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人生を変える学び〜「ありがとう」を受け取ること NVC小話

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ロバート・クリズィスニックさんが教えてくれたこと

2022年9月1日、朝早くに起きてフェイスブックをチェックしていて、飛び込んできた知らせに衝撃を受けました。それは、ヨーロッパ在住のNVCトレーナーが交通事故で亡くなったという知らせでした。

彼の名前はロバート・クリズィスニックさん。旧ユーゴスラビア出身の方です。

2014年に日本で初めて10日間のNVCの国際集中合宿(International Intensive Training 通称IIT)を開催した際に招いたトレーナーの一人です。http://nvc-japan.net/project/iit2014/robert/ 
(このリンクは2014年時点でのロバートの紹介)

私がロバートから受けた学びはIIT開催時の数コマと、その後のイベントなど時間数にすれば限られたものでした。しかし忘れられないエピソードとともに、人生を変える大きな学びをもたらしてくれた方なのです。

それは「”ありがとう”を受け取ること」。

ただ、受け取ればいい

長期にわたる合宿が終わった後、さらに10日ほど日本に滞在し観光する予定と聞いていたので、私の出身大学でNVCの講義を一コマやってもらうことにしました。これはNVCの種蒔きにもなるし、謝金はロバートの旅のお小遣いになるし、一石二鳥! 知り合いの教授に相談して国際関係の授業を一コマいただきました。

当日、学生たちは、感情の奥にニーズがあること、ニーズのレベルでは人は対立しないこと等をロバートの講義とグループディスカッションで体験。質疑応答では、NVCが世界のどんな場面で使われているのかといった質問を中心に、盛り上がりました。

当日の教室のドアの張り紙


私は事前に大学とやり取りをし、ロバートからの資料が学生に配布されるよう手配したり、当日は駅まで迎えに行ったり、ちょっとしたコーディネーター役を務めました。そして、授業の後に大学の事務所から謝礼を受け取り、彼に手渡しました。「日本観光の足しにしてね」と。

7年以上経ちますが、その場面をとてもよく覚えています。

ちょうど大学本館の前庭、食堂に向かう小道の梅の木の横でした。
ロバートは、お金の入った封筒を胸に抱くようにして、日本風のやや深めのお辞儀をしてから、私の目をまっすぐに見て、”Thank you, Nozomi” と言いました。

私は急に恥ずかしいようないたたまれないような気持ちになり、”No, no, I didn’t do anything……” 「やめて~ 私なんにもしてないから」と言いかけたところ……

ロバートは右手をスッと上げて、優しく、でも制するような強さとともに、
”Nozomi, you can just say ‘You are welcome’ “と言って、微笑んだのです。
「のぞみ、ただ『どういたしまして』って言えばいいんだよ」

感謝を受け取ることは、自分も相手も大切にすること

私はハッとしました。

Aさんが感謝を表現する。それをBさんが「滅相もございません!」と受け取らないでいたら、Aさんの感謝の気持ち、感謝を表現するニーズは誰にも受け取られず、宙を漂うばかりです。

”No,no”と言った私は「私はあなたから感謝を受け取るような、価値ある存在ではありません」と自分を卑下し、小さく評価しようとしていました。

NVCは「人と人が思いを分かち合い、つながりをつくる」ためのもの。
NVCは、自分も、相手も大切にするもの。

私のとった行動は、従来からのクセであり反射的な反応だったとはいえ、つながりを断つものであり、自分を大切にしていなければ、ロバートの感謝の気持ちも尊重できていませんでした。

このことに気づいてとても恥ずかしくなったのですが、なんとかNVC実践者としての正直さと勇気を奮い起こして、彼に言いました。

「そうでしたね。よかったら、もう一度、やり直させて」すると彼はにっこり笑って、もう一度丁寧にお辞儀をしてくれました。

そこで私は”You are welcome!” と言い直しました。

ロバートは”We did a good job!” 「私たち、やったね!」と言い、私たちはハイファイブ(互いの手のひらをパチンと合わせる)しました。

そうなんです。

私たちは、間違える。間違えるけれども、やり直すこともできる。感謝を受け取ることの大切さを学んだのと同時に、やり直すことを実践できた、私の大切な思い出です。

ロバート、あなたはたくさんの仕事をして、世界と人の心を平和にすることに貢献されましたね。その中には、私に「ありがとうを受け取る」ことを教えてくれた一件も含まれています。

ロバート、ありがとう。
もっともっと私たちと世界のために働いてもらいたかった。ほんとうは、悔しくて残念で言葉もありません。いま、私があなたの生徒の一人としてできることは、教えてもらったものを次に渡していくこと。

感謝を素直に受け取り、感謝を素直に伝えていきます。そして、このことの大切さも。だから、どうぞ、安らかにお眠りください。


NVCをベースとした対話イベント


NVC基礎づくり講座(メイン講師西東万里/アシスタント講師栗山のぞみ)


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