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【SD】2022年サンディエゴ・パドレス、ワイルドカード2位でプレーオフ出場

米国2022年10月2日、サンディエゴ・パドレスが2点を追うシカゴ・ホワイトソックス戦の7回裏、ジョシュ・ベルが打席に立つ途中でペトコパークのスタンド席から歓声が上がった。ベルが「アルバート・プホルスになった気分だった」と冗談半分で口にしたが、歓声の理由はパドレスのプレーオフ進出マジック対象だったミルウォーキー・ブリュワーズの敗戦を観客がスマートフォンなどで知り、2020年以来2年ぶりとなるワイルドカードによるプレーオフ進出が決まったからである。

打席を外し喜びを観客やチームメイトとしばし共有したのちベルは三振に倒れたが、客席から落胆の声は漏れなかった。

プレーオフ出場は2020年の60試合シーズンにも達成したが、162試合制のシーズンに至っては2006年以来だ。今にして思えば、60試合は極めてランダム性の高いシーズンだった。4試合連続満塁本塁打が飛び出し、ウィル・マイヤーズのwRC+がフェルナンド・タティス・ジュニアを凌ぎ、エリック・ホズマーの打球が離陸しついにフライボール革命教習所卒業かと思いきや2021年は再び打球が地を這い仮免試験すら通らなかった。

さらにペトコパークの観客目前でプレーオフ出場決定の瞬間を迎えたのは2005年以来となる。17年前の決定戦9月28日の先発投手は峠を越したペドロ・アスタシオで、ルディ・シアネス、大塚晶則、トレバー・ホフマンと継投しサンフランシスコ・ジャイアンツに勝利を収めた。今や大塚やホフマンの息子は独立リーグやマイナーリーグでプレーしている。

ペトコパークの打球の飛ばなさ具合に腹を立て、バックネット裏に座るケビン・タワーズGMに試合中文句をぶちまけ口論していた現エンジェルス監督代行フィル・ネビン兄貴がシーズン途中にレンジャースにトレードされ、控え捕手兼一塁手のロバート・フィックが祝勝シャンパンファイト会場のクラブハウスによせばいいのに持ち込んだウイスキーをブルース・ボウチー監督らの頭に振りかけて目を火傷させかけた年だ。

時は流れ世紀の大失速を経験した2021年を経て、まもなく終わりを迎える2022年パドレスのレギュラーシーズンを一文で振り返るなら、タティスがバイク事故の骨折と薬物違反で欠場し長打力不足な打線をどんなに補強してもゴロと胸毛は減るも平均程度から火力が上がらず、序盤好調も半ばで落ち込んだ投手陣が持ち直し再び支えたという顛末だ。

NLワイルドカードシリーズの展望

試合数が多くても3試合のため、正直なところ先発投打に選択の幅は限られている。よく言えば必ず出場させたい選手が多いということか。

161試合目の勝利でパドレスのNLワイルドカード2位が確定。対戦相手はニューヨーク・メッツに決まった。



先発投手予想は以下の通り。

第1戦
ダルビッシュ有 vs. マックス・シャーザー
第2戦
ブレイク・スネル vs. ジェイコブ・デグロム
第3戦
ジョー・マスグローブ vs. クリス・バシット

MLB最強の1-2先発を擁するメッツは正直与しやすい相手ではないが、マイク・クレビンジャーディネルソン・ラメットを欠いた2020年ワイルドカードシリーズでパドレスはクリス・パダック、ザック・デイビーズ、クレイグ・スタメンの限界ローテでカーディナルスを下しているので、それと比べたら今年はたいぶ恵まれている。

打順も相手の先発投手が右投げなら1番ジュリクソン・プロファー、左ならキム・ハソンで一塁がベルの代わりにブランドン・ドルーリーかマイヤーズかもというレギュラーシーズンの采配と大差ないパターンか。右投げ相手でもホゼ・アゾカーを起用するかトレント・グリシャムかという違いもあるが、最近打たなくなったかしばらく打っていないかという、カナダのエルズミーア島とグリーンランドのウペルナビクどちらで海水浴をしたいですかという様な二拓でしかない。

今季に限らず、四球も多いが見逃しが多いグリシャムは、明らかに高めが弱い。

まず極端に高めを振らない。

Source: Baseball Savant

そして振っても当たらない。

Source: Baseball Savant

さらに当たってもヒット性の打球が飛ばない。

Source: Baseball Savant
Source: Baseball Savant

ハイボールヒッターのフアン・ソトはパドレス移籍後見逃しがちな低目責めに苦しみ不振に陥ったが、ほどなくして低めのストライクゾーンにもバットを出し、長打にはなりづらいものの安打を増やしている。シーズンオフになるかもしれないが、守備固め外野手で終わらないためにはアプローチをアジャストする必要が有りそうだ。

ただそれでも個人的にはグリシャムをポストシーズンに先発出場させたい。ベビーフェイスのアゾカーよりも実は半年ほど若く、一方で守備の安定感と長打力では凌いでいる。

投手のロースターを予想してみよう。

先発投手
ダルビッシュ有(右)
ブレイク・スネル(左)
ジョー・マスグローブ(右)

