うきうきするコート

おしゃれな人間ではないけど、服を選んで買ったり、服の色の組み合わせを考えるのはわりと好きだった。
出産して、仕事にも復帰して、新しい服を買うこともあまりなく(子連れで出かけると、試着室に入るというそれだけのことが、恐ろしく大変だからだ。抱っこ紐で行けばまず無理だし、ベビーカーも試着室には入らない。大人が複数人いない限り、試着は不可能になる。子が歩き出せばそれはそれで困難を極める、試着室におとなしく入ってはくれないから)、服を着る楽しみがないなあと感じるようになった。

そこで、話題になっていた、パーソナルカラー診断・骨格診断に予約を入れて、行ってみた。
結果として。
色は、自分が好きでよく選んでいた色みが『似合う色』と診断されてホッとした。
が、骨格診断のほうは、あまり好きではないテイストの服が『似合う服』だと言われて、ちょっとガッカリしながら帰った。

それからというもの。
いざ服を選ぼうとしても、「これ、私の骨格だと似合わないやつだ…」と思ってしまう。
「こういうのが、私に似合う服と言われたから…」と、たいして好きでもないデザインの服を買って着てみたものの、気分の高揚が一切ない。
「これが、似合うのか。まあ、たしかにスッキリ見えるかもしれない。なんの変哲もない服だけど」
たまに家族で出かけて、夫が子どもを見てくれていても、服選びに対するテンションが上がらず「いいや、この服もこの服も、私には似合わないから…」とシュンとして戻っていく。そんな日々が続いた。
なんだかもう、何を着たらいいのかわからない。
「私に似合う服なんてない」くらいの気分になり、少しでもおしゃれを楽しめるようになりたいという気持ちで診断に行ったはずが、むしろ服を選ぶのが苦痛になった。

それで、しばらく診断結果のことは考えないことにした。
そうしているうち、また「こういう服が着たいな」と思いつくようになった。それは、私の骨格には合わないとされた服だったのだけど、着てみるととても気持ちが良く、「これ可愛い」と心から思え、楽しくなった。

スタイル良く見せることは叶わないだろうけど、いくらスタイル良く見せるためと言われても、私は体の線が出るような服は好みじゃないんだった、10代の頃からずっと。
それなのに、診断結果のまま、「ジャストサイズの服」「きちんとしたシャツ」「肉感を拾わないけどちょうどいいパンツ」「厚地のタイトめのスカート」などを選ぼうとしていた。
正直、どれもこれも好きじゃないのだ。
ゆるめのシルエットが好きだし、襟のない服や変わった襟の形の服が好きだし、だぼだぼで柔らかい素材のパンツが好きだし、スカートなら少し広がるものが可愛くて好き。タイトスカートって動きづらいし。

お金と時間を使って診断を受けて、わかったことは、「好きなもの着てる方が元気が出る」という、当たり前のことなのだった。

それでも、好きな色が『似合う色』とお墨付きをもらえたのは、自信を持って選ぶ根拠になったので、診断を受けたこと自体はよかったと思う。
でも、似合わないと言われた黒も、やっぱり便利だから着ちゃう。
だって、コートを買うとなったら、やっぱり便利な使い勝手のいい色がいいじゃないか。

この冬、mercibeaucoup,(メルシーボークー、)のコートを買いました。
色は黒。
ウールなんだけど本当に軽くて、なのにあたたかくて、まあるいフォルムで、裾が絞れるからロング丈でも座ったとき地面に付きにくく(子と公園遊びするときに重要なポイント)、首回りにボリュームがあるのでマフラーなしでもぬっくぬく。
袖にリブがあるのも、冷たい空気が入ってこなくてとてもよい。
毎日うきうきと着ている。自分がもこもこ、ころん、として見えるのも、私としては嫌じゃない。

好き、と思える服を着るのは楽しい。

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