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1st Album 「劇処 怪演装苑」全曲解説

改めて、今回のアルバムに収録された楽曲を制作裏話、レコーディング、編曲話、歌詞の内容等、濃厚な解説をお届け致しましょう

1.埃被ったカルト

この曲は6月ぐらいに制作した曲で、最初のタイトルは「Suicide Party」。なんか何も知らない女の子が連れられて、森の中にある精神病棟に案内される絵面が浮かんでいたんですが、内容を色々考えてる内に、丸尾末広のの少女椿のみどりちゃんが、主人公として浮かんで、精神病棟は見世物小屋へと舞台を移しました。 

歌詞を見ていくと

化物小屋のカーニバル 奇妙な運命に笑う
捨てられて弄ばれ 家にも帰れない
埃被ったカルト 私もその一部なのよ
怖がって騙されて 貴方もどうぞ道連れ

と、見世物小屋内での宴会が催されてるのが分かるかな? その楽しい雰囲気と裏腹に病んでいる感じのみどりちゃんが流されていくのが本題である。

編曲面では、Black Metalをたまたま聴いてて、それっぽいGtを謙信(D.ALAEVE)に頼んで、時代背景を見てマンドリンの音とかも入れてみて、編曲がある程度完成して暖めてた時期にふと歌舞伎の要素を入れてみようと発起し、能管フルートや小鼓のフレーズ入れてみたらめちゃくちゃハマって、結果的に和洋折衷の歌舞伎メタルな自分的に新しい内容になりました。

2.地獄坂

この曲は、アルバムの曲がある程度揃った後に、世界観の濃い楽曲が並ぶ中で、敢えて自分らしい曲を作ってみたらどうか?と言うテーマの元、制作を始めました。 

たまたまですが、ある人物と揉めていて、その時の自分の怒りの感情だったり、自分の闘いたいと言う気持ちが先行して、その感情のインスピレーションで侍の存在が出てきて、侍が使う用語を取り入れてみました

討捨(うちすて)
追切(おいきり)
獄門(ごくもん)
逆寄せ(さかよせ)

編曲面では、疾走感のあるノリだったり勢いを課題に、特にBassのフレーズに拘って作ってみました。 Gtを弾いてくれた松田君のアイデアと斬撃の効果音を随所に散りばめ、今までになかった和ロックな楽曲になったのではないかと。

3.ネグロマンティック

この曲のタイトルは造語でネクロマティック(死姦愛好等の変態趣味)、グロテスク(奇怪で異様)、ロマンティック(情緒的で甘美)を合わせた言葉で、全ての意味合いを含んでます。 

最初は「お化け屋敷」をテーマに仮歌詞を考えていて、お化け屋敷に関する映画や記事を沢山見ました。調べていく内に、起源はPhantasmagorieと言うフランスの幻灯機を用いた幽霊ショーで、今でこそお化けは襲ってきたり、危害を加える存在になりましたが、当時はそこにボーっと薄暗く存在して、不気味な姿を見せているだけだった様です。

歌詞も書いていく内に色んな要素が入ってきて、お化け屋敷と言うより、幽霊屋敷を舞台に繰り広げられる残酷ショーな内容になったと思います。一番絵面的に近くなったのが、「TATARI 呪いの館」(2007)ですね。幽霊に嬲り殺されながら、残酷の中の美学があり、そこをちゃんと見世物として成立させた歌詞となってます。

今宵も甘美なPhantasmagoria 美しい死が待ってる 
貴方と素敵な夢幻の舞台 お友達も誘いましょう
Sha la la la la la 痛みが廻る 
Sha la la la la la 鮮血の美学
Sha la la la la la 観客は笑う 
Sha la la la la la 狂気の仮面

編曲面では2018年にV系の界隈で解散して交流のあったZAKLIAさんを参考にさせて頂きました。特にホラー感のある歌詞にメタルの音楽性をどう入れるかのセンスが素晴らしいので、ご興味ある方は是非聴いてみて下さい。ちなみにこの楽曲のGtを担当してくれた松田君はZAKLIAのメンバーだったのでこれも奇遇ですね。今年学習したGtのテンション感の入れ方がDメロ辺りで怪しさを加えております。

