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【先行ためし読み 第3回 💍7月26日更新💍】8月発売の新シリーズ!『放課後チェンジ 世界を救う? 最強チーム結成!』

大型新シリーズ! ドキッとしたら動物に変身!? 4人が力を合わせて事件を解決する『放課後チェンジ』を発売前に読める!

まなみ、尊(たける)、若葉(わかば)、行成(ゆきなり)は仲良しの4人組。中1のゴールデンウイーク、フシギな指輪を見つけたことで、なんと、動物に変身しちゃった!!!
猫や犬の運動能力、タカの飛ぶ力が使える!
でも……指輪が指から外れない!!!

8月7日発売の新シリーズを、どこより早くためし読みしてね!

人物紹介
目次


『放課後チェンジ』ためし読み 第1回

  1章 キセキの始まり       

   1 無敵のキズナの幼なじみ

「おい、まなみ。だいじょうぶか? まなみ……」
「……う~ん……だめ、行かないで――シロップうううううう!」
「あでっ!!!」
 パッと周りが明るくなると同時に、ゴチーン! と頭にショーゲキ。
「いった~い! いきなり何⁉」
 わたしが頭をおさえながら上を見ると、
「こっちのセリフだ!」
 ととのった顔立ちの男子が、あごを押さえながら、にらみつけてきた。
 お日さまをあびて金色に光る、やわらかそうな髪。
 意志の強そうなまゆに、くりっとした大きなひとみ。
 長い手足は引きしまって、いかにも活発そうなフンイキ。
 よ~く知ってる彼の姿を見ても、すぐには何が起こっているのか、ピンとこない。
「えーと……ここはダレ? わたしはドコ?」
「ねぼけすぎだろ! だが親切なオレが教えてやる。
 名前は斉賀(さいが)まなみ。グータラでミーハーで食欲だけは十人前の中学一年生。
 幼稚園のころからずっと三つ編み。
 今はゴールデンウィークで、オレと若葉(わかば)と行成(ゆきなり)といっしょに、まなみの田舎のばーちゃんとこに遊びにきてる。
 絶賛かくれんぼ中にして、オレが鬼で、林の中の岩のかげで寝てるまなみを見つけたところ!」
「なるほど、理解」
 説明とあわせて自然いっぱいの風景を見まわして、現実を思いだした。
 幼なじみたちと、ひさしぶりに田舎に遊びにきて。
 外でかくれんぼしてる間に、うっかり寝ちゃったんだね、わたし。
「でもグータラでミーハーで食欲だけは十人前ってなに⁉」
「カンペキな説明だろ」
 しゃべるたびにとがった犬歯がのぞく、えらそうな彼は、神崎尊(かんざきたける)。
 わたしの幼なじみ、その一。
 赤ちゃんクラブからの付きあいで、昔は素直でかわいかったのに、どんどんひねくれて、口が悪くなってきた。
 中学に入って以来、いっしょに遊ぶのは久しぶりだけど、アマノジャクはますますひどくなってきたかも。
「ったく……いきなり頭つきをかましやがって」
 あごをおさえながら、ぼやく尊。
 あ、わたしが起きた時に、尊のあごにぶつかっちゃったから、フキゲンなのかな?
「ごめんね」
 謝ると、尊は「いいけど」とうなずき、やっとまゆの間のしわをゆるめた。
「うなされてたけど……あいつの夢、みてたのか」
「…………」
 尊の言うとおり、さっきまでみていたのは、あの子の夢。
 賢そうな金と青の瞳の、白い猫……シロップ。
 思いだすと、胸が苦しくなってきた。
 けど、わたしはなんでもないふりをして、言う。
「そう? 忘れちゃった」
「……ふーん」
 尊は心配そうな目で見てたけど、気をとりなおすように、にやっと笑った。
「でもよかったな、まなみ。万が一この国宝級の顔にキズでもつけてたら、賠償金5兆円だぞ」
「その宇宙レベルの果てしない自信、どこからくるの? てゆうか、なんでわたしにそんな近づいてたの? ハッ、まさか寝こみを襲おうと……⁉」
「アホか! 声かけても起きないから、肩をゆすろうとしたんだよ。そしたらまなみが急に体を起こして――」
 尊がそこまで言いかけたところで、ガサッと音がした。
「「⁉」」
 見れば岩の向こうにある茂みから、大縄くらいの太さのヘビが、顔をのぞかせている!!
 ゾーッと鳥肌が立って、頭が真っ白になった。
「シゲキしないように、 静かに離れるぞ」
 かすかに青ざめた尊に小声で言われて、わたしもコクコクとうなずいた、けど…………
 あ、あれ?
「……どうしよう、尊」
「?」
「腰がぬけた……」
「…………」
 キョトンと首をかしげてた尊が、みるみる「マジかよ」というように顔をしかめる。
 わたし、ヘビは大の苦手なんだよ~!
 ビックリしすぎて、立ちあがろうとしても、足腰に力が入らない。
「さらば、まなみ。ホネは拾ってやる」
「イヤ~! 大事な幼なじみを見すてるの⁉ このひきょう者!」
「そっちこそ大事な幼なじみを思うなら『わたしはいいから一人で逃げて!』だろ」
 はくじょうにも置いていこうとする尊を引きとめて、こそこそと言いあってる間にも。
 ヘビは口からチロチロと舌をのぞかせて、すうっとこちらにはい出てくる。
 ひい~、キモイ! こわい! ほんっとムリ!
 どうしようどうしようどうしたらいい……⁉
「――まなみ。声だすなよ」
 パニックになりかけていたら、不意に耳もとで尊がささやいた。
 なに? と思った瞬間、わたしの背中とひざのうらにグッと手がそえられて。
 ひょいっと尊に抱えあげられた。
「!」


