いちごつみ「ステージ」

しまさん@shima_071と「ステージ」をテーマにいちごつみ企画を行いました。当初予定では2023年8月に始めて10月までに詠み終える、なんて予定してたのに、情けなくも私が労働やらなんやらでぶっ潰れておりまして半年以上かかってしまいました。季節ほぼ一周してすみませんの気持ち…
ゆったりと待ってくださったしまさんには感謝しかないです。

本記事では、しまさんが詠んだ歌への感想と、自分が詠んだ歌の解説もどきを順番に書いて行けたらなと思っています。

企画趣旨

・いちごつみ(前の歌から一語選んで詠みこむ)を、厳密に一語を選ばずニュアンスで繋ぐのも可として繋いでいく。
・テーマは「ステージ」。
・アイドル短歌ベースで進めていく。視点は誰でもOK。時系列が戻ってもOK。自由にやりましょう。
・計30首(一人15首)構成。

短歌30首

奇数首目がしまさん、偶数首目が飄です。

2024.06.22追記
画像作成はしまさんがやってくださいました!!!!!!大事なこと!!!書くの忘れててごめんなさい!!!!

1.何度でもこの瞬間を夢見てるまた新しい幕が開くのを(しま)

企画やりましょう!1首目どうしましょう?ってなった時に「これどうですか?」って見せてくれた瞬間の、ぶわっと鳥肌が立つ感じが未だに鮮明に残っています。ステージが始まる瞬間、公演が決まった瞬間、どのタイミングでも想像できるこの歌の余白が美しいなと思っています。

2.秘密基地をホワイトボードに組んでいく 見てるあなたに笑ってほしくて(飄)

ライブは最中ももちろん楽しいんだけど、考えてる時間、打ち合わせが楽しくて仕方ないって福田悠太さんが言っていたので。なにか面白いことできないかなって語る彼らの表情はさながら秘密基地を作っている少年のようだなと感じたので、こんな歌になりました。今年は何の曲やってくれるかな。

3.今はまだ言えない秘密基地のこと招待状はちょっと待ってね(しま)

「招待状」がかわいくて素敵でした!「ちょっと待ってね」もかわいらしくて、全体的にチャーミングで…しまさんの歌はふわふわした明るさをまとっていていつも柔らかいな…と思いながら拝見しました。

4.「招待状早くほしいね」明日の朝溺れることも知らずほろ酔い(飄)

「招待状」がかわいくてインパクトがあったので摘みたくて!
「コンサート決まんないかな~」なんて呑気に言ってる情報解禁前夜。明日の朝嬉しい悲鳴を上げるんだけど、申し込みも一気に始まったり当落でメンタルざわざわしたり交換探したりで情緒は死ぬ。書くと長くなるので書きませんが、めんどくさい性格で現場発表あんまり望んでないオタクなので、この実際発表される前までのほろ酔い期間が実は一番居心地よくて好きです。溺れるの苦しいじゃん…会いに行く代償…

5.溺れるの怖くないんだ いつだってあなたが作る海は明るい(しま)

溺れたくない、苦しみたくないと思ってる厄介な人間に刺さる歌が来て眩しくて砂になりそうでした。作り手、演出担当、グループを全面的に信頼しきってるような歌…!
ペンライトの海がぶわっと広がって、その中の一つになることに身を委ねるような感じもあり、アイドルとファンの信頼関係を垣間見るようでした!勝手にEIGHTっぽいな~と思いながら読んでました。見習います!

6.俺が演るお前を探そう この小舟海に進めてそっと一漕ぎ(飄)

海に進出してみました。
これまでコンサート感のある歌が続いたので舞台、ストレートプレイに寄せてみようかなって。パンフレットのインタビューで「まだ稽古始まったばかりでわからないこともありますが、これからしっかり掴んでいきたいです」というようなことを読むたびに、この人だからできるこの役を掴むべく稽古する期間は、道標のない大海を進むようなもんだろうな…と思ったのを詠みました。

7.小舟では溢れるほどの楽しみを山積みにして約束の地へ(しま)

わくわくしますね!!!!何度でも言いますがしまさんの歌は前向きで明るくてすごい!!!!いいところを探すのがプロ級!!!!歌とは関係ないんですけど、ポジティブ思考って一回ネガティブを経験してなお前を向いた強い人だからできると思ってる自説があるので、前向きにとらえる人を本当に尊敬しています。話が逸れました。

8.積み上げて壊してそこにある息吹を掴もうとこの右手を伸ばす(飄)

