年商1億売り上げる新鮮野菜直売所が出来上がるまでの話

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これは全て実際にあった社長と私の話です。

以前、私は某ホームセンターのバイヤー(食品から建築資材までの約5万点の仕入れ責任者)の仕事を数年間していました。ホームセンターのカテゴリー部門数は20部門以上あり、1、木材2、電動工具3、塗料….と言ったように大分類で分けられていて、私の主な仕事は仕入れの総括バイヤー、全ての部門の数百社ある問屋メーカーとの商談を管理することで、365日ほぼ毎日出勤していました。

もちろん私自身売り場に出てお客さんの接客をすることもありました。客数は1日約3,000人~と田舎にしては集客力はあったと思います。売り上げも売り場拡大効果もあり10年間右肩上がりでした。

社長から新たなるミッション

そんな多忙な中、社長から新たなる事業の立ち上げ指令が下されました。社長の命令は絶対です。土建業から1代で成り上がった社長(当時70代)はカリスマ性がありワンマンの会社だったので、社員に対しての話し方は優しいですが、言われた企画は絶対に立ち上げなくてはいけません。これまで一番大変だったのはホームセンターへのお酒売り場企画の立ち上げです。何度も税務署に足を運び書類を作り直しで半年くらいかかり苦労しました。そして今回も新たなミッションが下されました。

それは..

「ホームセンターの店頭、10坪のスペースを使い野菜直売所を作れ」

というものでした。今でこそ、野菜の直売所はいたる所にありますが、当時はまだ野菜の直売所というのは農家さんが個人で道端で無人販売をやっている程度。正直乗り気ではありませんでした。日々の忙しさもあって多少、後回しにしていた感じになっていたと思います。しかし、ワンマンな社長はやると言ったら必ず実行する人でしたので、暗黙の押し(?)みたいな空気で、自分ともう一人野菜直売所専任の担当者を付けて企画立ち上げを実行していくことにしました。

最初にやったのは野菜の出品者(生産者)集め

まず、最初にやったことは、生産者集めでした。とにかく、店舗周辺約20kmの野菜生産者に声をかけました。「あなたの作った野菜を一部でもいいので委託(売れた分だけ支払う、残ったら返品する)させてくれませんか?」「ホームセンターの入口に野菜販売コーナーを作りたいので協力してくれませんか?」と、畑で作業している農家さんや、ホームセンターに農業資材を買いに来られるお客さんに片っ端から声をかけていきました。

すると返事は……

全てNO!「まあ、いつかね…」と濁される感じ…
え?なんで?一応、当時ホームセンターでは地域一番店の販売実績と集客があったので、出品しないってことはないだろうと高をくくっていたところほとんどの農家さんが出品しないという返事でした。

(当時は委託販売事態があまり習慣としてなかったので、全品現金で買い取ってもらわないと出品しないよ、ということでした) 

正直、天狗になっていた自分にはショックでした。休みを削ってのこの間約3ヶ月の声かけ営業は無駄なものに終わったと凹んでました。あーもうめんどくさい、あまり関わりたくないからもうほっておこう、現状の仕事が忙しいんだから、野菜の直売所はもう後回し!と、しばらくの放置状態に入りました。

数日すると社長は自ら(別の運転手を連れて)あちこちの無人野菜販売所へ出向いて、丸ごと野菜を買い占めて来ました。腰の曲がった年配の方が趣味で作ってる野菜や、田舎の小さい無人販売所や、農家さんがB級品として安くで販売している新鮮な野菜など。1つ100円もしないような野菜をぐるっと回って来て数千円から数万円分をセルシオのトランクや後部座席に入る分だけ購入して来ました。
そして、言いました。

「この野菜を購入してきた金額でそのまま店頭で売りなさい」

と…え?私は面食らってしまいました。あれだけ利益にこだわる社長が、利益なしで売れと!?


自分はこれまで粗利や損益分岐点など利益の出し方について徹底して社長に厳しく言われてきました。1つの商品を仕入れる時は必ず2社以上の問屋を天秤にかけて仕入れなさいとか、一人頭稼ぐ金額を常に計算しなさいとか。それが、利益率0%で販売しろとはどう言うことでしょうか??←もちろん社長には言えませんけど。

まあ、理解は出来なかったですが、とりあえずホームセンター店頭前の一部にコーナーを作って販売することにしました。(ちなみに当時一日約3,000人~くらい来店があったので店頭前も常にそこそこ賑わってました)ホームセンターの木材で簡易な商品棚を作り、商品を並べ始めました。近くの農家さんから100円で購入してきた商品を100円の値付けをして売るという作業。そうこうしているとまだ完全に並べ切っていない売り場にお客さんがわんさかわんさ集まり始め、棚に並べ終わる頃にはほとんどの商品が売り切れてしまいました。

おややや!?これが初めて体験した野菜販売のインパクトでした。

これまでもいろいろな販売企画を立ち上げてきましたが、これほど即効性のある商材はなかったです。お昼にはもう初回分はすべて売り切ってました。

一番の理由は「安い」ということだったと思います。近辺のスーパーとかできゅうり通常5本入り150円が、ここでは利益0円の100円で販売していたので。そしてもちろん社長が自ら選んできた野菜だけ並べているので良い品質の状態の新鮮な野菜ばかりでした。

その後は毎日、社長と朝の朝礼終了後に1~2時間ほど周辺を回って、無人販売所や個人販売所巡りです。目利きの社長が良いと思った野菜は全て買い占めていきます。ここからここまで全部ちょうだい!みたいな感じです。私は野菜のことがそんなに詳しくなかったのでただついていくだけでした。後の話になりますが、季節によっては社長と山に入って直接タケノコを採りに行ったり、松茸採りに行ったりもしました。←釣りバカ日誌みたい

