秘密 The Top Secret

秘密を守れないやつしかおらん!(ノブ)

あらすじ:”死者の脳をスキャンし、生前の記憶を映像化するMRIスキャナーが開発される。同システムを導入した第九こと科学警察研究所法医第九研究室が組織され、室長・薪剛(生田斗真)の指揮のもとでさまざまな難事件が捜査されることに。第九に配属されたばかりの青木(岡田将生)をはじめとする捜査官たちは、家族を殺害し死刑を執行された男の脳をスキャニング。事件発生時から行方不明になっている、彼の娘・絹子がナイフを手にした姿を捉えた映像を目にした彼らは……。”(yahoo映画より引用)

い、いや〜……久々に原作漫画のファンが心配になるレベルの大問題児に出会いましたわ…

どこから…どこから話をすればいいのか…
私達クソ映画お嬢様部の中では冒頭に字幕で世界観を説明してくる映画は駄作という共通認識があるのですが、この映画もご多分に漏れず冒頭字幕世界観で始まります。もうこの時点でわかりました、あっこれはだめだって(まぁレビューの70%が星2以下の時点でわかってはいましたが)
その後は怒涛のクソ映画あるある…原作者と原作ファンがかわいそうです…

この映画は、「絹子の事件」「貝沼の事件」「連続自殺事件」の3つのエピソードが一つのストーリーにまとめ上げられて…いません。残念ながらまとまっていません。3つの事件がほとんどまとまりを欠いたまま話が進んで終わります。
そもそも、原作では「絹子の事件」と「貝沼の事件」は全く別のエピソードのようで、それを無理に繋げようとして失敗しているためか、話が非常に散漫なものになっています。
青木(岡田将生)と眞鍋(大森南朋)は「絹子の事件」を追いかけ、薪は過去に因縁のある「貝沼の事件」を追います。これがなおのことストーリーをわかりにくくしています。なぜなら、「絹子の事件」と「貝沼の事件」が繋がっているとはっきりわかるのはかなり終盤にかかってからだからです。なので、薪の方はなんか知らんけど勝手に自分の過去を清算してるよくらいにしか思えません。実際、貝沼と絹子の関わりなんてかなりちょっとですしね。
そして3つ目の「連続自殺事件」に至っては添え物でしかありません。いやこれを消せばもうちょっと…絹子と貝沼の関係性を示せたのではないかと思います。本当にこれなんのために入れたんですかね?
この元々関係ないエピソードを一つにまとめた結果、薪と青木の関係性も希薄になり、もう青木のバディって眞鍋じゃない?って思うほどになっています。原作を見ると関係性はかなり密接なのに…
しかも恐ろしいことに眞鍋は映画オリジナルキャラなんです。えっこの怒鳴ってばっかりのそこそこ不快な無能キャラが…?こいつもなぜこんなキャラを作ってぶっ込んできたのか、全くわかりません。こいつの部分がまるっとそのまま薪に出来るとは言いませんが、原作を考えれば薪と青木で話を進めるべきでした。
まぁそうは言っても一番意味のわからないオリキャラはリリー・フランキー演じるサイトウとかいう怪しい医者です。絹子の主治医だったと言いますが、正直言って良家の子女を診察するような医者には全然見えません。スラム街でボランティアで診察しているように見せかけて裏ではヤクの売買とか人身売買をしているようにしか見えない……かどうかは人によりますと思いますが、こいつもストーリー上必要な存在ではなかったと思います。言っていることもごくごく浅い斜に構えたようなセリフだけなので、本当にいなくてもよかったです。こいつなんのために出てきたの?
オリジナルキャラをねじ込んだせいなのか、原作キャラもかなり違うものになっているようです。特に絹子のキャラとその背景は大幅に違うようです。映画版のキャラは安直な方向に舵を切ったと感じました。これで映画の時間が短いならまだしも、無駄に150分もあるため、それくらいなら上述のオリキャラ二人を切って、原作のキャラをそのまま描く方が、個人的には犯人としても深みが出て、犯人に深みが出れば主人公たちも輝いたと思います。

