーフィルタ自体の仕組みに違いがあると思う。
蒸着は有機EL素材を蒸発させて基盤にくっつけ、印刷では素材を基盤に印刷する。蒸着は真空環境と蒸着時のメタルマスクが必要な点で印刷と異なる。印刷は比較的新しい技術なので欠点が分かりずらいが、製品の耐久性が低く短命になりやすいようだ。

Mini LEDとは、液晶パネルのうち直下型で配置されたLEDをできるだけ小さくすることで密に並べ明暗を明確にするもの。
マイクロLEDは有機ELパネルのRGB版と構造的には同じと思われる。ただ、無機LEDを使う点(有機ELに使われているのはLEDではなくLEDに似た有機素材)などでRGBにおける大型化への課題を解決したものと思われる。

参照:Mini LED バックライトTV LCDパネル有機EL分類RGBとカラーフィルター蒸着と印刷

第二回

要約
中小型ディスプレイでは携帯電話用FPDの需要がポストコロナへの期待もあって高まる。中でもAMOLEDの出荷が5G対応もあり好調で今後も携帯電話において主力をはり、車載モニタ市場ではTFT LCDが大画面と高精細化の努力をしながら競争していく。車載モニタではプレイヤーが分散しており競争激化。中国勢のTianma、BOEが強い中JDIも頑張っている。その納入先ではContinental AGやDensoなどが並ぶ。
大型ディスプレイはPCを中心に全体的に増加しており、数量ベースの伸び(+10%)が面積ベース(+5%)の伸びを上回っていることからもわかる。前期には遠隔学習によるタブレット特需があったが足元では落ち着いており、数量ベースでTVのみ減少。パネル出荷シェアでは中国が過半を占め、台湾、韓国、日本と並びその他の国は一切ない。BOE、China Star、LGが強い。

補足
AMOLEDとはOLED(Organic LED、有機ELパネル)のうちアクティブマトリックスという各画素のスイッチを独立させることで、画像ブレ(にじみ)を無くしたもの。AMOLEDはほぼSamsungとLGによって作られていると考えていいだろう。Samsungは2018年時点で97%のシェアを持っていた(現在は不明)。
TFTというのは液晶パネル版のアクティブマトリックスで液晶に電圧を加えるとき(液晶の並びによって光の通り方、すなわち色が変わる)一個一個の液晶に個別に電圧をかけることができる。TFTの中でもLTPSやa-Si、酸化物TFTなどがあるが、最も将来性があるのは消費電力の削減や小型化の観点からLTPS。

車載用ディスプレイにOLEDはあり得ないのかという点では、OLEDの寿命や焼き付きといった欠点が車載用ではより強調されてしまうためLCDが望ましいとされてきた。しかし、メルセデスベンツにOLEDの車載用ディスプレイが搭載された発表もありこの欠点が克服された可能性もある。自動車業界全体に変革が起きており、車載ディスプレイにナビ以上の機能拡張がされるという意見もあり車載用OLEDパネルの売上高は2026年までに2021年の12倍になるという見通しもある。

参照:iPhoneのディスプレイサプライヤーAMOLEDシェアメルセデスOLED搭載車載用OLED見通し

第三回

要約
TV用FPD需要は2021年前半の巣篭もり・オリンピック需要の後低迷。供給サイドでは2S問題(Shipping+Semiconsuctor;輸送費上昇と半導体不足)によるコスト増。一方でハイエンドTVは好調で金額ではプラス推移。
デスクトップモニタではコロナ後の需要を受けた激増を終わり緩やかな上昇に転じる。高画質、高解像度、大型をはじめとする付加価値需要。モニタ用途多様化を織り込んだ付加価値提供が重要。
業務用ディスプレイは堅調に推移。ビデオウォール市場も拡大基調にあるが、今後はMini LEDやマイクロLEDの参入が見込まれる。

第四回

要約
FPDの半導体以外の素材はガラス基板と偏光板。
ガラス基板は中国のIRICO、東旭、CNBMが量産。いずれも赤字続きだが中国政府からの強く援助を受けている。
偏光板ではLG Chemが偏光板事業をNingbo Shanshanに売却し、この2社でJVを設立する。偏光板基材フィルムでは日系メーカーのシェアが高いフィルム(TAC、PVA、COP、Acryl)が多い。今後中国企業の参入が見込まれる。

補足
偏光板は偏光子(PVA)を基板フィルムで挟む構造が一般的。現在は吸湿性の低さや熱による寸法変化が少ない点が評価され、TACからPMMA、PETやCOPへの移行が行われている状況で現在はTACのシェアが6割程度になっており、半分程度で落ち着く見込み。TACは保護フィルムと位相差フィルムの二つの役割をになっているが、PMMA、PETは保護フィルムの代用、COPは位相差フィルムの代用として注目されてる。PMMAはLG化学、日東電工、住友化学で採用。COPは日本ゼオンとコニカミノルタ(SANUQIブランド)、PETは東洋紡で供給。TACでは富士フィルムとコニカミノルタの二強。フィルムの薄さが競争力。特に富士フィルムとコニカミノルタのフィルムの薄さを実現する技術力は強い。偏光板自体は中国での生産がメインになるだろうがその部材では日本企業が強みを発揮するだろう。

参照:偏光板偏光板推移

第五回

要約
ディスプレイのエンドマーケットでは供給過多であるが、ディスプレイ部材の代表であるドライバICでは供給不足が続く。
大型ディスプレイ用ではファブレスでNovatekとHimaxと台湾勢が強く、ファウンドリでも台湾のVanguardが月産8-9万枚で最大。中国のNexchipが拡大中で300nmウェハ対応のN2(Nexchipの使う固有名詞)ファブでの増産を開始。現在大型ディスプレイドライバICは200nnmで作れていることと200nmのウェハプロセスに投資する企業がないことから増産の見込みは少ない。
スマホ用ではLCDと有機EL(主にAMOLED)に分かれる。LCDではNovatek、FocalTech、Ilitekとやはり台湾勢に占められており、ファウンドリではNexchipと大型と似ている。AMOLEDではSamsungが64%以上を占めて一強。ファウンドリでは台湾のUMCが受託生産を行なっている。
ファブレスメーカーは受託製造のファウンドリを確保することが重要。AMOLEDのUMCでは28nm、液晶のNexchipでは90nmプロセスとAMOLEDでは供給の難易度が高くなっており、UMCが最大ファウンドリを維持して参入を許さない一方で液晶用ドライバICではNexchipやSMICなど中国への移行が進む。ファブレスメーカーではOLEDを中心に中国から多くの参入があり台湾勢は競争を強いられるだろう。

補足
ディスプレイドライバICでは同じ200nmウェハで作られる他の半導体とどちらが利益率がいいかということがあり、需要があってもファウンドリはより利益率のいい半導体(例えば5Gスマホで需要が増えているPMICなど)があればそちらを優先するため、供給が追いつかなくなる。結果として他の半導体とファウンどりを取り合うことになり、エンドマーケットにその価格転嫁をするため高付加価値な製品が必要になっているのかもしれない。
UMCの優位も安定なものとは限らない。Nexchipは2021年末に月産10万枚(UMCはその8倍)だが、NexchipはAMOLEDの28nmプロセスへの参入を目指している。UMCに関してはSamsungとの契約を保持することが重要になる。
Samsungは自社だけでなくApple、Xiaomiとスマホ大手3社の需要も全て取り込んでいるのでとても強いし、そのファウンどりもやはり強い。かつ、その中でもハイエンドスマホは全てAMOLEDに置き換わっている。

参照:ディスプレイドライバICの高騰Nexchipロードマップ

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