6.の続きっぽい感じで。暗闇を手探りで進むように、進んでる感覚が得られなくとも丁寧に役柄や作品を作ってるイメージで詠みました。7月にスローターハウス観たのに引っ張られてるかも。
この歌の「息吹」に鮮やかさを見出してくださったのめちゃくちゃ嬉しかったです。埃っぽい閉鎖空間を想像して詠んでたので…(泣)

9.そこね、その日付はきみの色だって思ったペンで囲んどいたの(しま)

これまたかわいらしいというかいじらしいというか…健気な感じでしまさんぽい…口語っぽいのが柔らかくて魅力存分!って感じでした。気負っていない軽やかさも感じられてなんかいいなって…メンカラなのか、はたまたその人らしい別の色なのか、その色のペンを持っていることも素敵ですよね…(赤青黒の3色で生きている人間の感想)

10.沈黙のスパンコールは僕色のライトを浴びる予感にざわめく(飄)

そろそろ開幕させないとやばいな!?って思った記憶。幕が開く前、ポップアップの下で1人スタンバイしていたら、ライトを浴びる前の地の色のスパンコールはやけに静かに感じられそうな気がして。これから浴びるライトの光も熱も、すべてこの人を輝かせるものになればいいと、そんな希望をこめて。
全身スパンコール衣装大好きです。
この時調べて知って短歌に詠みこみたい単語があるので、これも形にしたいですね。

11.息を飲む数秒だけは静まってあとは奔流、光にまみれ(しま)

10首目からの跳ね上がりというか、堰をきったような勢いのある静/動の対比が大きくて好きです…!始まってしまえばあとは流れに身を任せる感じがまた…良い…
光に「まみれ」って言葉選びがめちゃくちゃ好きです。

12.昨日まで”常識”のもと飲み込んだ日々を蹴散らせ「ねぇ、遊ぼうよ」(飄)

ちょうどゆ~たちのライブのあとで、今は嫌なこと全部忘れろ!って辰巳くんが言ってて。仕事がめちゃくちゃに忙しくて開演30分前までパソコン叩いてたし、休みの日も仕事のこと考えて公私のメリハリがつけられなくなってた頃(よくない)だったのですが、ライブ中はびっくりするくらい仕事のこと忘れられてて、この人たちのライブすごい…ってなったのを詠みました。多分。記憶が曖昧。ゆ~たちのライブは「一緒に遊ぼうよ」って感じが強くて、MCとC&R 4U.がまさにそんな感じだったので(かっこいい曲派ですが)。
しまさんが12首目でエネルギーに満ちた歌を詠んでくださったので、その前向きな勢いに乗っかれました!珍しく元気な歌!

13.とびきりの僕であなたに会いたくてやわく毛先を遊ばせてみる(しま)

かわいい…勝手ながら思わず越岡さんのことが頭に浮かびました。歌の視点的にファンの前に立つアイドルが「とびきりの僕で会いたくて」ってヘアスタイルを気にしてるのがはちゃめちゃに好きだし、何より彼がめちゃくちゃ念入りに髪の毛セットしてステージに立つので、連想されて…!かわいい…30首の中で5本の指に入る好きな歌です!

14.とびきりの君が崩れても踊る汗を最大最上愛と受け取る(飄)

先述のとおり、私の好きな人がめちゃくちゃ入念にヘアアイロンして(本当にずっとしてる)準備してくれるんですけど、非常に汗っかきなのとものすごく激しく踊るので、1曲目でもう崩れかけてることもしばしばで…
髪型にすごくこだわりがあるこの人が、そのヘアスタイルが瞬殺で崩れようとも、ビジュアル的に一番の状態ではなくなろうとも、汗をかくことを厭わずパフォーマンスに全力でいてくれるのが大好きだなって思いながら詠みました。
「最大最上愛」は彼らの持ち歌(Everything 4 You)から拝借しております。
13首目と対比の目線で詠めて個人的に満足してます。

15.こんなにも表情筋が動くことはじめてくらいに知ったの いとしい(しま)

アイドルの表情が豊かに変わることに気づいたのか、アイドルを観てる自分の表情筋がこんなに動くことを知ったのか、どっちで捉えても心温まる短歌だな~!と思いながら読みました!生で見るから初めて見れる表情ってありますよね…好きなアイドルの初めて見る表情を見つけるたびに、大事なものを一つ一つ集めているような感覚になるのを思い出してぎゅっとなりました。

16.煽る声答えたいけどきみの表情(かお)ずっと見たくて微動だにできない(飄)

