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ダイニングメッセージ

ひとり暮らしや結婚してふたりで生活していたころは、ダイニングテーブルがなかった。ひとりやふたりのころは部屋もそんなに広くなかったし、こたつでじゅうぶんだった。
ちょっとだけ広い部屋へ引っ越しをして長女ができて、離乳食が始まったころ、ようやくダイニングテーブルと椅子を買った。と言ってもそんないいものではなく、汚されることを見越した、IKEAのものすごくシンプルでお手軽なやつ。だけど、ダイニングテーブルを置いたことでなんだか部屋にすごく『家族感』が出て、みんなで座ってニヤニヤしていたのを覚えている。
それから本当にたくさんの時間をダイニングテーブルで過ごした。毎日の食事はもちろん、家族でのたこパやクリスマスパーティー、誕生日会、友人を呼んでの食事会。子どもとのお絵描きや塗り絵、クッキーやホットケーキ作り。保育園や職場の書類の記入、奥さんの裁縫、アイロン掛け。子どもたちのかくれんぼの隠れ場所、乗り物遊びのトンネル、ちょっと目を離したスキに上に乗られて、ティッシュを全部出したり、ステージにされて熱唱していたり、いろんな話をしたり、ケンカしたり、仲直りしたり。いつでも家族の中心にはダイニングテーブルがあった。
そして弟が生まれて、一軒家に引っ越して、今度は弟の離乳食が始まって、またたくさん汚されて、かじられて、スプーンやおもちゃでガンガン叩かれて。小学生が始まった長女の宿題場所になったり、ピアノやパソコンの練習場所になったり、工作の作業場所になったり。子どもたちが成長して、食べる量が増えて、できることが増えて。そうなってくると、だんだんと今のテーブルが狭く感じることが多くなった。
嬉しいことではあるんだけど、ずーっと使っていたので愛着もあるし、どうしようかなーなんて思っていた時に、何気なく入った中古の家具屋さんであるダイニングテーブルと出会った。中古とは思えないほどキレイで、今のテーブルよりも大きく、シンプルだけど存在感のあるテーブルで、中古のくせになかなかの価格ではあったが衝動買いをして、そのまま軽バンにギュウギュウに押し込んで(しかも雨の中)速攻で持ち帰ってきた。
本当に衝動買いだったので、いざ家に入れたらデカすぎたり、雰囲気に合わなかったりしたらどうしようかと不安になったが、これがなんと置いてみると驚くほどにしっくりきて、大きくなったことで家族との距離が少しづつ離れたのは寂しかったけど、はじめてダイニングテーブルが来た時のように、みんなで座ってニヤニヤしている時間は増えそうだ。
これなら前のダイニングテーブルも安心して引退できるかなと思いながら、早くも新しい方に目移りしてることに申し訳なさを感じた。
娘の離乳食が始まってから小学生になるまで。息子が生まれてから2歳半まで、本当にありがとう。新しいダイニングテーブルよ。
これからたくさん、家族の団欒の中心で、みんなの話を聞いたり、料理を食べたりこぼされたり、牛乳こぼされたり脚におもちゃぶつけられたり、一緒に長い時間を過ごしましょう。

さて、カードの引き落としに震えるとするか。

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