 息をのむわたしを横抱きにしたまま、尊はそっと歩きだす。
 えっ……力、すごくない……⁉ 
 てかこれ、いわゆる『お姫さま抱っこ』ってやつじゃ……!
 ヘビの恐怖も忘れて、なんだかドキドキしてきた。
 中学に入ってからバタバタしてて、一カ月ぶりくらいにみんなで集まったけど。
 尊、ちょっと大人っぽくなった……?
「この辺でいいか」
 林の出口あたりにある大きな木の下で、尊はわたしを下ろして、はーっとため息をついた。
「ありが――」
「あーっ、腕がもげるかと思った!」
 大げさに腕をさすりながら言われて、ピシッと固まるわたし。
「バスケ部のハードトレーニングがなかったら、絶対持ちあげられなかったな」
「なっ……そこは『羽根みたいに軽かった』って言うところじゃないの⁉」
「全然。まー、行きの電車でもおかし食べまくって、スキあらば寝てるグータラのまなみが重量級なのは当然か」
「重量級じゃないし! 平均体重だから!」
 あー、もう、ひそかなトキメキが宇宙のかなたに消しとんだよ!
 尊ってどうしてこう口が悪いんだろう⁉ 腹立つなあ!
 むきーっと怒りをこらえていたら――
「あ、まなみ、見つかったんだ」
 澄んだ声がひびいて、つややかな黒髪のショートボブの美少女がやってきた。
 水沢若葉(みずさわわかば)ちゃん。
 わたしの幼なじみ、その二。
「若葉ちゃん! あのね、向こうに大きなヘビがいたんだよ!」
「ヘビ⁉ こわ……どんなヘビ?」
「緑色だった」
「じゃあアオダイショウかな……日本の本州ではマムシとヤマカガシ以外は無毒だっていうから、キケンはなさそう。でも、こわいよね」
「くわしいね⁉ さすが若葉ちゃん」
「『いきものの森』で見たの。全図かんコンプしたしね」
 ふふっと少し得意げにほほ笑む若葉ちゃん。
『いきものの森』はプレイヤーがいろんな生き物の暮らす村に住んで遊ぶゲーム。
 若葉ちゃんはゲーマーなんだよね。
 勉強もスポーツもできる優等生でもあるから、もともと物知りなんだけど。
「あとは行成だな~。どこかくれてるんだ、あいつ」
 頭をガシガシとかきながら、尊が言った瞬間。
「ここでした」
「「「うわっ」」」
 ガサッと上から色白の男子が逆さまに現れて、わたしたち三人はとびあがった。
 木の枝にひざでぶらさがって、ビックリするこっちを見て無表情でVサインしている彼は。
 今鷹行成(いまたかゆきなり)。
 幼なじみ、その三。
 基本無口でクールであまり感情を顔に出さないけど、けっこう自由でマイペース。
 でもって親は茶道の家元というおぼっちゃま。
 まさか真上にかくれてたなんて……。
「おまえはニンジャか!」
 尊のツッコミに「どろん」と答えながら、地面に下りてくる行成。
 そして、すらりとした長身でわたしたちを見まわしながら、淡々と言った。
「そろそろ、あきてきたな」
「そうだね。かくれんぼはもういいかも」
「次は何する?」
 うーん、と考えていたら、不意に。
『こっちだよ』
 呼ばれた気がして、振りかえる。
 ……だれもいない。気のせいかな?
「どうした、まなみ?」
「なんでもない。そうだ、あそこの中に入ってみるのはどう?」
 振りかえった先に見えた、かわら屋根の蔵を指さした。
「あー、あの物置? いいじゃん。変わったものがいっぱいあったよな」
「前は時間がなくて、さっとしか見られなかったしね」
「賛成」
 尊がパチンと指を鳴らし、若葉ちゃんと行成もうなずきあう。
 みんな、五年前にも遊びにきたことがあるんだよね。
 その時にいっしょにあちこち探検して、あの蔵もちょっとだけ見に行ったっけ。
「カギはかかってなかったはずだよ」
「よっしゃ」
「いざ行かん、がらくたの楽園へ」
 目を輝かせて、蔵へと向かって歩きだす、幼なじみたち。
 三人の後を追いながら、わたしの足どりもはずんでいた。
 みんな同い年で、幼稚園から小・中学校もずっと同じ。
 気づけば四人でいることがあたりまえ……だったんだけど、中学校に入ってからはわたしと若葉ちゃん、尊と行成でクラスが分かれちゃって。
 尊はバスケ部の練習、行成は家の用事でいそがしかったり、若葉ちゃんは体調不良だったり。
 わたしも新しい環境でバタバタして、今回おばあちゃんが、久しぶりにみんなで泊まりにおいでって呼んでくれるまで、ずっと集まれてなかったんだ。
 特に尊と行成とは、こんなに長いことゆっくり会えてないのは初めてだった。
 いっしょにいると、ケンカはしても、テンション上がるし。
 しっくりくるっていうか、ホッとする。
 クラスの友だちも好きだけど、やっぱりこの三人はトクベツなんだ。
 みんなで集まると、なんでもできちゃいそうな、無敵のパワーがわいてくる。
 でも……ゴールデンウィークは明日で終わりだし、今日の夕方にはもう、家に帰るんだよね。
 そう気づいた瞬間、ずーん、と気分が沈んできた。
 やだな、帰りたくないよー。
 また、あのヘーボンな毎日にもどるのかぁ……。


