見出し画像

オラファー・エリアソンがだいすきになった@「ときに川は橋となる」展 その2

前回に引き続き、オラファー・エリアソン「ときに川は橋となる」展です。いくつかの作品について、1回目(7月)と2回目(9月)でどう鑑賞の仕方が変わったのかを見ていきたいと思います。

2回目の鑑賞前に行ったこと
・『日曜美術館 オラファー・エリアソン ひとりが気づく、世界が変わる』(NHK)をみる
・『オラファー・エリアソンときに川は橋となる』の公式図録を読む
・『論理的美術鑑賞』を実践する

あなたの移ろう氷河の形態学(過去)・メタンの問題・あなたの移ろう氷河の形態学(未来)  2019

スクリーンショット 2020-11-05 4.00.02

<1回目>
展覧会で初めて目にする作品です。色がきれいだなあ、何が過去で未来なのだろう、ということを考えながら、割と遠くから全体を見ています。

この3点の水彩画はグリーンランドの氷河の氷で制作されました。紙の上で溶けていく氷の水が顔料と混ざり合うことで、豊かな濃淡やにじみが画面全体に広がります。(展覧会解説シートより 一部抜粋)

という解説を読んでも、あまりピンときていません。

『日曜美術館』(NHK)で制作過程の映像をみました。紙の上に1kgほどの氷(約1万5千年〜2万年前の氷)をおいて、溶けてきたところに絵の具を垂らします。すると色彩がだんだんと広がっていきます。

<2回目>
実際にこの紙の上のどこに氷が置かれていたのか、また、その氷が生み出したにじみや質感が気になって近づいて見ています。

スクリーンショット 2020-11-05 4.23.48

おお、本当に氷が溶けていったような跡がある...!

クリティカルゾーンの記憶(ドイツーポーランドーロシアー中国ー日本)no.1-12  2020

スクリーンショット 2020-11-05 4.27.38

<1回目>
一体これは何!?というのが最初の印象です。L字型に展示された12個の円形を、壁の一部であるかのように鑑賞しています。

この12点の円形のドローイングは輸送中の動きや揺れを記録する装置によって描かれています。(展覧会解説シートより一部抜粋)

この解説を読んだときは、昔のポリグラフ(嘘発見器)のような装置をイメージしていました。針金?がついていて、それによって描かれた線だと思っていたのです。ところがどっこい...

スクリーンショット 2020-11-05 9.14.42

だったー!

このドローイングの装置は、昔オラファーさんとお父様が船に乗った際に使った機械を参考に、改めて作ったそう。船の揺れでドローイングができていくのは、まるで海自体がドローイングをしているようだったと仰っています。

<2回目>
装置が分かると、途端にこの円の縁が気になってしまいます。なぜかというと、映像でみると分かるのですが、この球が縁をなぞるようにゴロゴロと転がるのです。それによって、一番外側の黒い円の輪郭ができているわけです。1回目はそうとは知らずに見ているので、もともと輪郭があるように感じていたと思います。

スクリーンショット 2020-11-05 4.53.25

濃かったり、薄かったりします。

あなたのオレンジ色の残像が現れる  2000

スクリーンショット 2020-11-05 5.02.44

<1回目>
消えたり現れたりする青い正方形を、なんだろう、と思いながら見ています。

<2回目>

青い正方形のイメージが一定の間隔で現れては消えていく。青いイメージをしばらく見続けていると、それが消えたときに夕陽のようなオレンジ色の残像が立ち現れるだろう。青いイメージは作品のための装置にすぎず、作品そのものは私たちひとりひとりが知覚している間にだけ存在しているのである。(公式図録より)

実は上記の解説、展覧会解説シートにも掲載されていたにも関わらず、1回目はその部分を読むことなく、ただ漠然と作品を見ていました。なんて勿体無いことを。

オレンジの残像が現れると知った2回目は、瞬きを我慢して何回も夕陽のようなオレンジ色の残像を楽しみました!

