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『今夜の月垣レイならば』#テレ東シナリオコンテスト

<テーマ>
「月がきれいですね」

<登場人物>
月垣レイ(ツキガキレイ、21、女)・・・玉の輿を夢みる女子大生。
朝野太陽(アサノタイヨウ、21、男)・・・レイの大学の同期。物知り。
余頃金持(ヨゴロキンジ、38、男)・・・健康食品会社社長。金持ち。

<シナリオ 第1話分>

レイN「ある日、言葉が1つ消えた。目を見つめ、素直になって、想いを伝える時。絶対に必要だったあの言葉。あの2文字がこの世界から消えた。」

〇喫茶店・昼
レイ「もう向こうは完全に私に惚れてたわけ。これ絶対付き合える!っていう流れが完全に出来上がってたわけ。ここでアレを言えば、っていう状況が完璧に揃っていたのに、、アレが出てこなかったの」
太陽「アレって?」
レイ「それが出てこないから君を呼んでるんでしょ。物知り大魔王なんだから」
太陽「大王でよくない?魔王である必要は」
レイ「絶対に付き合いたい相手だったから悔しくて!」
太陽「その、健康食品会社社長?」
レイ「そうだよ、健康食品会社だよ。保険適用外だよ。どんだけ金持ってるのって話だよ」
太陽「胡散臭いけどね」
レイ「どんだけ胡散臭かろうとも金はホンモノだから」
太陽「、、、ちょっとさ、その時の会話の流れを詳しく教えてくれる?」
レイ「えっと、、、ディナーでフレンチ食べて、その後に夜景を観に行って、そこでいい雰囲気になってきたの」

〇回想・夜景の綺麗な場所
レイと金持、顔を向き合わせて立つ。
レイ「(甘えた声で)今日はスッゴク楽しかったです」
金持「僕もスッゴクスッゴク楽しかったよ」
レイ「なんかぁ、金持さんと一緒にいると、時間が経つの早いっていうか」
金持「そうかい。早く年老いちゃうってことかい」
レイ「(少し戸惑いながら)そういうことじゃないですよぉ。なんかぁ、時間を忘れるくらい楽しいっていうかぁ」
金持「時間は、今は21時くらいだけど、、」
レイ「だからぁ、、、」
金持「もう眠いでしょ、そろそろ帰ろうか」
レイ「(頬を膨らませながら)子供扱いしないでください!」
金持「あぁ、ごめんよ」
レイ「、、、私の気持ち、気づいてないんですか?」
金持「と言うと?」
レイ「女の子に、、言わせるんですか?」
金持「、、、男に二言はないよ」
レイ「、、、それはどういう」
金持「忘れてくれ」
レイ「、、、だから、私は、、金持さんのことが、、」
金持「僕のことが?」
レイ「、、、あれ?」
金持「え?」
レイ「いや、、あれ、、言うべき言葉があったんですけど、、」
金持「あぁ、、出てこない言葉ってあるよね。僕もさ、この間、タピオカって言葉が全然出てこなくてカピバラだったかアスパラだったかとか色々」
レイ「そそそそういうんじゃなくて!もっとこう重要なことなんですよ!」
金持「重要なことはゆっくり考えたほうがいいよ」
レイ「いっぱい考えて出した答えなんですよ!」
金持「まぁ落ち着いて。いつまででも待つからさ。今日は寒いし、もう帰ろうよ。送っていくよ」
レイ「そんな、、」
(回想終わり)

〇喫茶店・昼
レイ「っていう感じだったかな。肝心なアレが出てこなくて。あの夜の月垣レイならば絶対にキメられてたのに!
」太陽「というかその社長は大丈夫なヤツなのか。だいぶ言動がおかしかったぞ」
レイ「まぁ許容範囲でしょ。成功者はだいたいイカレてるんだから」
太陽「とはいえ、、その、、キメの言葉?確かに、なんだったっけか」
レイ「(がっかりした顔で)え~、分かんないの~」
太陽「そういう、その、、対象に向ける昂った感情?自分のものにしてしまいたい気持ち?」
レイ「そうそうそうそれそれ、それなんていうの!」
太陽「これは、、言葉が逃げたな、、」
レイ「言葉が逃げた?」
太陽「言葉って、、当たり前のように存在しているようでたまに我々の世界から逃げ出そうとすることがあるんだよ。君だけが忘れるくらいなら物忘れで済むけど、僕も、恐らくその社長も忘れきっている。これは言葉が逃げたっていう現象だと思う」
レイ「いや、そんなことある?」
太陽「こうしちゃいれない!探しにいこう、その言葉を」
レイ「探しにいく?」
太陽「まだ近くにいるかもしれない!」
レイ「え、どういうこと?」

