【雛市】 強く強く生きてゆかなきゃ 世の中が優しい日はひとつもなかった 

20代前半のとき、女王蜂というバンドを知った。当時の交際相手がファンだったのがきっかけ。

『売春』『雛市』『泡姫様』

性風俗の世界に生きる女の子の覚悟や哀愁が歌われた曲をいくつか見つけて聴き入った。

当時、私は性風俗の世界に生きていた。
人に言えない仕事をしている罪悪感に孤独感。
自分の尊厳が日々削られ破滅していく感覚。
消えないインクの染みが自分についていくような感覚。
これから先、私は陽の当たる場所で生きられるのだろうかと先の見えない不安感。
色んなものを抱えながら必死に生きていた当時の心情を女王蜂は代弁していて、どれも心にスッと入ってきた。

音楽に限らず、小説、漫画、演劇、何かしらの作品の中に自分の分身がいると救われた気がする。
ああ、こんな感情もあんな感情も持っていいんだな、自分みたいな奴が存在してもいいんだなと小さな安堵を感じる。

一番刺さったのは『雛市』の歌詞

強く強く生きてゆかなきゃ 世の中が優しい日はひとつもなかった
強く強く生きてゆかなきゃ 世の中のせいにしてちゃ始まらないから

強く生きていくとは何だろう。

自分の弱さを認める強さを持つことだろうか。
偏見や孤独の中を生き抜いていくことだろうか。
使える手段、たとえそれが邪道な手段であってでも使い倒して生き抜いていくことだろうか。

明確な答えは出せないけど、この短い言葉に風俗嬢の哀愁や覚悟が詰まっていてとても刺さる。
もう夜の世界を上がって数年経つけれど、雛市を聴くと今でもあのころの心情がリアルに思い出される。