<余談>
この作品の隣に、氷の研究室と題した作品がありました。アイスランド南部にある、流出した氷河が打ち上げられる海岸で、氷塊を3Dスキャンしたものです。

スクリーンショット 2020-11-05 5.43.04

以前アイスランド旅行に行った際、氷河をボート(?)で見に行き、何千、何万年(?)もかけてできた氷を実際に触らせてもらって、味見もさせてもらった経験があったので、この作品にはちょっと親近感を覚えました。

スクリーンショット 2020-11-05 7.35.17

太陽の中心への探索 2017

スクリーンショット 2020-11-05 6.02.39

この作品に関しては、実は1回目と2回目でそこまで鑑賞の仕方に違いはなかったのですが...

A solar panel in the museum's courtyard...(略) 

という一文を公式図録で発見し、

<2回目>

スクリーンショット 2020-11-05 5.49.35

この作品の光と動きを生み出しているというソーラーパネルを中庭で発見することができました!

ときに川は橋となる 2020

<1回目>
水が張られた大きなシャーレの水面が揺れると、頭上のスクリーンにそのさざなみが映し出されます。

スクリーンショット 2020-11-05 6.43.02

実は1回目から、このシャーレの装置に興味がありました。

<2回目>
真っ黒なカーテンで仕切られた暗い空間だったのですが、なぜか1回目の時よりも明るかったため、シャーレをよく見ることができました。1回目にスクリーンは十分鑑賞できていたので、シャーレに集中してみます。

スクリーンショット 2020-11-05 6.49.42

水面が揺れる前にモーター音が聞こえます。どのように水面が揺れる仕組みになっているのかが気になっていました。振動が発生しているのかと思っていいたのですが、なんとシャーレ自体が(おそらく)一定の間隔で傾くようになっていました。

おまけ1 サイズについて

スクリーンショット 2020-11-05 6.57.19

オラファーさんは、グリーンランドの氷河を街中に展示するなど、公共の空間でもプロジェクトを行っています(パブリック・プロジェクト)。そのため、作品のサイズが「サイズ可変」になっているのが面白いと思いました。

まとめ(その2)

2回鑑賞するということについて
展示されている作品の横や、配布されている冊子に解説が載っていたりもするのですが、その場だと読み飛ばしてしまったり、理解できないことが多いと気づきました。

事前に作品についてだけでなく、アーティストの方についての背景知識も得てから実際に作品をみると、「好きー嫌い」「美しいー醜い」よりもっと多次元的に作品を捉えることができ、なによりも、オラファーさんが重要だと仰っていた「そのアート作品がなぜ作られて、なにを伝えようとしているのか」という観点で作品と向き合う時間を過ごすことができると感じました。

2回目の鑑賞には、1回目では気がつかなかった発見や、逆に1回目にすごく気になった点をじっくり見ることのできる楽しみがありました。

視点を変えるということについて
「ときに川は橋となる」というタイトルはどのような意味をもっているのか、という問いかけに、オラファーさんはこうお答えになっています。

物事の見方を知らないが故に、色んなことが見えないと思うんです。でも見方を変えれば見えなかったものが見えてきます。それは不可能なことを可能にすることと通じます。見方を変えれば、川は橋となるのです。世界をよりよく理解するために、見方を変える、知覚を変化させる、そういう意味です。この作品はそのタイトルにぴったりだと思いますよ。なぜなら、今まで見えなかった時間がほんの少しの水と波だけで見えるようになったんですから。環境や気候に関してもそうです。見方を変える、知覚を変えることで、地球を今一度理解し直さないといけないと思います。 (『日曜美術館』NHKより)

見方を変える、ということを日常生活で実践し、それを創作にも活かしたいと思いました。

おまけ2 論理的美術鑑賞「A-PEST」

『論理的美術鑑賞(堀越啓【著】)』より、美術作品の流れを把握する「A-PEST」のフレームワークです。

Art(美術様式)
Politics(政治)
Economics (経済)
Society(社会)
Technology(技術)

画像14

このフレームワークに取り組んだことによって、オラファーさんがなぜ「アートを介したサステナブルな世界の実現」を試みていらっしゃるのか、少しだけ分かったような気がしました。ただ、私自身はまだこの「サステナブル」という概念を理解しきれていません。

おまけ3 清澄白河駅

東京都現代美術館の最寄り駅である清澄白河駅の券売機のボタン。四角がとても美しかったです。

スクリーンショット 2020-11-05 10.13.10


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?