掛け声にペンライトで応えたいんだけど…!盛り上がってるのをちゃんと伝えたいんだけど…!君のその表情を一瞬たりとも見逃したくなくて、双眼鏡ずらせなくてごめん!!!!って思いながら毎回後列野鳥の会してるオタク短歌。せめてもの気持ちでペンライト揺らしてるけど、打点低くてごめんの気持ち。あとかっこよすぎると人間は静止してしまうから。
「表情」を「かお」って読めたらおもしろいかなってチャレンジいちごつみスタイルをとりました。割とお気に入り。

17.肉声を聞くのはこれがはじめてと思うくらいに鳴って、響いて(しま)

15首目、17首目と、目でも耳でもすべてが新鮮に感じられるところを詠んでいるのがいいなって…初めて入る現場、特に数年待ち望んで入ったコンサートではもうその「目の前の生身と肉声」でキャパオーバーする感じがありありと伝わってきて、こちらもきゅっとなりました。鼓膜だけじゃなくて、自分の心臓や体全体でその声を感じているのが浮かびます…!

18.生きている 君の顔した君じゃない命が響く真っ黒な床(飄)

演劇イメージで。容姿は紛れもなく君なんだけど、君を一ミリを感じることができないその立ち姿にある種の恐怖さえ感じて、震えるあの様を。福ちゃんと原ちゃんと林くんが私の中で本人を感じられなくなる俳優さんだなと思っています。
劇場の板が黒いと、なお引き込まれる感じがして好きです。

19.真っ黒に塗りつぶされた道行きをピンスポットは切り裂いていく(しま)

明暗のコントラストがすごく強く描き出されていて好きです!あと、塗りつぶす・道・ピンスポットで面・線・点の全部入ってるのすごくないですか?そして静止だった場面に「切り裂いていく」で動きが付くのがすごい。めちゃくちゃ好きな短歌です。すごいと好きしか言ってない。でもすごいし好きなんだ。

20.救いの手は主人公へ差し伸べられて客席の私をも貫く(飄)

19首目で暗闇を照らして希望の道を創り出したピンスポットは、主人公を導く救いの手であり、主人公を救った台詞とライトは客席にいる私をも救い上げてくれることがある。作品、物語、演出と自分に接点が生じた瞬間に観劇の醍醐味ってあるのかなって思ったりします。
実は厳密に一語摘んでない、ニュアンスで繋いだ歌になります。チャレンジ。歌自体はめちゃくちゃ好きで満足してるんだけど、ニュアンスで繋ぐと内容が似てしまう(それはそうなんだけど)んだなという発見がありました。連作に新しい要素をもたらせるのが元祖いちごつみの特徴なのかもと再認識。でもニュアンスで繋ぐの超楽しかった。

21.誰しもが主人公って綺麗事なんか言わない ほんとのことだ(しま)

これまでも諸事情で私のターンで返信がストップしていたのですが、これは歌の内容がクリティカルヒットして、全然次の歌が思い浮かばなくなった衝撃の歌でした。どの方向にすすめばいいんだ…?っていう悩み方もしたし、この歌に返せる力量がない…!とまじで逃げたくなりました。そのぐらい威力のある歌だった…。普通にTLに流れてきて読んでたらここまで大打撃じゃなかったかもしれないけど、これをつないで次に進めるって思ったら真っ向から向き合ってしまって、今見返したら1ヶ月悩んでました(遅すぎ)。
今でもこの歌にどうやって返せるかなって考えてるし、今でもこれだわ~!っていうのは詠めてない。この歌を詠むに至った経緯を聞きたいですね…

22.この道が僕のセンター 3番で燃やす命が綺麗に光る(飄)

あれだけ期待値上げといてですが、これが私の最大限でした。ストーリー上の主人公は確かに一人だけかもしれないし、現実を生きる私も社会の中じゃ脇役その何億何千万なんだけどさ、Endless SHOCKでライトが当たってなくてもマイクがオフでもずっとなにか喋ってたり表情が変わってたり、それこそ0番に立ってなくてもものすごく美しく全力で踊ってるコシオカとマツザキを見て、主人公じゃなくても越岡はコシオカを生きてるし、貴方を一番好きな私からみたら主人公なんだよな!!!!って思ったら観劇の次の日に答えが出ました。主人公(コウイチ)がいなきゃ物語は始まらないかもしれないけど、主人公以外がいなくちゃ物語は進まないんだよ。昔の錦織さんのご助言も少し。
この時の候補作、というか短歌未満のものたちをいつか昇華させたいです。

23.あの場所であのとき確かにきみのこといちばんだって思って見てた(しま)

立ち位置3番が意味を変えていちばんになったの好きでした!
今もきみが「いちばん」で応援してるのか、それとももう一番ではなくなった思い出の話なのか…どちらにせよ、その時のかけがえのない事実を大事に抱きしめている感じが刺さりました。

