おしまい「4話」

 幸夫郎は、いつも通りお爺さんのお手伝いをする為に畑に来ていました。幸夫郎の足取りは軽く、時々大粒が見える霧雨を捕まえようとしたり、いつの間にか出来ていた小さい水溜りを蹴ったりしていました。……しかし、畑に着くと、その足は重くなったようにゆっくりになり、やがて止まりました。

「なんだ……こりゃあ」

 今まで頬を上にあげて、遊びに行くのが楽しみな子供の様だった顔が一転。瞳全体が見える程に目を見開き、口も半開きで震わせ、霧雨を掴もうとしていた手は行き場を無くしたかの様に空中を彷徨っていました。

 無理もありません。幸夫郎の目に飛び込んできた物は、昨日までは成長期を連想させる程元気よく育っていたのにも関わらず、その面影を一切感じられないくらい、一つ残らずぐちゃぐちゃに踏み潰され、雑に掘り返されたのか根っこだけ千切れて残ったりしていた……お爺さんと大切に育てていた作物だったのです。

 幸夫郎は単純でした。畑を見て数秒経ち、状況を理解すると、当然怒りました。そして「絶対に許さねえ!」と、直様犯人を見つけに行きました。

 お爺さんに報告する前に行ったのは、幸夫郎の性格です。幸夫郎は、一度怒ったら怒らせた相手を後悔でもさせてやろうと、何も考えずに行動してしまうのです。豊との喧嘩も、この性格が無ければ少しはマシになったのかも知れません。

 暫く歩いていると、トンネルを見つけました。近付いてみると、何やら物音がします。動物がいるのでしょうか。

 幸夫郎は、畑を荒らした犯人は、そこに隠れているのだろうと確信し、トンネルの中にずかずかと入って行きました。____そこにいたのは狼達でした。

 幸夫郎はもう一度、畑を荒らした犯人はこの狼達だと確信しました。何故ならこの狼達は、とにかく人を困らせるのが大好きで、都に降りては人々を襲い、食糧を奪い、村に出れば畑を荒らし、また食糧を奪う。

 この狼達は、人間は勿論。周りにいる動物達からも嫌悪されていました。……と同時に、恐れられていました。この狼達は強い人間、例えば、猟師などには絶対に手を出しません。しかし弱い人間、例えばお爺さんやお婆さんなどは、見つけた途端に襲いかかるのです。

 幸夫郎は、そんなことなど気にしていないとでも言う様に、「やい、狼め!」と叫びながら、狼達の目の前に立ちはだかりました。

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