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どこにでもあるような

家を買った。


なんか知らんけど。


いや、そんな適当な感じで買ったわけではない。ただなんとなく、気になった物件があり、なんとなく見に行ったら良い感じで、担当してくれた人もすごくいい人で、


なんか気づいたら買っていた。


完全にヌルヌルっと決まっていった感はあるが、まあ大事な物事が決まる時ってのはそんなもんなんだろうなーと思いながら、新生活へのワクワクと、今まで慣れ親しんだ賃貸へのさみしさと、ローン地獄が始まる恐怖で1日5食しか食べられない毎日を過ごしている。あと荷造りはもう2度とやらない。絶対に。まじで。ガチマジで。本当に。

よく、持ち家は損だとか、賃貸でじゅうぶんだとか、マンションの方が便利だとかいろいろな話があるが、一軒家ってのはやっぱりこう、損得だとかなんやかんやを抜きにしたロマンみたいなのが大きい気がする。だってそんなの気にしだしたら結婚なんて金かかるだけだしー?子どもだってコスパ悪いしー?子どもなんて毎日ポケモンのシール欲しいためだけに親にポケモンパン食べさせてくるしー?欲しいシールが出なかったら怒られるしー?最終的に残した子どもの分のパンまで食べさせられるしー?やばくね?理不尽キョダイマックスじゃね?

いや、ポケモンパンの話がしたいわけではない。


家でも探すかーと思った理由は2つある。1つは息子が生まれて、この先のことを考えるともうひとつ子ども部屋が欲しいなーと思ったこと。もう1つは、自分が今までしてもらったことを、そろそろ返していく順番なんだろうなーと思ったこと。

実家は一軒家だった。たいして広くもなく、豪華でもない、どこにでもあるような一軒家。子どものころの思い出がある。朝、2階の自室で目覚めて下に降りていくと、親父はコーヒーを飲みながらタバコを吸って、新聞を読んでいる。爺ちゃんと婆ちゃんが朝ごはんを食べていて、制服に着替えた姉ちゃんがテレビを見ている。なんてことない朝の、なんてことない思い出。いや、本当はそんなに綺麗なものでもなかったかも知れない。親父はヘビースモーカーで朝から煙たかったし、婆ちゃんは毎日トーストと味噌汁っていうよく分からない食べ合わせだったし、爺ちゃんが自分で漬けて食べてた梅干しはめちゃくちゃしょっぱかったし、姉ちゃんはこたつでギリギリまで二度寝していてよく怒られていたし、朝からチャンネル権は姉ちゃんにあったし、朝が苦手な姉ちゃんは基本的に毎日機嫌悪かったし、そのせいで僕はよく姉ちゃんの八つ当たりのターゲットにされたし、


姉ちゃんこっわ。

全然いい思い出がないかもしれない。


いや、姉ちゃんがこわい話をしたいわけではない。


そういう、家族のなんてことない日常の思い出が自分にはあって、そのひとつひとつが親父が必死こいてローンを返し続けた一軒家の中にあって、それが今の自分をつくっている。だから、そんな親父への恩返しというか、自分がしてもらっていたことを、今度は自分が返していく番になったんだなーと最近よく思う。


「なんでもじゅんばんこやで。」

親父はよくこの言葉を使っていた。姉弟でモノの取り合いでケンカになったとき、公園にあそびに行ったとき、遊園地でアトラクションに並んでいる時。親父に家を買うかどうか悩んでる報告をした時、「買っても買わんでも好きに使え」と、お金が振り込まれていた。それはいくらひとりで気楽な親父でも、なかなかポンっとは振り込めないような額だった。お礼の電話をすると「今度はお前が子どもらにする番や」と言っていた。なんでもじゅんばんこ。親父には勝たれへんなー。歳を取れば取るほど、親父のデカさがよく分かる。カッコいいんですよ、うちの親父。ハゲてるけど。

https://twitter.com/mossan1130/status/1430729349867601925?s=21

家を買った。有名人でも、大金持ちでもない自分が買った、どこにでもあるような中古の一軒家。新しい場所で始まるこれからの、どこにでもあるような家族の日常を、笑ったり、泣いたり、怒ったり、怒られたり、ローンの返済具合見て気が遠くなったり、毎年固定資産税払ったり、ポケモンパン食べたりしながら、楽しく過ごしていこうと思う。

https://youtu.be/E93zsGUiPb8

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