担降りブログ、のような

2021年頃に書いてた文章です


ジャニーズと二次元しか知らないので、女の子のアイドルの卒コンについてピンときていなかった。女の子にはアイドルを卒業する日があって、その日は盛大にお祝いされるらしい。大好きなアイドルがアイドルでなくなることを知りながら見届けるコンサートは、どんな気持ちなんだろう。想像すらできない。けどジャニオタの私はあんまり関係ないか。

と、思っていたら大好きなアイドルがアイドルじゃなくなった。2020年6月のこと。それは突然だった。私はその瞬間はお風呂に入っていて、メールに気付いてすぐ動画を再生した。最後まで見れなかったけど、まだぎりぎり残っていたNEWS RINGを全てスクショした。それを終えて、やっとものごとを理解しきってからはずっと泣いてた気がする。私は、手越くんがアイドルでなくなる瞬間を見届けることはできなかった。2019年の長野で会ったあの日の手越くんは、間違いなくアイドルでい続ける手越くんだったから。勝手にあの日を最後にしやがって、このやろう。

手越くんは比喩でなく太陽だった。いつかのラジオで「人生の選択に間違いなんてない。選んだ方が正解。正解にしていく」と言い切ってくれたことは、当時選んだ道を失敗だと思っていた私の気持ちを掬ってくれた。手越くんのそういう強さが好きだった。2017年春、誰が見てもわかるほどやつれるような繊細さを持っていながら、そういう自分を自分で鼓舞していくような。ときには強がりにも聞こえるような強さに、私は照らされていた。誰にも冒されない柱のようなものがある手越くんみたいになりたい。何度もそう思って、けれどどうしたってなれなくて。手越くんの強さが羨ましくて、希望だった。

退所についての会見は見ていないし、直後に出した本は読んでいない。正確にはインターネットに溢れる無断転載を見てしまったけど、とても読めなくて目を逸らした。今では一文字も覚えていない。でも目に入った情報の断片を拾って、「折れなかったんだな」と思った。STORYが終わったらやめるつもりだった、には1億歩譲ったとして、まだできてないのに「STORYやりたい」は意味わかんなくて怒った。じゃあもうちょっと待ってくれよ。待てる人じゃないことは知ってるけど。ジャニーズ事務所の仕組みは、中にいたあなたが誰よりも知っているでしょう。

ネズミやクモを「現地の人が食べているものだから」とゲテモノ扱いせず美味しいと言うところ、"ここにいない人"のことも考えているところが好きだった。

けれど一方で、自分がこうと決めたらこうだし、ジャニーズという箱を檻のように感じているのかもしれない、と思うこともあった。それが不安だった。"ファンがいるから"好きな歌だけを歌えなくてもアイドルを選び続けていた人だ。ファンに会えない、思うようにリリースができない、それはストレスだったのかもしれない。答え合わせなんか一生できないけど。

2020年のあの時期は、本当に正しいことなんかひとつもなかったと思う。仕事、居住地、社会的立場、家庭環境。そういうものがみんな違うから、正解なんかどこにもなかった。だからあのときの手越くんの行動も、手越くんにとっては正解だったのかもしれない。私の正解や、ジャニーズ事務所の求める正解とは違ったけど。そうして自分を曲げず、折れず、芯が強くて時間の無駄と不自由が嫌いな手越くんは、事務所を辞めた。アイドルをやめた。

世の中には一定数不思議な人がいるので、「NEWSが好きです」と言うと「手越やばいよね(笑)」となぜか半笑いで返されることがあった。スキャンダルだとか、「(女性の)ブラのホックは両手で外します」と堂々と答えてもイメージダウンではなく笑いになるところを指しているのかもしれない。けれどそんなこと、アイドルの手越くんに愛されたことがあれば些末なことだ。

コンサートの手越くんは本当にかわいい。コンサートじゃなくてもかわいいけど。この世のかわいいを集めたら、手越くんの形になるぐらい。メンバーに褒められたら恥ずかしくて普段あんなによく回る口が閉じちゃうし、罵倒のボキャブラリーは「ばか」と「ふざけんなよお」だし、ファンに向ける笑顔は溶けちゃうんじゃないかってぐらいでれでれだし、リフターやトロッコに乗ったら自分のパート以外はずーっとファンサをしている。そのときの幸せそうなこと。私はその表情がたまらなく好きだった。自担であるこやまくんのファンサは見たくないときもあったりしたので、そういうときはずっと手越くんを見ていた。手越くんを見ていると幸せになれる。この人は本当に私(ファン)が好きなんだ、と誰が見てもわかる顔で笑うから。ふにゃふにゃ、でれでれ、にこにこ。