『放課後チェンジ』ためし読み 第2回 
 

2 小猫になっちゃった⁉

「これ、蓄音機ってやつだよな。まだ使えるのかな?」
「骨格標本もあるのか!」
「私、ちょっと二階も見てくるね」
 蔵につくと、それぞれが好奇心のおもむくまま、目につくものを調べはじめた。
 古い家具や雑貨、ダンボールなどがまとまりなく置いてある。
 ちょっとした宝探しタイムだね。
 そんな中、わたしはまた、だれかに呼ばれた気がして、振りかえった。
『こっち……』
 やっぱり呼ばれてる……?
 静かな森のみずうみで、ポツンと落ちた雨だれが、水面に波紋(はもん)を広げるように。
『こっちだよ……』
 急に他の音が消えた世界で、かすかにひびく不思議な声にみちびかれるように――
 なんだか夢うつつの気分で、わたしは足を動かしていく。
 視線は、たなのはじっこにひっそりと置かれた、小さな箱に吸いよせられた。
 すごく古そうな木製で、宝石箱みたいな形。
 全体になにか複雑なもようが彫られていて、風変わりだけど、やけに存在感がある。
『開けてみて』
 手にとって、ふたを開けてみる。
 中に入ってたのは、いくつかの、指輪?
 そう思った瞬間、ゾーッとすさまじい悪寒が背筋を走った。
「!」
 直後、箱から目を開けていられないほどの強い光があふれだし、あたりが真っ白に染まった!
 同時に、ボン、と全身がはじけるような感覚に襲われて。
 わたしは意識を失った――。

「――どうなってるんだ……⁉」
 尊のあせったような声。
「尊……?」
 床にうつぶせになっていたわたしは、ゆっくり体を起こす。
 パッと目に入ったのは、かがみのそばにいた、一匹の黒い柴犬だ。
「うわ~、かっっわいい!」
 完全な子犬じゃなくて、子どもと大人の中間サイズ。
 キラキラお目々に、ツヤのあるやわらかな毛なみ。
 柴犬はみんなかわいいけど、その中でも最上級、おどろきの愛らしさ!
「かわいい! かわいいね~。どこからきたの?」
 一気にテンションがはねあがり、今の状況も忘れてかけよったら――
「え……その声、まなみ⁉」
 黒柴ちゃんから、尊の声がしたからビックリした。
「ええっ、尊……なの?」
 信じられないながらもそう聞いたら、黒柴はわたしを見つめながら、うなずいて。
「マジでまなみなのか? でも、その姿……」
 わたしの姿???
 尊(?)の後ろにあったかがみに目を向けると、プリティーな黒柴のとなりで。
 サーモンピンクの毛にしまもようが入った、ふわふわの体。
 短い手足に、アーモンド形の金色の瞳……。
 これまたとっても愛らしいにゃんこが、こっちをまっすぐに見つめていた。
 え、なんでわたしがいるはずの場所に、子猫が映ってるの???
 おそるおそる手をあげると、かがみの中の子猫も前足をあげて。

 ふるふると頭をふると、かがみの中の子猫も頭をふった。
 ………………どええええええええ⁉
「わわわわわた、わたし、ねねねっ猫になっちゃったー⁉」
「オレが犬になったと思ったら、まなみは猫か……」
 ボーゼンと尊が言ったところで、バサバサッと何かが飛んでくる。
「……そして、俺はタカみたいだな」
 鏡に映るたなの上に止まって、そう言ったのは、白と茶色の羽をもつ小型のタカ。
「もしかして行成⁉」
「みんな動物になってるのか?」
「そのようだ。若葉は、二階か?」
 そうだ、若葉ちゃんはだいじょうぶ⁉
「行こう!」
 あわててみんなで階段を上っていくと――
 ドレッサーの台の上に、手のひらサイズのハムスターがちょこんと立っていた。
「何が起こってるの……?」
 かがみを見て、そうつぶやく声はまちがいなく。
「若葉ちゃん!」
 わたしがまっしぐらにかけよると、ハムスターは「ギャー、猫ー!」と悲鳴を上げた。
「いやっ、食べないでー!!!」
「ちがうちがう、若葉ちゃん! わたし、まなみ!」
 わたしの言葉に、ガタガタとふるえていたハムスターは、つぶらなひとみをまたたいた。
「え……まなみ……?」
「うん! 昼寝とおいしいものとアイドルの漣くんが大好きな、斉賀まなみです!」
「オレは尊で、こっちのタカは行成だぜ。オレたちもおどろいたけど、若葉は寿命が縮んだな」
「ドンマイ」
「え……みんな、動物になってるってこと……?」
 キョトンと首をかしげるハムちゃん。か、かわいい……とかキュンとしてる場合じゃない! 
 わたしが猫で、尊が犬で、行成がタカで、若葉ちゃんがハムスター。
いったいどうして、こんな姿になっちゃったのー⁉


