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学校の怪談   -ほんとうは怖い「運命の出会い」-

きみが ぼくのことに夢中に なってくれたわけは
おそらく ぼくがきみを好きと 気づいたからだろう
どうやって きみが知ったか わからないけれど
それから ぼくのことをずっと見ていた

そのころもうきみにはつきあっていた 彼がいたわけで
その彼に 不満があったわけ じゃなかったはずだ
ただなんとはなく 過ぎるばかりの なりゆきにまかすのに
きみはぼんやりと 不安を感じていたんだ

白馬の王子は 現れなかったけれど
きみの思いどおりになりそうなぼく
これはきっと 運命だろうなんて
思い込むおろかさ おそらくそれもまた恋愛

それから ふたり 仲良くなりすぎて 心と心で
通じ合えるだなんて 思ってしまうほどの あいだがら
アツアツどころのさわぎじゃなくて
マンガでもここまではやらない
ぼくは自己肯定感のかたまり 有頂天

たしかにぼくはイケメンではないしスタイルもよくない
それでもしかし 才能や魅力などはあるほうだから
こんなことだって たまにはあるさと不思議がることもなく
根拠のない自信に 満ちあふれてはいた

この話がここで終わればそれで
ハッピーエンドなんだけど
あるとき きみがぼくの愛をたしかめるために
みんなのまえでテレパシーを送った
きみのところにぼくがきたら
ぼくらはアダムとイヴに なれたかもしれない
でも何も気づかないでぼくはずっと 鼻歌を
歌って軽やかにスキップ
それですべて魔法は消えてしまう
きみはうそつき ぼくはただのでくのぼう

そのとき なにか 悪い予感がしたから
ふりはらうかのよに
校舎の屋上を見上げると きみがこちらを見ていて
見つめあう様子が変だ 何をやっているのかと
思うまもなく きみはそこから 身を投げた


原曲 「雨やどり」
作詞・作曲・歌 さだまさし

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