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ショートネタ「転校生」

授業開始より少し早く担任の先生が教室に入ってきた。

「えー、今日からこのクラスに転校してきた転校生を紹介します」

ざわつく教室。

「転校生だって」

「どんな人なんだろう」

「方言とかあるのかな」

しかし、それは転校生がやってくる時のざわつきとは少し異質なものだった。

「この時期に珍しくない?」

「もうすぐ卒業だよ?」

「っていうか次5時間目だよ?普通朝じゃない?」

中3の2月の午後から転入してくるというトリッキーな転入をかましてくる人はどんな人なのか、皆が興味津々だった。

「じゃあ、入ってきて。自己紹介をどうぞ。」

先生に促されて転校生がそそくさと教室に入ってくる。

「皆さんはじめまして。今日の午後から飛び込みで転校してきました。杉原卓哉です。短い期間ですが、皆さん仲良くしてください。」

飛び込み?聞きなれない単語に対する違和感はクラスのムードメーカーのヤジにかき消された。

「短すぎるだろ~!」

教室も盛り上がる。

杉原君も笑顔でヤジに応える。

「はい、今日の5時間目と6時間目の2時間だけという短い時間ですが、どうか仲良くしてください。」

「短い」というの時間軸のスケールの違いにクラスの全員が面食らった。

「実は旅芸人をやっていて、今朝、今日のショーのリハーサルをしてから来ました。ここでのショーは1日だけなので、今夜のショーが終わったらまた飛び出しで転校します。よかったら来てください。よろしくお願いします。」

飛び込み飛び出しの転校生は休み時間にきれいなジャグリングを見せクラス全員にショーのチケットを売り捌いてから、またどこかへ転校していった。

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