また、この映画一番の特徴であるMRIも原作から大幅な変更を加えられています。原作では死者の脳から直接モニターで映し出しているそうです。しかし映画ではなぜか他人の脳を媒介する必要があります。
これ自体はまぁ他のものに比べれば理解も出来ます。私は原作未読なのですが、死者の脳から映像を見ると ”取り込まれて発狂する” というのは、ちょっとそういうもんかなぁ…?と疑問が生まれます。
それに比べると、人間を媒介させるというのは媒体となった人間が ”取り込まれて発狂する” というのは、そうだろうなと思います。
ただ、非人道さは増しているので、正式な捜査機関にはならないのはそりゃそうだろとしか言えません。また、毎回死者の脳を見て捜査員がおかしくなってしまうくらいなら、終身刑以上の囚人にコストを払わせればいいのにと思います。コスト他人払い。どうせ正式な捜査機関にはなれないんだからよくない?

とにかくいろんなところで詰めが甘い映画なので、捜査上の機密情報である、「露口浩一は真犯人ではない」という情報を、一般人もわんさかいるようなレストランでバカデカボイスでべらべら喋ります。しかもカウンター席なので、すぐ隣に他のお客さんがいます。警察官ってのは守秘義務がないのか?
更に、同僚の鈴木の恋人だった雪子(栗山千明)は、薪の隠された過去=同僚の鈴木を正当防衛で撃ち殺したことを、「これは私と彼しかしらない秘密よ…」とか言いながら廊下で話し出します。うっそでしょお前ら!?せめて個室とかで話せないのか??「秘密 the top secret」とかいうタイトルのくせになぜ誰も秘密を守らない?

個人的に、あまりキャスティングや俳優については関心がないのですが、絹子ばっかりは明らかにキャスティングミスだと思いました。
絹子は悪女キャラなのですが、正直言ってとてもそうは見えませんでした。リリー・フランキーのが悪女度高いよ!
キャラの設定が良家の子女ならば、見た目はおしとやかで、とても男を誘い込んでは破滅させるタイプには見えないような人を起用するべきだったと思います。清楚に見えて実はやばい!という見た目のがよかったんですが、実際お出しされたのは、”深夜にキティちゃんのサンダルとジャージでドンキをうろついている地元のヤンキー” で、それじゃない…という気持ちのが強いです。眉毛薄すぎるんですよね…
あと、個人的に一番ショックだったのは、服がダサすぎるのが原因なのか(白いジャケット・白いYシャツ・白いタートルネック)生田斗真が思ったよりブスだったことですね…あっこの人思ったよりはかっこよくないんだ…って……私は悲しい……

この感想を書くにあたって、『秘密』の“わからない”は“おもしろい”!わからなかったことを教えますを読んだのですが、そこで
””なお、原作者の清水玲子さんは、映画の脚本を渡されたときに「あまりに過激すぎないか」「情報を詰め込みすぎではないか、もっと削ったほうがよくないか」と忌憚のない意見を述べたものの、大友監督は「それではテレビの2時間ドラマになる」と譲らなかったそうです。結果的に清水さんは、映画のすごい映像を観て、「負けた気がした」と語っています。””
と書かれていて、心底がっかりしました。原作者にそう言われているのにどうして自分の意見を押し通すんだろう…はっきり言って原作者の言ったことはだいたいあたっていると思います。また、すごい映像というものは存在していないと思います。原作者のお世辞ではないでしょうか。
この記事では、登場人物の感じた疲労を経験出来ると書いてありますが、体験できたのは不愉快な徒労です。
他のブログかなんかでも、2回見ればわかる!と書いてあって卒倒するかと思いました。1回見るのもクソみたいなこの映画を2回も!?

いつになくボロクソ言ってしまいましたが、監督は「るろうに剣心」で実写映画にも成功していると思われる部類の人だった分、どうしてこんなことになってしまったんだろう?と疑問で仕方がありません(第三者委員会を立ち上げて検証してほしいです。こんな実写化がまかり通っているようでは、とても安心出来ません。いつ自分の好きな漫画がこんな実写化されてしまうんだろうと思うと、暗澹たる気持ちです。
実際の映画になって見てみるまでは実写映画を叩くのはおかしいという意見があるのはわかりますし、それも一理あると思いますが、こんな映画が出来てしまう以上、発表された時点で大暴れしちゃうのは仕方ないですね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?