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私たち、社会の平均点は取れなかったとしても物語の主人公としては100点だよ


10年前、ある界隈で知り合った友人がいる。
初めて会ったのが真夏の時期だったので、その友人のことを仮に真夏ちゃんと呼ぶ。

真夏ちゃんは毒家庭から逃げ、国際恋愛をして海外移住し、恋人と別れて日本に戻ってきてからはホステスとして生計を立てているという波瀾万丈な人生を歩んでいる。

最近真夏ちゃんの部屋でこんな話をした。

「私たちの人生、切り取れば映画のワンシーンのような場面が結構あったよね。あんな瞬間とか、こんな瞬間とか、今振り返るとエモエモだよね。」
「私たちの人生、ストーリーになるという点では強いよね。社会の平均点は取れなかったとしても物語の主人公としては100点だよ。」

この話をしてたのは、ちょうど黄昏時だった。
真夏ちゃんは部屋に照明をつけていなくて、小さな間接ライトで暮らしている。
窓には夜に近づく空、間接ライトの仄かな灯りがなんとも言えない情緒を醸し出していて、今この瞬間もまさに映画のワンシーンみたいだなと私は考えていた。

真夏ちゃんとの話に私は「本当にそうだよね!」と頷いた。

私は今30歳で、同年代の女性は結婚、子育て、マイホーム購入と人生を着々と進めている。仕事では上司の立場につくようになった人も増えてきている。

一方私は複数の障害や病気を持っており、働くどころか生きることに精一杯。
希死念慮が強く1年後に生きている保証もない。
同年代が手に入れているものの大半を、私は手に入れることが出来ないまま人生を終えるだろう。

私が社会の平均点を取れることはきっとない。

でも物語の主人公としては100点だ。
私たちの人生は波乱万丈で、くぐり抜けてきた修羅場の数が違う。
大変な人生だけど側から見る分にはドラマに満ちていて面白いと思う。
そう捉えると、この人生も悪くはないかもしれないと少しだけ思える気がする。