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【易競馬#19】ここまでの集計とレパードS 2022

東京は下町。
隅田川のほとりにある、カウンター数席の小さな居酒屋。
絶品の酒と肴に吸い寄せられるよう、今日も今日とて常連が集う。

「じー」

「。。。」

「じー」

「。。。ないよ」

前回の土用の丑の日に鰻にありつけなかったポロシャツ。渾身の物欲しそうな目で(鰻…)を訴えたが店主の健に一蹴された。

「わーん!!先週ボクの予想に乗って健さんだけ的中したのに!ずるいずるい!!わーん!」

健は先週のアイビスSDで馬連30.7倍を3点で的中。
易競馬が始まっておよそ2か月。これまでの二人の買い目を1点100円で購入したとして、先週終わった時点での成績は以下の通りである。

・健:
		的中率20%(的中2R/10R)
		回収率156.13%(3100円購入→4840円払戻)


・ポロシャツ:
		的中率6.6%(的中1R/15R)
		回収率210.79%(3800円購入→8010円払戻)

意外や意外?の好成績となっているのだが、この物語に出てこないレースも購入している二人にはまるで実感がないのであろう。
今は調子に乗ってスタイルが崩れるといけないので二人には内緒にしておくことにする。

「。。。子供か。ほら」

目の前のポロシャツと、カウンターの端にいる占い師へ、健は笑いながら、穴子ときゅうりの細巻を差し出した。

「うなぎもいいが、この時期はやっぱり穴子だぜ。先生とポロのおかげでいい配当取らせてもらったからな。これはサービスで」

柔らかく炊き込んだ甘い穴子に旬のきゅうりの清涼感がこたまらなく、合う。

「穴子美味しいです!!あ!それはそうと。レースの後の大河ドラマのクライマックスで井戸が出てたのはちょっとびっくりしましたよ!」

「確かに。私も見ていましたが、水風井の卦が出た週にあの展開とは。。ま、偶然なんですけどね。!それにしても、おいしい穴子だ」

占い師は静かに微笑み、冷酒を流し込んだ。

「さて、今週は札幌でエルムS、新潟でレパードSが行われます。どちらもダートの重賞です」

「どうもエルムSは特別レース感がぬぐえねぇなぁ。重賞に昇格する前はOPですらなかったんじゃねぇかな」

「何言ってるんですか健さん、エルムSは重賞になってなってもう25年ですよ。なんならレパードSの方が新しいじゃないですか」

「まぁそうなんだが。。まだレパードSの方がトランセンドとかホッコータルマエあたりの馬を輩出してるから印象が強いんだろうよ」

「言われてみればそうかも。。。かくいうボクもエルムSの方は出走馬を見てもピンときません。というわけで、今週はレパードS一本でいきましょう!先生、お願いします!」

こくりと頷いた占い師は懐から三つのサイコロを取り出した。
静かに目を瞑り、ふぅ。。と大きく息を吐く。
チンチロリン!占い師の手から放たれた賽は小皿の上で小気味の良い音を立て、止まった。

「内卦・巽、外卦・坤、変爻の賽は四。地風升の四爻、雷風恒へ之く。が出ました」

「あっ!地風升は前にも出たことありますね!?たしか。。CBC賞の時だ!

よく覚えていてたいしたものだ。。。と占い師は目を見張った。

「今村ジョッキーがとんでもないレコードで初重賞勝利したレースか」

「ですです!健さんだけが当たって。。。ああっ!!」

「2度目の登場ですがおさらいの意味で、地風升という卦はですね。。。」

  • 風を表す八卦「巽」の上に、地を表す八卦の「坤」が乗っているこの卦は「地風升」と呼ばれる

  • 「巽」は木の象でもあり、地中から芽が出てすくすく成長する状況を表す

  • 上昇、伸びる、昇る。道徳に従い素直に伸びることが大事。

  • 卦辞は「升は元いに亨る。用って大人を見る。恤うる勿かれ。南征すれば吉なり」

  • 四爻の爻辞は「王もって岐山に享す。吉にして咎なし」

「。。。というように、成長や勢いを感じる卦です。前回の二爻はまさにこれから昇り上がる様子でしたが、四爻はどちらかといえば王に使えて少し控えめにことを運ぶ、有能な部下、というイメージですかね。ちなみに岐山というのは周の国の西にある山のことです」

「西の山。。。はっ!?ニシノの馬は!?。。。いないっ!」

「なるほど。。3歳の重賞だけにみんな成長著しいし難しいな。。」

「南征すれば吉なり。。。西の山。。そうか!北海道に滞在して新潟に南征する馬がいれば。。って、いないっ!! もう仕方ないので前走福島と新潟の3頭の馬連BOXで勝負します!」

(ポロシャツの購入馬券)

「よし、ならば俺は『有能な部下』感がある幸ジョッキー08を軸にしよう。相手は素直に人気どころで」

(店主・健の購入馬券)

「そういえば、今年もなかったですね。。隅田川の花火大会。。」

「ですねぇ。までも今年は陰祭りだが八幡様はやるって話ですし、子供たちの笑顔で少しずつでも活気が戻ってくるのを願ってますよ」

「ですね」

暦の上では夏も残りあと二日となったが、まだまだ暑い下町の夜は、静かに更けてゆくのであった。

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