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反出生主義って究極の博愛主義だ


反出生主義。

この言葉を初めて聞いた人は、どんなイメージを持つだろう。

「攻撃的」「なんか怖い」
字面からしてマイナスの印象を持つ人もいるだろう。


そもそも反出生主義とはどんな考えなのか?
一言で言うなら「生まれてくること、および産むことを否定する思想」だ。
出生、つまり命を作ることの是非を問う思想である。

人生において苦しみは避けて通れないし、幸福の多い人生だったとしても、最後には死の苦しみを味わうことになる。
生まれなければ苦しみは一切感じずに済むのだから、人は子どもを産むべきでないというのが反出生主義の考えだ。
既に生まれてしまった命の価値や、命を終わらせることを問うものではない。

反出生主義者が真に目指しているのは、あらゆる苦しみをゼロにすることである。出生を否定している印象が前面に出ているが、それは手段にすぎない。
「新たに人間を生み出すことはしない。ただし今生きている人間は尊重にする。」
これが反出生主義だ。



何気なくネットサーフィンしていたとき、この思想に偶然たどりついた。
一気に惹かれた。
とても理性的で、愛に溢れた思想だと思った。
究極の博愛主義だとも思った。
それから反出生主義者のブログやツイッターを読み漁った。


反出生主義の人々は、「なんとなく子どもを持った方がいいよね」という世の雰囲気に流されず、人間を一人生み出すことの重みを熟慮する人々だった。


反出生主義者の中には、家庭環境や障害・病気などで苦労し、辛酸を舐めてきた人もいる。
苦労をした人の中には「私はこんなに苦労したのだからお前も苦労しろ」と次の世代に苦労を押し付けるタイプが一定数いるが、反出生主義者は違う。次世代に苦しみを残さないことを目指している。
反出生主義のベースにあるのは優しさだと思う。
「この苦しみをもう誰にも味わってほしくない。まだ見ぬ魂が救われてほしい」といった慈悲深さを私は感じる。


人間が生まれてくることは、それ自体が博打である。
人間の一生が100年として、その中で病気になることも障害を負うことも失業することも孤独になることも事件に巻き込まれることも差別偏見の対象になることもある。
100年の間に戦争や未曾有の大災害が起こらない保証もない。
100年後、環境問題で地球がどうなっているかもわからない。


この思想に出会ってから、世の中に溢れる出産肯定のメッセージに違和感を持つようになった。
多数派と同じように出産を肯定する価値観でいられたら生きやすいだろう。それでも私は反出生主義者でいたい。

この思想がもっと世に知られてほしい、
特に、子供を作るか作らないか選択を迫られる世代の人や、将来像が定まっていない若い世代の人に知ってほしい。

あとは、反出生主義という、暗く小難しいイメージを与える思想名を、もうちょっとライトに言える名前にしたい。
「反」ってつくと攻撃的な印象になってしまうから、「反」の文字はなくしたい。
とても温かい思想なのに、字面のせいでマイナスのイメージを持たれがちなのは悲しい。

何がいいだろう。
無出生主義…? 苦痛完全回避主義…?
ネーミングセンス皆無の私には思いつけないので、アイディアのある方がいたら、コメントやツイッターリプ等でぜひ教えていただきたい。