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高瀬川とバー

 木屋町に流れる高瀬川を背負いながら、煙草に火をつけようとしたが、思ったよう火がつかない。近くの居酒屋でうるさくさわぐ人間の声に耳をふさぎ、二十分はたっただろうか。川の奥からようやく待ち人がやってきた。現実を静かに呪いながら思わず目を逸らし、1本も吸わなかった煙草を昨日買ったばかりのシャツのポケットにしまいこんだ。

千龍平「高瀬川とバー」より

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