『放課後チェンジ』ためし読み 第3回

3  おそろいの不思議な指輪


「まずゾゾッとすっげー嫌な感じがして、いきなり周りがまぶしくなったと思ったら、ボンッ、て体がはじけるみたいになって、意識がとんで。気がついたら、この姿になってた」
 尊の言葉に、「私も」「俺も」とみんなが同意をする中。
 わたしは「ごめん」と、情けない気持ちで声をあげた。
「わたしのせいかも。なんか、だれかに呼ばれた気がして、箱を見つけてね。それを開けたら、指輪が何個か入ってたんだけど、そこからすごい光が出てきて……」
「指輪……もしかして俺の足や若葉の手に付いてる、これか?」
 そう言う行成のタカの足をよく見ると、吸いこまれるような青い石が付いた銀色のリングがはまっていた。
 若葉ちゃんのハムスターの手には、同じデザインの緑の石の付いた指輪。
「そうかも!」
「まなみと尊のしっぽの付け根にも、付いてるね。まなみはピンクで、尊は赤い石だけど」
「マジで⁉ 色ちがいの石の指輪ってことか」
 おたがいの指輪をまじまじと見くらべるわたしたち。
 箱も調べてみよう、ということでみんなで一階に下りる。
「これだよ!」
「うわ……これはなんか見るからに……」
「あやしげだな」
「独特のオーラがあるね……」
 床に落ちていたからっぽの箱を囲んで、うなる三人に。
「だよね……なんで開けちゃったんだろう~」
 半泣きで下を向いたら、わたしの頭にポン、と犬の手がのせられた。
「ま、どうせ夢だろ。さっきは一瞬あせったけど、こんなこと、あるわけないし」
 からっと言いきる尊。夢……?
「のわりには、感覚がリアルなような……でも、そうだよね……夢、かな……?」
 自分を納得させるようにつぶやく若葉ちゃん。
 そ、そうか。これ、夢か~。
 夢の中の尊たちが「これは夢」とか言ってるのは、ちょっと不思議な感じだけど。
「……だよね。いきなり動物になるなんてね!」
「そうそう。夢の中でもやらかすのが、まなみらしいけど」
「尊、それどういう意味⁉」
「そのまんま。ドジでケーソツでそそっかしいソコツでマヌケなまなみらしいって意味」
「そこまで言う⁉ 尊こそ夢の中でも口が悪いな!」
 言い合うわたしたちの横で、「――とりあえず」と行成がつばさを広げる。
「貴重な動物体験だ。楽しませてもらおう」
 そう言うと、行成は開けっぱなしだったドアから、バサバサッと大空へと飛びたっていった。
 ――行成も夢でもブレないな⁉ あいかわらず自由人……。
 でも、そうだね。
 わたしが猫なんてちょっと複雑だけど……夢なら、楽しんじゃおう!
「よし、オレも――」
「待って、尊!」
「うわっ」
 わたしは外に飛びだしかけた黒柴(くろしば)の体に、ぴょんと抱きついた。