〇路地裏・昼
太陽「この路地にはいないか」
レイ「路地とかにいるものなの?」
太陽「探し物はだいたい路地裏にあるはずなんだよ」
レイ「猫とかじゃないんだからさぁ」
太陽「猫も言葉も繊細に扱わないと」
レイ「なるほど」
太陽「、、、これは言葉が逃げた、というよりは"言葉が溶けた"という説が正しいかもしれない」
レイ「溶けた?」
太陽「言葉ってさ、溶けてなくなっちゃうことって結構あるんだよ」
レイ「そんな、、砂糖じゃあるまいし」
太陽「砂糖も言葉も甘いものだから」

〇タピオカ屋・昼
レイ「何種類タピオカ飲んでも言葉なんて入ってなかったよ」
太陽「うーん。ここじゃなかったのかもしれない」
レイ「だいたいタピオカに入ってるものなの?言葉って」
太陽「流行り言葉ってあるだろ?あれと同じで、消えやすい言葉って流行り飲み物とか流行り液体とかに入りがちなんだよ」
レイ「流行り液体ってなんだよ」
太陽「酸性雨とか?」
レイ「それはさておきさ、この気持ちって結構大事なものじゃない?なんていうか、恋人とか夫婦とかってこの気持ちありきな関係だと思うの。」
太陽「そうかもしれないけど、、あぁ。もしかしたらこれ、言葉が飛んでいったのかもしれない」
レイ「いや飛んだって、そういうんじゃないんだって。一瞬忘れたりとか、そういうレベルじゃなくて」
太陽「違う。flyってこと。空へと飛んでいってる可能性。できるだけ高いところに行こう」

〇観覧車の中・夕
レイ「わぁ、高い。夕焼けキレイだね」
太陽「ほんとだなぁ」
レイ「ほんとだなぁじゃないんだよ。どこ行ったんだよ言葉は!」
太陽「さっきから目を凝らして探してるけど、見当たらないなぁ」
レイ「言葉ってそんな空飛ぶものかな。綿毛じゃないんだから」
太陽「言葉も綿毛も、モノによっては遠くに飛んでそこで育つ。ほら一緒でしょ?」
レイ「一緒か~」
太陽「じゃあ次どこいこうか」
レイ「え?」
太陽「めぼしいのだと、"言葉は流れた"説っていうのがある」
レイ「どこに?」
太陽「川、かな。」

〇河川敷・夕
レイ「なんだか落ち着くね」
太陽「自然に触れるっていいな」
レイ「おい!まったりしてどうするんだよ。」
太陽「ごめんごめん」
レイ「はぁ、なんか疲れちゃったな、、」と河川敷に寝そべる。
太陽、レイを見つめる。

太陽N「実はレイの世界から『好き』を奪ったのは僕なのだ。すべてはレイのために、、」

(回想、太陽のナレーションに合わせて場面が切り替わる)
太陽N「僕とレイは幼い頃からの幼馴染だ。小さい頃から結構ぶっ飛んだエネルギッシュな女の子で、どちらかと言えば本の虫だった僕は自分にない良さを持つ彼女に強く惹かれた。」

レイ「私と彼、付き合ってるの。医者の息子でさぁ、、」

太陽N「レイに自分の気持ちを伝えれぬまま中学生となった。ぼんやりしてるうちにレイには彼氏ができた。当時から、金の匂いに惹かれる女の子ではあった。正直、一瞬ガッカリしたのだけど、ならば自分も金持ちになればチャンスはあると確信していた」

レイ「なんで太陽が私と同じ高校行くの?」
レイ「なんで太陽が私と同じ大学行くの?」

太陽N「いい大学に行けば金持ちの道に近いのは分かっていたがそれは自分の努力でなんとでもなる。それよりもレイを近くで観ておく必要があったのだ」

レイ「はぁ~また別れちゃったよ。全然金持ってない男だった」

太陽N「女子大生になったレイは、裕福そうな男たちとの合コンを渡り歩き交際と破局を繰り返した。彼女の『好き』に、落とせない男はいないほど、彼女の魅力はすさまじかった」

太陽「この薬品とこの催眠を組み合わせれば、、、言葉を奪えるのか!!」

太陽N「金持ちになるためにあらゆる勉学に励んだ結果、僕は独自の方法で特定の言葉を奪う方法を突き止めた。その頃、レイは余頃金持を仕留めようとする寸前であった。大学卒業を控え、本格的に玉の輿を狙おうとしているレイを食い止めるべく、彼女の『好き』を奪うことにしたのだ」

太陽「これ飲む?」
レイ「なにこれ」
太陽「タピオカ」
レイ「のむのむ」
レイ、タピオカをぐびぐびと飲む。
太陽N「このタピオカには言葉を奪うための秘薬を混ぜてある」
レイ「おー、うめえな」
太陽「好き」
レイ「え?」
太陽「好き?」
レイ「え、ああ好きだよ」
太陽「ならよかった」

