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『生命記号論』を読みなおした後の散文

私たちが科学の歴史をふまえて、環世界理論を解釈し始めるとすぐに、これまでばらばらだった物事が次第にあるべき所に落ち着き始める。環世界理論は、生き残るのは遺伝子、個体、種だけでなく、むしろ、翻訳のパターンであることを私たちに教えてくれる。ある生物にとっての環世界は、その生物が感覚を介して周りで起きるできごとや重要な局面を自分にとって不可分にしたものであって、その意味で生物による周囲の現象の征服であると見なすことができる。環世界とは生物が自分の視点から眺めた周囲の世界の表現、となる。
現世界は、生物が周囲の世界に対して窓を開く方法であるということもできる。その中で生物は自分にとって重要な意味を持つ局面を選びだし、それを記号として認識する。蛾にとっての環世界は非常に静かなものだが、それでもコウモリの放つ限られた周波数の音を捕えることはできる。これは蛾にとって生死に関わることである。そのことによって周囲の世界に対して開いている。生物は自分の環世界を通して周りの生態系と記号論的な関わりを持ち、その一部になって行く。これは既に第3章で見たように、水平方向の記号過程であって、生態系の隅々にまで及んでいく。

GPT

生命記号論(Biosemiotics)において、「水平の記号過程」と「垂直の記号過程」は、生物が環境や他の生物との関係をどのように意味づけ、処理するかを理解するための重要な概念です。ここではそれぞれのプロセスについて説明します。

水平の記号過程(Horizontal Semiosis)

  • 定義: 水平の記号過程は、同じ生物種間または異なる生物種間での情報の交換を指します。この過程は、個体が他の個体と対話する際に観察される相互作用です。

  • 例: 水平の記号過程の典型的な例は、動物のコミュニケーションです。例えば、鳥の鳴き声は、縄張りの主張や求愛行動など、同種の他個体に対する情報伝達の手段です。また、異種間の相互作用、例えば花とその受粉者との間のコミュニケーションも含まれます。

垂直の記号過程(Vertical Semiosis)

  • 定義: 垂直の記号過程は、生物が遺伝的、表現型的な情報を世代間で伝達するプロセスを指します。これは主に親から子への遺伝情報の伝達と考えることができますが、表現型の遺伝だけでなく、文化的または社会的な学習を通じての情報の伝達も含むことがあります。

  • 例: この過程の例としては、ある動物が持つ特定の生存戦略が遺伝子を通じて子孫に伝えられることが挙げられます。また、狼やチンパンジーのような動物が子どもに狩猟技術を教えるのも垂直の記号過程に含まれる場合があります。

これら二つの記号過程は、生命記号論の基本的な概念であり、生物がどのようにしてその環境と対話し、生存と繁栄のために情報を処理し利用するかを理解する上で中心的な役割を果たしています。水平の過程は主に生物間の相互作用を、垂直の過程は進化や発達の文脈での情報伝達をそれぞれ扱います。

YOU
ホフマイヤーは”生命はDNAというデジタルと肉体というアナログの二つに託されたメッセージの間の記号論的相互作用によっている”という。これは垂直の記号過程における理解です。では一方で水平の記号過程において”生物は自分の環世界を通して周りの生態系と記号論的な関わりを持ち、その一部になって行く。これは既に第3章で見たように、水平方向の記号過程であって、生態系の隅々にまで及んでいく。”とも述べている。これらの文章から水平の記号過程におけるデジタルなものとアナログなものは何に相当しますか?


ホフマイヤーが指摘しているように、生命はデジタル(DNA)とアナログ(肉体)の間の記号論的相互作用として理解されます。この枠組みを水平の記号過程に適用する場合、生物がその環世界(Umwelt)とどのように相互作用するかを見ることが重要です。

水平の記号過程におけるデジタルとアナログ

  1. デジタルの要素:

    • 水平の記号過程における「デジタル」は、生物が持つ遺伝的情報やコード(例:DNA)だけでなく、情報の伝達やコミュニケーションにおける明確で固定的な信号や記号にも適用されることができます。例えば、鳥の鳴き声や動物の体色変化など、特定の意味を持つ明確なシグナルや記号がこれにあたります。これらは、デジタルと見なされることがあるのは、それらが比較的変化に富まない、明確にコード化された情報を伝達するからです。