 ふわふわの毛なみに、思いっきり顔をすりすりする。
「はあ~、黒柴かわいい~。もふもふ最高~♡」
「こ、子猫が小犬に全力であまえている……!」
 何このいやしの光景、とつぶやく若葉ちゃん。
「しっぽもたまらん♡」
「~~やめろ、くすぐったい! あとオレはかわいいじゃなくてカッコいいんだよ!」
 くるんと丸まったしっぽにじゃれようとしたところで、パシッとはらわれた。
 つれないなぁ、もふもふ……。
 尊はドアから飛びだすと、畑の方へと勢いよく走りだした。
 ワンワン! と犬そのものの声で鳴いて、すごいスピードでかけまわる。
 あ~、やっぱりかわいいよ黒柴!
 コロコロとはねる元気な体。極上の黒い毛なみ。
「国宝級の顔」なんて自称してたけど、実際、元の尊の外見はすこぶる良いんだよね。
 でも、犬になるとこれほどとは! もう、ジタバタしちゃうかわいさだよ~。
 遠吠(とおぼ)えまでして気持ちよさそう……よし、わたしも行くぞ!
「尊~、もう一回もふらせて~!」
「ふふん、オレの速さについてこれたらな!」
 ――すごい、体が軽い! 
 さすが猫。とんだりはねたり、自由自在。
 目線が低いのもいつもとちがって、楽し~い。
 晴れた大空を見あげると、行成がゆうゆうとつばさを広げて飛びまわっていた。
 おそるおそる外に出てきた若葉ちゃんも、トトトッと身軽に走りだす。
 よーし、次は木登りしてみようかな……うん、楽勝、楽勝♪
 だけどほどなくして、体の奥がむずむずするような感覚がわいてくる。
 何これ?
 わたしが木の枝からぴょんと着地したら、他の三人も異常を感じたのか、そばに集まってきた。
 直後、またボン! とあの感覚がして、みんな、人間の姿に元どおり!
 小川をのぞきこむと、髪を左右で三つ編みした、見なれた自分の顔が水面に映った。
 よかった、わたしももどれたみたい。夢の中とはいえ、やっぱりホッとするな~。
「……あれ、なんか、力が入らない……」
 立ちあがるのがおっくうで、そう言うと、「わかる」と若葉ちゃんもしゃがみこんだ。
「体が重いな……」
「ああ、やたら疲れた。バスケの試合の後みたいだ」
 行成や尊も同じみたい。
「あ、やっぱり指輪してる……」
 そう言った若葉ちゃんの右手の中指には、たしかに、緑の石がキラリと輝いていた。
 わたし、尊、行成の右手の中指にも、おそろいのピンク、赤、青の指輪が光っている。
 古めかしいけど、どこか特別な感じがする、凝ったデザイン。
「こういうの、アンティークって言うんだっけ。なんかロマンがあるっていうか、カッコいいよね」
「まあな……ん? ……っ……なんだこれ、全然ぬけねー」
 うそ⁉
「んんんっ、んー! この! キーッ! ……ハアハア、ほんとだ……ビクともしない」