太陽N「作戦は見事に成功した。薬を飲んだ後、好きだという気持ちを瞬時に理解させ、それを繰り返し尋ねる。そうすることでレイの『好き』を奪ったのだ」

レイ、太陽の家のベッドで寝ている。傍に『好き』の文字の塊が。
太陽「お、出てきた、、これがレイの『好き』か、、」

太陽N「僕はレイの『好き』を冷凍庫に入れて冷凍保存することにした、、」
(回想終わり)

〇太陽の家・夜
レイ「あ~、やっぱ見つからなかったな、アレなんだっけなぁ」
太陽「まぁ、またゆっくり探そう」
太陽N「今日は適当な説をでっち上げて、デートをしまくった。これで絶対に僕のことを好きになっているはずだ。正直、金持ちになれる目途もたってない、ここは強行突破だ。今夜の月垣レイならば、きっと僕のものにできる!」
レイ「よし、分かった。私、アレは思い出せないけど、何とか金持さんに気持ちを伝えてみる」
太陽「(焦りながら)え、ちょっと待って待って」
レイ「なんでよ。アレがなくても気持ちは伝わるでしょ」
太陽「いやでも探したほうがいいんじゃない?」
レイ「そんなぼやぼやしてる時間ないでしょ!ねぇ、一緒に考えてよ。なんかないの?」
太陽「、、、そもそもさ、なんでそんなにお金持ちの人と結婚したいの」
レイ「別にいいでしょ」
太陽「いや、なんか気になってさ」
レイ「、、、君はずっと知ってるでしょ。私の家、裕福じゃないんだよ。弟や妹も6人いるし。養っていくには、やっぱりお金持ちの人と結ばれる必要があるの。」
太陽「でもそれって真実の愛じゃなくない?」
レイ「うるさいな!君に何が分かるの。私の家のことだから放っといて。もう寝る」
レイ、ベッドに入ってしまう。
太陽N「まずいことになった。怒らせてしまった。『好き』を奪ったから付き合えるとは思ってはなかったがむしろ焦ってやらかしてしまった。というか、金持ちと結婚したい理由が真っ当すぎて、邪魔してるこっちが悪者じゃないか、、どうしよう、、しかしレイを諦めるのは、、、」

〇太陽の部屋・朝
レイ、目を覚ます。
太陽、土下座している。
レイ「なになに、、怖いんだけど」
太陽「(顔をあげて)昨日はごめん。デリカシーないこと言って。協力させて欲しい。」
レイ「はぁ?」
太陽「今日、金持さんとデートだろ?このインカムから僕が指示を出す。告白するところを手助けする」
レイ「いや、、ついてくるってこと?」
太陽「そう」
レイ「えぇ~」
太陽「だって切羽詰まってるんだろ?告白のところ以外は黙っておくから。それで何とか手を打ってくれ」
太陽N「とは言ったものの、正直まだ迷いはある。『好き』をレイに戻すには『好き』の塊をレイに触れさせるだけでよい。しかし、レイを諦めきれない自分もいる。どうすれば、、」

〇レイと金持のデートシーン
太陽N「初めて見るレイのデートは圧巻だった。さりげないボディタッチや、少しいたずらっぽい笑顔。中年の金持ちを転がしている。普通に考えればこのまま玉の輿に乗る。しかしそれを許せない、、、あぁもう告白の場面じゃないか」

〇夜景のキレイな場所
レイ「、、、またここですね」
金持「キレイな場所は何度来てもキレイだ。なぜなら、キレイだから」
レイ「はぁ、、」
金持「つきがきれいですね」
レイ「え、、、はい。」
金持「(満面の笑みで)つきがきれいですね!」
物陰から2人を見守る太陽は戸惑い、そしてハッとした表情をする。
太陽N「やばい、そういうことか!」
レイ「はい、そうです、、」
金持「ほんとに!じゃあ、付き合おう」
レイ「え?あ、、、はい」
太陽、落胆する。持っていた『好き』が入ったクーラーボックスを抱き寄せる。
太陽N「想定していなかった、、、金持から告白されるパターンを。しかも、あんな粋な愛の言葉を知っているなんて。そして、なんでレイはその名前なんだ、、、偶然にも程があるだろ、、」

レイN「言葉は消えたけれど、愛は生まれた。私はこの人と幸せになる。そして大事な家族と一緒に生きていくんだ」

第2話の流れ案
・レイと金持を何とか破局させようと太陽が画策。
・太陽が金持の『好き』を奪おうとする。
・冷凍された『好き』をレイが見つける。

#テレ東ドラマシナリオ

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