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春の秘密

登場人物

しの♀:
渉(わたる)♂:
子供 不問:

♣♣♣

渉 : 僕には秘密がある。
春、この季節に彼女に会うことができる。
そんな、2人だけの秘密。

渉 : 「しの!僕、第一志望、ちゃんと一発で受かったよ!」

しの : 「おめでとう、渉くん。落ちるかもって受験怖がってたのに、君はやっぱりできる子だったね」

渉 : 「うん。今年も、会えて本当によかった」

しの : 「私も嬉しいよ。君にまた…ッコホ、コホッ」

渉 : 「大丈夫?病気だって聞いたんだ。…調子はどう?」

しの :「んふふ、かなり良くなったの。…でも、こうして花を咲かせられるのは今年が最後かもしれない」

渉 : 「そんな…待って、君はこれからどうなるの?」

しの : 「他の子達にこの病気を移すわけにはいかないから…切られちゃうんじゃないかなあ」

渉 : 「そんな、のほほんと言うことじゃないだろ!僕は君が心配で…」

しの : 「…苦しい?…そうだよね。君がソメイヨシノのしのーって、私に名前をくれたんだから」

渉 : 「ねえ、しの。僕、君が好きだよ、もう会えなくなるなんて…」

しの : 「私も好きよ。でもね、君には、良いところがいっぱいある。だから、もっと素敵な彼女さんができるんじゃないかな」

渉 : 「別の彼女なんて考えたくもないよ」

しの :「渉くん。そう卑屈にならないで。それに私、会えなくなるなんて一言も言ってないでしょう」

渉 : 「…それじゃあまた会えるの!?」

しの :「切られちゃっても、消えるわけじゃない。ソメイヨシノはさし木から育つって知ってる?私の枝を持っていって。渉くん、君のためにいつかまた、花を咲かせるわ。…私、頑張る」

■数年後

子供 : 「ねえお父さん、お庭の桜のところに知らないお姉ちゃんがいるよ。だれ?」

渉 : 「本当に!?あの子はね、しのっていうんだ。お母さんには内緒だけど、お父さんの初恋の人なんだよ。一緒に挨拶に行こうか?」

子供 : 「うん!」

渉 : 彼女を連れて、入学した僕は良い奥さんと出会い、子供にも恵まれ。それでも、また会えることを願い続けて。
淡く色づく春の風に、桜の花が揺れる。

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春の声劇台本

注釈:
しのはソメイヨシノの精霊です。
花の咲く時期にだけ姿を現すことができるようです。


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