4.Deformity Circus

この曲は2020年の2月ぐらいから制作を始めて、完成したのが夏ぐらいだったと思います。シングルとして出しましたが、当時のボーカルやMixが気に入らなくてちゃんと歌い直して、Mixも自分で今回は担当して、時間も相当かけた思い入れの深い楽曲です。

見世物小屋をテーマに資料をいくつか調べていて、フリークショーやサイドショーというキーワードが出てきて、同じ時期に「怪物團」(1932)の映画を観た事で、見世物芸人のもの哀しさを中心に描きました。

畸形なサーカス もてはやされた青物寸劇 
今では誰も 見向きはしない 
歪な道化師 極彩色の狭い小屋で 
明日も演じる 僅かな泡銭 

見世物小屋自体は隆盛してた時期から段々廃れていくんですが、娯楽を求める人々が飽き足らず欲望を増していく、そんな人間の本質も描いて、その頃椎名林檎さんの歌詞を研究してた事もあり、言葉遊びもちょいちょい入れた内容になりました。

赤の他人の悲劇 お茶を濁して飲み込む
醜い下衆の心理
いつも僕らお腹が空きます

作曲面では、仮歌詞を書いた時点で降りてきた部分もあり、コード進行は独特の進み方を見出せた、面白い内容になったと思います。編曲面でも最初Jazzから始まって、Maryrin Mansonぽい展開に入り、歌謡曲ぽい音色の世界に誘ってくれる、Gtを担当してくれた松田君のエフェクトGtもなかなか良い味を出して、独特な展開と見世物小屋に相応しい楽曲になったかと。

5.顔のない眼

この曲は前説でも書きましたが、同映画「顔のない眼」(1960)を参考にして書いた楽曲。この頃に映画の脚本の書き方を勉強してた事もあり、歌詞の書き方が通常の歌モノの構成とは違って書いてます。視点的には、映画の中の医者役の父親の視点。7曲目に出てくる「悪趣味な博士の人体実験」のマッドサイエンティストと同じ主人公になってます。

世間は 私の行いを知らない 
悪魔は 恐ろしい舞台を操る 
何度も 無惨な姿におのめく
獣が 戻れない地獄の呪縛

この「私の行い」ってのは、見知らぬ少女を誘拐して顔の皮を剥ぎ取る行為。「地獄の呪縛」は一度人殺しをした人間は罪悪感が薄れ、また同じ行為に及んでも感覚が麻痺し、同じ過ちを繰り返すと言う人間の業を言ってます。

作曲面ではなるべくシンプルな構成でメロラインに凝ると言う課題で、でもやっぱり曲全体の怪しさは欠かせなかったので、随所随所で良い味付けをしたバランスの良い曲になったかと。

レコーディング面でも「曲が声に合ってる」と言う意見があったぐらい、声質にマッチした音域のメロラインになってます、エンディングのGtソロの怪しさは担当した松田君のセンスが素晴らしい。

6.桃源病棟

最初の仮タイトルは「実験的」で、実験でも何の実験が良いんだろうと考えた時に調合実験が良いかなと思って、覚醒剤を調べたりして、実際に覚醒剤の略称を使ってます。

エル エックス エムエム イル
デジタルジャンキー メンヘラジャンキー
ガセネタ 
エル エックス エムエム イル
モバイルジャンキー セックスジャンキー
集まれ

全体的な内容を考えてる上で、恐怖劇場の演目としてやるに当たって、役者が薬を使っておかしくなってお客さんを巻き込んでいく絵面が浮かんだので、そういうアングラ劇を調べると寺山修司に行き当たり、参考に寺山修司の劇や映画を参考に観ました。また楽曲の内容も実験的と考えた時に曲構成も面白い方が良いかなと思い、Auto ModのEESTENIAと言うアルバムを一番聴き込んだのもありました。Auto Modは演劇性とアングラ性をバンド演奏で融合させた先駆者で、80年代では先駆者と言って良いでしょう。

僕たちは人間です I am a Japanese
大目玉見えますか? 合唱が聴こえてくる 
五寸釘打ちますか? My name is xxx
天国へ行きましょう 人間も辞めましょう

