見出し画像

お天気雨

登場人物

咲(さき)♀:
晴人(はると)♂:

♣♣♣

咲:(ずっと言えなかったこと。目一杯遊んだあとの海が見える田舎のバス停。バスは2時間に1本。これがチャンスだとわかっていた、だから話した)

晴人:「どうして今まで言ってくれなかったの。どうして…俺にできることはなかった?僕が不甲斐ないから?」

咲:「そうじゃないよ。晴人には色々大切な物をもらった。とっても素敵な彼氏だったよ。…これから治療。治る確率はすごく低いんだって。だからしんどい私を、見せたくないんだ」

晴人:「治る確率が少しでもあるなら!一緒にいさせてよ…」

咲:「ううん、駄目。私が一度決めたら曲げない性格なのは、よく知ってるでしょ」

晴人:「…わかってる…。でも…」


晴人:「雨、急に…!咲、濡れたら体に触るよ。こっちに来て。わかった、咲の言うことはわかったから…あと40分、バスが来るまで。君とくっついてたい、な」

咲:「あは、そうね。ねえ、晴人。遣らずの雨って、知ってる?別れ際にね、相手に留まって欲しくて降る雨のことなの。…晴人の気持ちが、神様に届いちゃったかな。綺麗だね、お天気雨だ。…バス、遅れてくるかしら」


晴人:「ねえ咲、本当に、ついていっちゃ駄目?」

咲:「駄目。でも私、簡単に死んでやるつもりはない。治療が終わったら、必ず連絡する。必ずよ」

晴人:「バス、来ないね。僕の願いが届いたって、本当にそうなのかも。…ずっと待ってるから。ずっとだよ。死んじゃ駄目。咲は強いから、大丈夫だよね」

咲:「うん、大丈夫。泣かないで。私たちってさ、ずっと笑ってるようなカップルだった。だから、またねって、笑って」

晴人(結局、バスは20分ほど遅れてつき、咲と僕はお別れした。夕陽に照らされてオレンジ色に光る雨が鮮明に頭の中に焼きついていた)

咲:「またね、晴人」

晴人:「またね。咲」


咲「んー、良い天気。手紙、届くかな。晴人、ほんとに待っててくれたかな」

咲(淡いオレンジの便箋に病気の完治を綴る。彼ならこの手紙を読んだらすぐに駆けつけてくれると、私はちゃんと信じている)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

遣らずの雨の別バージョンです…!
ハッピーエンドも必要よね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?