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in the rain 17

つたう
雲の向こう
明け方まで

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「…雨…いつ止むかな…?」

貴方はフローリングの床で膝を抱えて座りながらとても熱心に、窓ガラスをつたう滝みたいな雨水を見ていた。
雨の日の昼間、この人がこうして何時間もそこにいるのを知っている僕は、せめて身体が冷えないようにと温かい紅茶を淹れている。
貴方の好きな香りのフレーバーティーを淹れているというのに、こちらを気にもとめない後ろ姿へ

「雨が好きなんだと思っていました」

僕は思わず笑いかけていた。
その言葉で振り返った貴方は長いまつ毛に縁取られた目を数回瞬かせて、不思議そうに首を傾げる。

「…雨が好き…んんとね、雨というよりは…雨が止んだ時の空が好き、かな…。
雨が止むとね、ずうっと向こう、雲のずっと向こうから、だんだんとまっすぐにお日様の光が差し込んでね。
それが、とても綺麗で…好きなの」

僕はなるほど、と頷いた。
この人がわざわざ高層階に住処を構えた理由の一つはそれなのかもしれない。
都会の空はすごく狭いからと、貴方はよくそう言うから。

「お茶、淹れてくれたんだ…ありがと、いっしょに飲みたいな…」
「もちろんですよ。ミルクだけ、入れておきました」

テレビを好まない貴方がつけたラジオから、この雨は明日の未明まで降り止まないことが告げられている。
今日は、見れそうにないね。お日様の光。
そろそろとカップに口をつけながら、下を向く貴方に

『久しぶりに明け方まで映画でも観ましょうか』

そんな提案を思いついたけれど、流石に朝までは…と、やんわりと優しく断られてしまうだろうか。

「…ね、今日。久しぶりに、明け方まで…映画とか、見よっか…」

だけど思いがけず、その提案は貴方から持ちかけられた。
少しだけ照れながら、

「2人で見る雨上がりの朝日は、きっと…いつもよりもっと、綺麗だと思うんだ」

そう微笑んだ貴方が愛おしくて、
僕はまた、ええ、もちろんです、と笑い返すのだ。
頬が熱いのは、紅茶を飲んだせいではない。
わかってる。

雨、雨、降れ降れ、
でもちゃんと、明日の朝には止んでいて。


end


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6/10
朗読会用

#文字書きワードパレット
#in the rain

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