特にここの部分は、寺山感が前面に出た歌詞で、声のエフェクトもレトロっぽいプラグインでレコードで聴く様な効果を出せたかと。編曲面では激しいドラミングに怪しい鍵盤が随所随所で聴けるので、まあ独特な曲ですね。

7.悪趣味な博士の人体実験

この曲も2020年の3月ぐらいから作り始めた楽曲で、前説でも書いた「Grand Guignol Theater」シリーズをどう描くかと試行錯誤してました。アメリカンホームドラマの「アメリカンホラーストーリー」Season2の精神科病棟シリーズをその時観てて、精神を崩壊した人々の空気間や精神病棟での生活を参照しながら、キチガイになってしまった時代による世の中の情勢感を説明した内容で、歌詞を進めていく内にドラマのマッドサイエンティスト役の視点になりました。

1890年化学は新しいページを 悪魔に囚われた時代は変わる
正義を振りかざし隔離された実験の残骸 
今夜も私のおもちゃが増える

作曲面では、ちょうど行き詰ってた時期で、新たに学習した和音感を取り入れようと意識を変えたのが奏を功しましたね。仮歌詞の段階で骨組みはほぼほぼ出来ましたが、それまでが難産だった珍しい楽曲です。

編曲面では、アコースティックベースをこのテンポで入れてみて、Drの音色もなるべくローファイに変えてみて、尚且つGtを担当してくれた松田君のセンスが光る内容になったかと。恐怖劇場に相応しい怪しげな楽曲に仕上がりました。

この曲は去年出したシングルに入ってるのですが、当初はアルバム収録予定ではなく、制作が遅れてしまい配信日を延期した事のお詫びとして入れましたが、アルバムのこの位置に来た事でなかなか良い味を出してくれてます。

それは人である事 人であった事 人を忘れてしまった 
世にも奇天烈博覧会 キチガイ病棟へようこそ

特にここの部分は仮歌詞をそのまま持ってきたぐらい、自分でも好きな箇所ですね。

8.残虐な道化師

見世物小屋と言えば、ピエロ。そして、月影に影響を与えたバンドも90年代00年代V系のPIERROTと言う事で、所縁の深いテーマで取り組んだのが、2020年の夏ぐらい。最初は道化師関連の資料や映画を数多く観ました。

「JOKER」「CROWN」「ITイット」「フェリーニの道化師」観ていく内に何を描こうかと試行錯誤して、仮歌詞を進めていく内に、ステージに立って全く観て貰えない自分こそ道化師なのではないかと捉えてきて、舞台裏の哀れな姿や惨めさ、自分が感じてきた悔しい気持ちも乗せながら、歌詞を完成させました。

Ah 今夜も笑われて 赤いカーテンには立てない             Ah 惨めな舞台裏 静かに片付ける

Gtを担当してくれた謙信(D.ALAEVE)も言ってたけど、割とモダンな仕上がりになったと思います。そういう意図はなかったけど、負の感情を表に出していけば自ずとデスボイスに繋がる。シンプルだけど、微妙な匙加減のGtのエフェクトはこの曲の味を出してますね。

もの哀しいピエロだけど、本当は凶暴な姿にも変わりうる。そんな見世物としての心理を描きました。

9.感染都市

この曲は見世物小屋シリーズでも恐怖劇場シリーズでもないです。前作Heretique AventureのEpisode.2のストーリーの続編として描いたモノですが、2020年の秋に初披露して欠かさず歌ってきた楽曲。だからこそ、これからもやっていくし、好きな人も多いこの曲を入れました。

シングルとして去年出した曲ですが、歌もMixもやり直したいと思い、3曲目のDeformity Circus同様、歌も録り直しMixも自分でやってみました。

最初に制作したのは、2020年の夏。意外ですがテンポの速いロックナンバーあまり作った事がなくて、尚且つチューニングも結構低い、自分の中では挑戦も含まれていて、挑戦に近い制作でした。