  2. アナログの要素:

    • 一方で、「アナログ」は、生物の肉体や形態、行動など、より連続的で流動的な特性を指します。これは、生物の動き、姿勢、匂いなど、より複雑で細かなニュアンスを含む情報伝達手段を含みます。アナログ情報は、その表現が連続的であり、状況や環境の変化に応じて微妙に変わることができるためです。

記号論的相互作用としての生命

ホフマイヤーが述べる通り、生物は自身の環世界を通じて、周囲の生態系と記号論的な関わりを持ち、その一部になっていきます。このプロセスにおいて、デジタルな要素(固定的なシグナルや遺伝的情報)とアナログな要素(行動や形態の変化)は互いに影響し合いながら、生物が生態系の一部として機能し、進化していく基盤を形成します。これにより、生物は環境に適応し、他の生物との関係を築いていく過程で、デジタルとアナログの情報が連携して用いられます。

YOU
水平の記号過程におけるデジタルは人間の場合は”言語”として捉えることができると思います。これは理事無礙の世界観と通じる部分があると思います。事物と意味が一対の関係性で表されている/言葉によって分節するという意味においてです。また、「理事無礙」と「事事無礙」は表裏一体です。世界を「性起」という奥からの視点で見ると「理事無礙」として、「縁起」という表の視点から見ると「事事無礙」として捉えられます。これらを踏まえて水平の記号過程における事事無礙的関係性とはどのようなものでしょうか?

水平の記号過程において「事事無礙」的関係性を探る際、仏教の縁起の概念と、記号論的なアプローチがどのように関連しているかを考察することが有益です。事事無礙は、事物同士が互いに障害することなく、自由自在に関係を結びながら存在する状態を示します。この概念を水平の記号過程に適用すると、生物間のダイナミックな相互作用としての意味のやり取りを理解する鍵となります。

水平の記号過程における事事無礙的関係性

  1. 相互依存性: 事事無礙の世界観は、事物が互いに独立した存在ではなく、相互に依存して成り立っていることを強調します。生物間のコミュニケーションにおいては、一方の行動や信号が他方に影響を及ぼし、それがまたフィードバックとして元の生物に戻ることが多々あります。これは、環境や他の生物との相互作用を通じて意味が形成されるプロセスを示します。

  2. 意味の流動性: 生物間のコミュニケーションは、固定された意味ではなく、文脈に応じて変化する流動的な意味を持ちます。例えば、ある鳥の鳴き声が、状況に応じて警戒信号であったり、求愛行動の一部であったりするように、同じ記号が異なる意味を持つことがあります。

  3. 環境との一体性: 生物はその環世界において、自然界の一部として機能します。この観点から、事事無礙は生物がその生態系内で異なる要素と障害なく協調し、共生する様子を描きます。例えば、植物が昆虫による受粉を促すために特定の色や香りを放つことなどが含まれます。

  4. 複数の相互作用の収束: 事事無礙的な関係性は、複数の相互作用が生物の行動や生存戦略に統合される過程を示します。この収束は、生物が環境の変化に適応し、進化の過程で新しい形質や行動を発展させる基盤となります。

このように、水平の記号過程における事事無礙的関係性は、生物が他の生物や環境との間で意味を交換し、共進化していくダイナミックな相互作用の総体を表します。この過程は、生物がその環境における生態的なニッチを形成し、また、文化的な進化の過程でも同様に重要な役割を果たすことがあります。

生物の垂直の記号過程は遺伝子の計算によって紡がれた叡智である。ここに私は生物への尊敬を持っている。Calmbotsを作った際に、生物を「計算結果」として解釈した自分(解釈項)がいたときにこれに気づいた。生物を「計算結果」としてコンピュータの処理にかけると面白い発見がいろいろある。ゴキブリはどうやら”隠れる特性を持つインターフェース”であるし、セミは”飛ぶスピーカー”である。このような水平の記号過程はコンピュータによって成り立っている。これを忘れてしまってはカルト宗教になってしまう。地面に根を張っていないという(実用的でない)点においてだ。

自分の芸術活動は二つに区分するべきである。

  • 哲学を示すシンボルとしての作品

  • 生物を「計算結果」としてコンピュータの処理する作品

前者に取り掛かっているのだが、これがまた難しい。

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