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甘露のたわみ|詩

太陽の熱を閉じ込めた翡翠色のたわみ その内側で、太陽と月が秘めやかに絡み 滲む甘露が記憶の深部を揺らしていく 果実のような あるいは柔らかい毒のような香り その香りはかすかに開かれた唇の裏側に 夢の欠片を含ませる まどろみの中で囁く見知らぬ誰かの声がする 触れればただとろけてしまう 蒼白い光が封じ込めた時間の粒 指先でそっと押し当てれば微かな震えが 掌を滑る 腕は這い上がる 魂の奥底に消える そこで芽吹いたものが甘美な誘惑 遠くでプルプルと 掌の鈴の音のように震える 虜

    • 玉響の花|詩

      風任せ揺れるだけの身を知りつつも 秋の光を抱く 誰がため色をまといし此花よ 見ぬうちに散る君のほほ笑み 道端にひとり咲きたる薄紅の 影が夜風に溶けて消えゆく ついばむ鳥さえ見向かぬ色に咲き 誰にも見られぬ秋の花 忘れられ咲き散りゆくもまた美し ただ風まかせコスモスの舞 たそがれにそっと佇むその姿 誰を待つやら影のひとひら 人知れず咲き人知れず散る花は 秋のひかりに夢を隠せり ひとり咲きひとり散りゆく徒花の 呼ばぬ名を風だけが知る ひとときの美を知られぬ徒花よ

    甘露のたわみ|詩