誰もが体裁を守る大人しい愚純な今
目の前の他人は笑った顔して人を踏み付け

この部分は僕の世の中に対するアンチテーゼですね、どこか塞ぎ込む様な自分もどこかにあって、当時描いてたストーリーの主人公もそういうキャラクターで彼の視点で展開していきます。

いつしか人を信じれなくなって
自分もどこかで憎みながら
出口の見えない底なし沼で
君の姿を僕は呼んでる

この部分はストーリーでVAMPIREになってしまった自分を呪いながらも、共に戦ってた同志の友を想う場面。

永遠の命など僕には必要ない 人は皆バケモノだ
こんな世界など一度壊れてしまえば良い
いっそ 殺してくれ

永遠の命と言うのは、VAMPIREになってしまった宿命。そして死ねない自分に対しての「殺してくれ」と言う願い。

律辱の雨が降り注ぐ 感染の波は広がっていく
己を守り他人を守らない
知らずに人を襲い始め
罪の意識もなく 獣に変わる
醜い姿を見せつけて
浸食されていく 欲望に

この部分は実際にコロナになった世の中を見ながら、ある人は自粛しながら、ある人は気にせず呑みに行ったりして、実際に感染してしまったとしても自分は治るけどその期間人に撒き散らす行為ってのは、歯止めが利かないよなと、たとえそれが無意識だったとしても。そういう部分を描きました。ちなみにここのGtの音色は左と右で違う音色を使ってて、鍵盤と歌を引き立たせながら、主張するというなかなか高レベルな事をしてます。

10.不忍心中

このアルバムの中で一番原曲が古い楽曲となってます。10年以上前に大奥の映画版を観て、ストーリーをそのまま歌詞に起こした内容が最初で、タイトルも「月と桜」で音源化もする事無く、編曲する力も当時はなかったから、コードと歌詞だけしかない状態から、掘り起こしたのがこの曲。

今年の夏に偶然上野方面を通りかかった時に、初めて不忍池を見て、そこからインスピレーションが沸き、歌詞も全て書き換え、ストーリーも加筆して、エレティック仕様にして完成させました。

大奥の絵島生島事件が大基になってるんですが、恋愛を知らない大奥総取締役が歌舞伎役者に一夜の恋をして、世の中の情勢により厳しく罰せられ、男は処刑される悲恋の話。この女性役を見世物小屋の少女に設定し、不忍池を見ながらそのまま引きずり込まれそうな場面を描きました。

自分の存在を呪えば呪う程 幸せを望めない
怖がって踏み出せない私を変えてくれた
一夏の夢でも

この少女は自分の想いを素直に伝えれない、ただその譲歩を歌舞伎役者の彼が後押ししてくれる

求め合う程 朝の日差しが切なくて 愛しい
戻らない貴方が まだそこにいる様で
このまま何もかも 水の底に引き摺り込まれて 
貴方とこの場所で目を閉じて最後を迎える

大奥の台詞で絵島が「ただの一夜の恋でも、余生とも思える恋と思えた」と言う場面に感動し、そんな彼女の感情を描いてます

編曲面では、Bassラインが非常に良い味を出せたと思っていて、Gtを担当してくれた松田君も主張し過ぎず、楽曲の世界観を引き出すと言う良い仕事をしてくれたと思ってます。またこの曲の冒頭部分では実際に歌舞伎で使われてる打楽器の数々を聴く事を出来ます。実際に歌舞伎を観に行く機会が今年はあり、そう言った意味でも新たな境地を開いてくれた楽曲かと思います。

11.Grand Guignol Theater

言わずと知れた代表曲です。初めてライブで初披露したのが2018年の3月で、この曲はその年の夏にMVも作りました。そもそも今回のアルバムのコンセプトの大基になってる楽曲で、Heretique Aventure名義の2nd EPにも入れたんですが、ファンも多い楽曲、再収録致しました。

この曲の解説は随分と昔にやったので、今回は割愛させて頂きます。

窓からそっと垣間見える
残酷被虐なアングラショー

1897年に実在したグランギニョル劇場、この劇場は人間の狂気やあらゆるホラーを題材にしました。この劇場のお話はこれからも続く。


最後まで読んで頂きありがとう御座いました。月並みですが、高評価して頂くと幸いです

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