24.両手から零れ落ちてく一幕の記憶を必死に辿る幕間(飄)

数字を拾ってみました。
覚えてようって思うのに、幕間までどころかシーンが変わったらもう覚えてられない人間の脳の仕組みが悲しくて仕方ないですね!2幕見ながら何かをきっかけに思い出したり、別の日の観劇でそういえば!って思い出したり、でも結局忘れ去られた好きなところを、どうにか思い出したいです。もう少しでこのステージも終わってしまう…

25.幕はまだ上がったままで夢もまた長く覚めずにあればよいのに(しま)

ライブも舞台も、まだ終演してないけど後半でふと終わりを感じて「あ、終わりなんだ」って我に返るあの一瞬、切ないしなんか悔しいし…というのを思い出しました。でもこの夢が覚めなきゃいいのにって、終わってほしくないっていうより現実に戻りたくないって感じなのかも…

26.僕らには永遠(とわ)を夢見ていいんだと言わんばかりの甘美な約束(飄)

この世に絶対も永遠もなくて、どんなグループもどんなタレントにも形はどうあれ絶対終わりは来るのに、「僕らはずっと一緒にいるから、幸せにするから、安心してついてきて」なんて、そんな簡単に約束しないでよ。

27.今聴いたばかりの歌をぎこちなく口ずさんでる駅までの道(しま)

この歌に詠まれた子が、普段音楽は聴くけど声に出して歌ったりはしないのに、ライブの帰りだけは高揚感でつい歌ってたりしたらって思ったらめちゃくちゃかわいいなって…
この子が歌えるのは、自分の声がかき消されるようなざわついた駅までの道限定なんだよなと思うとぐっときますね。

28.250㎞/hの現実に置いてかれないよう今を抱きしめている(飄)

(にひゃくごじゅっきろのげんじつ、で読んでください。時速ってつけなきゃいけないの忘れてました。)
大阪から東京に帰ってくる新幹線、ライブの記憶も吹っ飛ばしそうな速度で日常に戻してくるので、かっこよかった記憶も、面白かった話も、楽しかった気持ちも、どれもこの速度で落とさないように、一個ずつかみしめるように反芻している歌。ギリ大阪から帰ってきて次の日出社できるのはありがたいんですけどね…文明の発達…
「車窓にはラメと夜景が重なって 君の気配は薄れていって」
って会場から遠ざかるのも詠みたかったんですが、一語摘めなかったので…

29.もうずっと先を見ているきみたちに時速どれだけなら追いつける(しま)

好き!!!!!!!!アイドルを推しててもどかしく感じる、胸を引っ搔き回したくなるあの感じがリアルに思い出されて苦しくなりました。
いいことも悪いことも、こっちに伝えてくるときは彼らはすでに知ってて、なんなら乗り越えようと苦戦していたり、乗り越えていたり、楽しみなことだったら具体的なことを考えていたり、実は同じタイミングで同じ感情になることってほとんどなくて…
もっと名前を広めるにはどうしようかって戦略を立てる意味でも、こちらなんかよりずーっと先を見ていたり、それこそこっちはライブ楽しかったーって余韻に浸ってるところで本人たちは次の隠し玉持ってたりお知らせしなきゃいけないことがあったりして。
追いつく必要なんてないのかもしれないけど、でも追いつきたいんだっていうもどかしさを、めいっぱい前向きに詠んでてすごい。前向きだからこそ滲む諦めのようなまなざしが苦しい。

30.よく晴れた日常にまた繰り出そう あの瞬間のきみは希望だ(飄)

どうやって締めようかめちゃくちゃ迷いました。せっかくだし明るく締めたいな…と思いつつ、29首目が前向きだけど前向きなだけじゃない感じがあるからこそ、それを踏んでもいいしな…と思ったり…
「雨の降る日常にまた繰り出そう」
という候補もありましたが、全体的に晴れやかに終わりたかったので晴らしました。
「楽しかったし明日からまたがんばるぞ」と「あの特別感から急に現実やってられっか」の反復横跳びが常です。

おわりに

以上、30首感想+振り返りでした!

また、ネプリを出力いただいた皆様、誠にありがとうございました。
お手に取っていただけて本当に嬉しかったです。

そして改めて、途中ものすごく時間が空きながらも長い間遊んでくださったしまさんもありがとうございました!
この企画があったので、短歌から離れ切らずにいられました。

企画だと普段選ばない語句の詠み込みや新しい見方ができて幅が広がるし、刺激があって楽しいです…!

また機会があれば挑戦したいです!

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