「……私も無理みたい」
「右に同じ」
 とほうにくれて、顔を見あわせるわたしたち。
「――とりあえず、帰るか。昼メシのすげーいいニオイがする」
 尊の言うとおり、さっきから、お出汁(だし)や天ぷらのいい香りがただよっていた。
 くんくん、とかごうとすると、すうっと鼻がとおる感じがして。
 まるですぐそばに料理がおかれているみたいに、キョーレツなニオイになった。
「尊とまなみの指輪、光ってるな」
 行成に言われて見てみると、ほんとだ、赤とピンクにぽうっと淡く発光している。
 ニオイをかぐのをやめたら、光は消えた。
 ……よくわからないけど、動物に変身とか、光る指輪とか、ファンタジーな夢だなあ。
 でも、夢にしては感覚がはっきりしすぎてるような……鼻だけじゃなくて、目も耳も、全身の感覚に言えることなんだけど。
 なんともいえない違和感を覚えながら、わたしたちはおばあちゃんが待つ家にもどった。


第4回は7月30日(火)更新予定!
お楽しみに♪


『放課後チェンジ 世界を救う? 最強チーム結成!』
 作・藤並みなと
 絵・こよせ 
 発売日:2024年8月7日 
 定価:836円(本体760円+税)
 本文ページ:216ページ
https://www.books.or.jp/book-details/9784046323132