仕入れて来た新鮮な野菜を店頭に並べる→新鮮で安いからあっという間に売り切れる。を繰り返していくうちに不思議な現象が起こって来ました。

改めて言いますがここまで利益なしで売ってます。

ホームセンターは園芸品や農業資材なども販売していますので、それらを買いに来ていた農家の方達がその様子を見ていて「うちの野菜もちょっと置いてくれ」「農園の野菜を持ってこようかな」と変化し始めたのです。あれだけ最初は出品するのを嫌がっていたのに。まさに、「虎穴に入らずんば、虎子を得ず」…いや、ちょっと例え方は違いますが、とにかく生産者の方たちは、「ホームセンターの店頭でも野菜が売れるんだ」と感じてくれたみたいで少しずつですが出品依頼が増えてきました。

ここまで来るのに約半年。しかし、そうなってくれば、そこからの勢いはすごいです。たかが、1品100円と侮るなかれ、野菜コーナーだけで年末になると日に30万ほど販売するほどの人気部門になりました。品揃えもそこまで苦労することは無くなりました。それから

しっかり軌道に乗せるため、改めて専門の野菜担当者も付けました。

ここで重要なのは、最初に付けた専任担当者ではなく、花や野菜について詳しい野菜売場専用の担当者を付けたことが後に大きな効果を上げました。専門の担当者は、(実はシルバー人材センターから引き抜いた)花や野菜にくわしいおばちゃんで徹底して新鮮な野菜にこだわってくれました。

売り場で少しでも古くなった野菜などや値段に合わない商品は排除していき。お客さんからの野菜の調理法や、保存の仕方などをしっかりアドバイスしてくれるマネージャー的存在に徹してくれたことが野菜コーナー全体の信用度を上げる重要なポイントとなってくれました。

驚くことに、2年目の決算が終わる頃には、年商1億くらいの売上を上げる部門に育ちました。

しかし社長の本当の目的はこれだけでは無かったんです。

私たちは、同時に野菜直売所の生産者を少しでも増やすために、定年退職した年配の人達にも野菜の育て方、作り方を教えて出品する生産者を増やしてきました。結果2年で200人以上の生産者が増えたんですが、実は社長はここまで想定内でした。

「野菜を買ってくれたお客さんに美味しいと言ってもらうことが楽しみ!」と言う、自家野菜つくりに全力を尽くしてくれる野菜生産者の方が増えてくると、その生産者の方達は農業資材や肥料などを買ってくれます。なのでホームセンターの農業資材部門の売上も大きく伸びてきました。その効果は凄まじいものでした。

ホームセンターで野菜を作るための農業資材を買う。野菜を作って販売する。儲かったお金で農業機械などを買う。また野菜をたくさん作って売る。

その時、社長が言いました。

商売は最初から儲けようと思ったらダメだよ。結果は後から付いてくるから

もう、その言葉を聞いたときは、カーネギーやナポレオンヒル並みの言葉の重みを感じました。しかもリアルに体で体験させてもらいました。もちろん、今でもその言葉は衝撃的で自分の中で最も重要な言葉として生きています。

それから、数年後、社長は次の大きな企画の夢半ばで他界してしまいました。その夢はさらに大きな直売所を作って行くことが夢でしたが、今ではもうあちこちに野菜の直売所が出来たので満足していると思います。

社長が亡くなる同時に、朝礼後に無人直売所や個人直売所を巡って野菜を仕入れることは無くなりました。その後、その個人直売所を通りかかった時に一人で立ち寄ったことがありますが、みんな口を揃えて「あんたんとこの社長には感謝している」と言ってくれます。もしかしたら社長はここまでも考えていたかもしれません。

思えば、この時間にいろんなことを体を張って教えてもらったなと今更ながら感謝しています。それから数年、今、まさに自分が、新しい試練(チャレンジ)をさせてもらっています。「商売は最初から儲けようと思ったらダメだよ。結果は後から付いてくるから」を胸に。まだまだ、半人前ですが学びながら頑張っていきたいと思います!

野菜直売所を絶対に成功させる重要なポイント

1、最初から儲けようと思うな。
まずは売れている感じを出さないとお客様も生産者も寄ってきません。最初は利益を考えず、とにかく賑わう売り場つくりに徹して下さい。最初は朝仕入れたら(持ってきたら)お昼には売り切れるくらいの売り場つくりを。

2、商品が集まらなければ、自分で集めろ。
最初は商品がなかなか集まりません、ただ待っとくのではなく、自分で買い付けに行きましょう。そしてそれで儲けようと思わず宣伝に使いましょう。売れる売り場が出来上がってきたら自然と生産者が集まります。

3、売り場の管理は徹底して行おう。
売り場担当者は良い人ではダメ。買う側のお客さんの立場になって、古くなった野菜などは早めに処分するなど売り場を常に新鮮な状態にしよう。お客さまに「あ、ここは古い商品しかないのね」と思われたら二度と戻って来ません。生産者側が売れないとかわいそうだからとか生産者側に立ってはダメ。

4、生産者が購入するような商品も扱おう
野菜などの商品を持ってくる生産者にも肥料や農薬、小道具など販売して店舗内でお金が回るように仕組みを作ろう。

ちなみに、短期間で年商1億の直売所を作った私が最もおすすめする農産物直売所POS用のレジシステムはこちらです。

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