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新宿の片隅で



SION
[新宿の片隅で]


初めてその名前を知ったのは
雑誌の宝島に掲載されていた記事だった。

たくさんのアクセサリーと長髪で
最初は女性のハードロックの人かと思った。

高2の冬に自主製作盤の[新宿の片隅で]を
文字通り新宿の片隅のレコード屋で買った。
帝都無線だったと思う。



黒と青を基調としたジャケットが
何か知らない世界へ誘われてるみたいで
ワクワクした。

レコードプレーヤーに針を落とすと
独特な世界が広がり動けなくなった。

剥き出しのハスキーボイスと
ギターとピアノのみの演奏が中心で
バンド演奏は1曲のみ。

お茶の間のテレビからは
絶対に流れない世界観。
リアリティに溢れる歌詞も凄かった。




高3の茹だるような暑い夏の日。
御茶ノ水のダブルデッカーという
ロックファッションの店で涼んでいると
[おい!あれ…]と友達が叫んだ。

急いで店を飛び出ると
ステージ衣装のままのような格好の
フリンジ付きの革ジャンで歩くシオンが居た。

駆け寄って握手して貰った。
シオンは伏し目がちに照れくさそうに
サウスポーの左手を差し出してくれた。

帰宅してから手も洗わず嬉しさのあまり
ギターのネックに左手を擦り付けるという
何だか意味の分からない事をした。

あの時のギターは
どこかに行ってしまったけど
あの時のレコードは
今もターンテーブルの側に在る。


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