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〈読書感想〉 反出生主義者駆ける


反出生界隈において大注目を浴びている一冊、
『ただしい人類滅亡計画』読み切りましたぞ。



色んな価値観を持った10人が、人類滅亡をさせるべきか否か、話し合う物語。



取り急ぎの感想を駆け足で綴ります。


読みながら胸の高鳴りが止まりませんでした。
こんなこと28年生きていて初めて。


こんなにも凡ゆる立場から反出生主義が語られた本が今までにあったでしょうか。

こんなにも反出生が鮮やかに言語化された本が今までにあったでしょうか。


凄い、ほんとうに凄い。

どの章も凄すぎたんですけど、一番グッと来たところを一つピックアップするならば、個人的な「生まれたくなかった」という叫びから来る反出生主義と、道徳心から来る反出生主義が整理されていく場面。



どちらの反出生が良い悪いということではありませんが、道徳心から発生する反出生があざやかに説明されていく様には息をのみました。

なんでしょう、今までモヤモヤとよく見えにくかったものが一気に解像度が上がって鮮やかになった感じ。





----ここから先ちょっとネタバレーーーー


人類の滅亡を阻止すべきか、否か?
滅亡が今すぐとかじゃなくて、100年後や100000年後でも阻止すべき?
人類滅亡の瞬間、阿鼻叫喚の苦痛に見舞われるとかじゃなくて、何が起こったかも分からぬうちに一瞬で無に帰すにしても?
あるいは、出生数をコントロールして、人類を段階的に滅亡に近づける方法でも?

みたいなことを10人が真剣に話し合うんです。


人類滅亡させたくない人 vs 滅亡させたい人 vs どうでもいい人
人生超楽しい人 vs 人生超辛い人
自分の世代さえ良ければいい人 vs 潔癖なくらい道徳的な人

等々

熱い議論に釘付けでございました。
どう喩えたらいいでしょうか。

もし読んでる人の中にガチのドルオタがいたら、少し前のAKB48総選挙を思い出してほしい。
推しが選抜に入れるのか?一位は誰なのか? 明らかになっていくあの瞬間、数々のドラマや名言が出るあの瞬間を見ているような感覚。


というごく一部にしか伝わらないであろう喩えはおいといて。

本の結末を言うとね、、、

結論は出ていないんです。

結論が出ないのか結論でございました。


私にとっては「反出生」が最も道徳的だと考えているし、それは読後も一切ぶれていないけれど、アンチ反出生の考え方にも分からんでもないところが一部あったりして。



まあともかく、ガチの反出生主義の人にも、ゆるーく反出生主義の人にも、反出生主義が理解不能って人にも、興味深く読める一冊です。
普通に読書好きな人にもエンタメとして面白く読めるんじゃないかな。
高校一年生くらいの読解力があれば読める易しさで書かれてるので、地頭弱い私でも何とか読み切れました。


っていうかこの本、子供産むことを少しでも考えている全員に読んでほしい。ほんとに。



人間を一人作り出すってとんでもなく重大な行為だ。

何もしなければ「無」の状態から、あらゆる感情を持ち、勤労や納税などあらゆる義務を数十年に渡って課せられ、最終的には死を避けられない生命体を作り出すって何にも喩えることのできない特殊さがある。

子育て楽しそうだからとか、みんなが子供産んでるからとか、そういった他人軸の考え、あるいは今まで人類がそうしてきたらという前例踏襲ノリで子供を持ちたがっている人に、どうか一度でいいから読んでほしい。


結果として出生するにしろしないにしろ、一度でいいから自分なりに出生について考えることに大きな意義があると思う。