リリーフ投手(右)
ニック・マルティネス
ルイス・ガルシア
ロベルト・スアレス
ピアース・ジョンソン
クレイグ・スタメン
スティーブン・ウィルソン
ナビル・クリスマット

リリーフ投手(左)
ショーン・マナイア
エイドリアン・モレホン
ティム・ヒル
ジョシュ・ヘイダー(抑え)

先発3人以下の投手だが、レギュラーシーズン162試合目に先発するクレビンジャーは第1ラウンドのロースターに加えないだろう。ひざの体側靱帯の怪我を抱えているため、なるべく休養を与えたいはずだ。マナイアはロングリリーフか先発が序盤から崩れた際の緊急登板が予想される。

【10/6追記】クレビンジャーは病気(詳細は公表されていないがCOVIDの可能性)のため先発登板を回避。既にワイルドカードシリーズが行われるニューヨーク行きには帯同しないことが公表されている。陽性の場合にはドジャースとのNLディビジョンシリーズも欠場する可能性がある。

またクレビンジャーに代わりスタメンが緊急先発登板し69球を投げたため、2日後に始まるNLWCロースター入りの可能性は低下。代わりにクリスマットがロースター入りか。

続いて打撃陣。

捕手
オースティン・ノラ(右)
ホルヘ・アルファーロ(右)
ルイス・キャンプサーノ(右)

内野手
ジョシュ・ベル(両)
ジェイク・クローネンワース(左)
キム・ハソン(右)
マニー・マチャド(右)
ブランドン・ドルーリー(右)

外野手
フアン・ソト(左)
ウィル・マイヤーズ(右)
ジュリクソン・プロファー(両)
トレント・グリシャム(左)
ホゼ・アゾカー(右)

ここにもサプライズはない。もし投手が12人の場合にはウィルソンかクリスマットの代わりに右打ちユーティリティのブランドン・ディクソンを加入させるだろう。彼は8/31の期限を過ぎてから40人枠入りしているため本来ならポストシーズンのロースター入りは出来ないのだが、その期限以前からパドレスには入団しているため、故障者との入れ替え要員としてなら登録が可能になる。たとえば60日ILのオースティン・アダムスを一度ポストシーズンロースターに登録し即再びIL入り、ディクソンと交換するという具合だ。

左の代打が少ない。思い返すとマット・ベイティ、ロビンソン・カノー、ノマー・マザラ、ルイス・リベラートと居るには居たが4人合わせた240打数で打率は.204、ホームランはマザラの2本のみと誰もがパッとしないまま消えてしまった(リベラートはDFA後にAAA行き)。

Full Circle

2022年シーズン終了後に、投打最古参の契約が満了する。

クレイグ・スタメンは2017年、マイナー契約でパドレスのキャンプに呼ばれ開幕前にメジャー契約。90mph前半のシンカーとカッターを主な武器に73試合以上の登板シーズン2回と、馬車馬のごとく投げて中継ぎとして活躍。2019年にはNL最多ホールドを記録した。

38歳のスタメンは6年に渡り投手陣の兄貴分、もしくは父親や叔父代わりとも呼べるメンター的な役割を務めていた。しかし今年は右肩の炎症で2ヶ月ほど欠場。9月半ばに復帰するも全盛期ほどのキレはなく、現在は緊迫した場面では起用されていない。

スタメンについてクローネンワースは「来年彼は戻ってくるかは分からない。今が一緒に居る最後の機会かもしれない。特にクレイグには、良いさよならツアーになれば」とコメントしている。パドレスだけでなく、引退でMLBから別れを告げる可能性もある。

2013年にタンパベイ・レイズにてAL新人王を受賞したウィル・マイヤーズは2015年シーズン前にトレイ・ターナーらを放出する大型三角トレードでパドレスに移籍。A.J.プレラーGMは最もやり直したいトレードとして挙げたが、それでもマイヤーズはパドレスに残っている。

2016年に.259/.336/.461/28HR/28SB、サンディエゴでのオールスターに選出される。将来の打線中核を担うことが期待され、再建期中の2017年から6年$83MMの契約を結んだが、親指、手首、膝などの故障に泣かされシーズンのfWARが2.0を超える活躍が出来なかった。一応来季$20MMの球団オプションが残されているが、ほぼ100%の確率で破棄されるだろう。

ただ同じく高額契約を結び低迷したエリック・ホズマーと比べて、どういうわけかファンには愛されている。それは不振が故障によるものだったりイケメンだったりチームのニーズに合わせ献身的に様々な守備位置をこなしたりイケメンだったり、強烈なリーダーシップを発揮こそしないが、2年前ドジャースにNLDSで敗れたあと一人ベンチから離れずスコアボードを眺めている様な静かに闘志を燃やすイケメンだからかもしれない。

2015年のオールインから即解体、主力を放出しプロスペクトを搔き集めながらトップチームで黒星を重ねる雌伏の時、マチャドの加入とタティスの台頭、オースティン・ヘッジスの低め変化球膝カックン空振り、そして先のプロスペクトを放出し先発投手、ヘイダー、ソトらを獲得するという一連のサイクルを共にした。

サンディエゴで苦楽を味わったベテラン二人は、長きに渡るパドレスでの物語の結末に、ワールドシリーズ制覇というハッピーエンドを迎えることが出来るだろうか。

Photo by Abbie Parr/Getty Images


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