見出し画像

じぶんの満足ポイントを知る

 私はよくある長方形のファミリータイプのマンションに夫と子ども3人で住んでいる。広さでいうと75㎡といったところで、平均的だとは思うのだが、やはり子どもが大きくなるにつれてモノは増え続けるので、定期的にモノの見直しをしている。

私は母譲りで片付けの本や番組を見るのが大好きで、母との話題はもっぱらそれだ。
だが、両者ともすごくスッキリ片付いた部屋には住んでいない。
好きでも実行できるかは別のようだ。

片付けの中にも主に、”断捨離”といわれる、モノを捨てる行為がある。
それでやっちゃいけないのは、人のモノを勝手に捨ててはいけないことだと思っている。
捨てなくても相手に「これ、いらんやん。捨てよーやー。」などというのもタブーだと思っている。

モノには使ってなくても、思い出もあるから、ガラクタに見えても個人にとっては大切なモノというのは大いにある。

実家に帰ると徐々に増え続けているものがある。
それは大小さまざまな”ぬいぐるみ”。
最近は手のひらぐらいの小ぶりな物が多いのだが、これは母がクレーンゲーム(UFOキャッチャー)で獲得したものだ。

小さいころ、私の弟がUFOキャッチャーが好きで週末のお買い物ついでによくしていた記憶があるが、母が駄々をこねる弟に付き合っていたものと思っていたが、大人になってわかった。
UFOキャッチャーが好きなのは母だった。

実家に帰ると母が「これ可愛いやろ~♡」と獲得したぬいぐるみに反応した子に嬉しそうに話す。子どももそれで楽しく遊べるのですごくいいのだが、私はクレーンゲームはするとしても確実にいけると思ったお菓子のものしかしないし、ぬいぐるみのコレクションもしないので思うとこもあるのだが、人のモノにとやかく言わないと決めているので、温かく見守っている。

 私が息子と子ども服を買いに近所の商業施設に買い物に行ったある日のこと。
その商業施設のこども服売り場には、ゲームセンターも入っており、ゲームセンター横にエスカレーターがあるため、そこを通りがかった。
その時、「その子、男の子かー?」と少し、だみ声の母よりちょっと年齢の上ぐらいの女性にちょっと強めに声をかけられた。
「あっ、はい。」私は突然でびっくりし小さく返した。
するとその女性は「このトラな、貰ってくれへんかな~」と大きな、サイズでいうと柴犬ぐらいのトラのぬいぐるみ、しかもデフォルメした可愛いやつでなく、わりとリアルなぬいぐるみを突き出し、「貰ってくれたら助かるわー」と繰り返されたので、私は「いいんですかー?」と返事をした。

私のその”いいんですかー?”は別にほしいとは思ってないけど相手が好意で言ってくれてるなら貰っておこうの意味ではなく、
”えっ!!せっかく獲得したその大きな獲物!、簡単に手放して”いいんですかー?”の方である。

半ば強引に押し付け、その女性は立ち去ってしまった。

私は母をみてきたので、そんな人がいる事に衝撃を受けた。
真意はわからないが、彼女はぬいぐるみを獲るまでのことが満足値の頂点でその後はどうでもいいのかと考えた。
それでも、たやすく手放せる彼女はすごいと誇らしくも思ったし、モノとの向き合い方のいい基準ができたと考えさせられる一日だった。

 そうしてあれから数年…。
今も我が家にはその大きなトラは鎮座するのであった。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?