キリコの憂鬱

電気を消して明かりを灯した
小さな生命の尊さを主張するように、
光は強く輝いているように思えた
でもそれは嘘
実際は闇がそれを揺り起こしているだけで
人工的に私が生み出した支えのようなもの
人工的な光の下ではそれはとても弱々しい

変わらない光と変わっていく光
切れかけの電灯が点滅し続ける心臓のように
溶けて終わりそうなロウソクは精神の摩耗
柔な肌が欲しがる温もりは寒さを刺激した

夜が月で太陽が昼ならば、曇りは邪魔ものでしかない
世界を遮る灰色は心が汚れているかのようで
生きていくと腐っていく自分みたいだ
嫌がる理由もよくわかる
嫌になる理由は人それぞれだ

とにかく私は、心臓の音が聴きたかった
解消されるべき憂鬱は今もずっと此処に在る
誰も左胸を差し出してはくれないから
耳を当ててじっと聴き続けることは他人がいないとね

安らぎと怯え

骨まで内臓まで嘔吐し続けたいと
トイレの便器を憎み続けていたけれど
指を喉に突っ込んでも何も出なかった
それはそう、何も入っていないから
紫色の胃液は野菜ジュースを飲んだ事を思い起こし
それが何時だったのかは教えてはくれなかった
焼けつくその割に乾燥した両手は
カサついて誰かに触れると垢切れを起こす
真夏の夕方は私を遠くに連れ去ってしまいそうで
茜色に包まれて汗を掻いて目を閉じる「安らぎと怯え」
ただ目を覚ますと少しだけ涼しくなった現実
誰かが闇の中から手招いている「こっちへおいで」
それに抗い続けているから今も生きている
さい銭箱に小銭を投げて響いた音が生命の重みか
現在地はアルミばかりで何とも軽かった
しかも今となっては嫌がられる

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