ファンからの"好き"を食べて生きる人だ。だから好きがなくなったらしんじゃうかもね。そんな物騒な話もしたりして。ああそうか、2020年春、私たちは会えなかったから、手越くんも私たちの好きを食べられなかった。だから、アイドルとしての手越くんはしんじゃったんですかね。なーんて。しぬなんて言葉、生身の人間に使いたくないよ。でも、ある種の"死"だと、私は思っている。

手越くん、2016年の24時間テレビでNEWSのこと大好きだと言ってくれたことは嘘じゃなかったと思っていますよ。私はそのときNEWSのファンじゃなかったけど、ファンになってからずっと、手越くんはNEWSが、ますださんが、こやまくんが、かとうさんが、大好きなんだって感じてた。かとうさんと二人でNEWSを引っ張っていこうって話したって、いろんな媒体で見ました。NEWSも、メンバーも、ファンも、大好きでしょう。それは確信を持って言えるんですよ。だから、悲しかったんです。ファンを含むNEWSと、なにかを天秤にかけて、NEWSは負けたんですよね。

そうだ、「負けた」と、少なくとも私はそう思ったんだった。なにに負けたのかは今でもわからない。自由か、コロナ禍か、別のなにかか。でもとにかく、手越くんが何度も口にした「ファンがいるから続けてる」の"ファン"は、あのときの手越くんの決意を踏みとどまらせるには足りなかった。私たちは捨てられたのだと思った。

たまーに、おすすめトレンドに手越くんが載ってくる。それを見てしまうことにたいした理由はない。インスタのストーリーを見るような感覚かもしれない。そうすると、なんとなく手越くんの今を知れる。ツアーやってるんだ、とか、なんか始めるらしいとか。ある日、そのツアーの写真がツイートされていた。おたくが撮ったのかな、よくわかんないけど。手越くんは、大学の講堂みたいなところに立っていた。似合わないなあ、というのが率直な感想だった。派手な衣装を着て、大きなステージに立つ手越くんしか知らないし、そんな手越くんが好きだったから。花道もないような小さな会場で、公園をお散歩できるような服を着て歌う姿は、私の知ってる手越くんじゃなかった。

アイドルの手越くんは、とっても歌が上手だった。上手、なんて言葉では足りないほど。MUSIC DAYで企画されたハイトーンランキングでは男性一位だったし、X JAPANの紅を原キーで歌い切った。素人の感想だけれど、ハイトーンだけじゃなくて、ビブラートも、シャウトも、アドリブでいれるフェイクもすごい。誰よりも声量があるから、NEWSのコンサートでは手越くんの声が一番聞こえる。主メロよりハモリの方が大きいことなんてザラで、私はそれが好きだった。年末のFNSでは必ず歌が本業の方とのコラボに呼ばれ、MDのジャニーズメドレーで最後に全員で歌った宙船では一人だけハモリ。決めてたのかは知らないけど、アドリブの可能性も捨てきれない。そして一人なのにそのハモリがよく聞こえた。技術だけじゃなくて、"生歌"にこだわって、感情を乗せて届けてくれる歌ばかり好きなのはきっと手越くんのいるNEWSが親だからだ。私にとって手越くんの歌声は、NEWSを好きでいる上での必須事項だった。その手越くんの歌声がなくなってしまって、どうやって好きでいたらいいかわからなくなった。それが2020年7月のこと。

24時間テレビで、3人の歌を聴いた。4人で歌っていた曲じゃなくて、多分3人のために作られた歌。すごくいい曲だと思ったし、キーが高くなくてこやまくんも歌いやすそうだった。けれどまだ"3人のNEWS"とどう向き合ったらいいかわからなかった私は、どうしてもあとひとつを探してしまう。会場全体を震わせるような声は見つからなかった。

その後も明確に"降りる"というタイミングはつかめないまま翌年、NEWSのコンサートに行った。毎年行っていたこやまくんのお誕生日公演。結果的に5年かかったアルバムプロジェクトの集大成はすごく楽しかった。演出も、セットも、NEWSの作る世界も大好きだと思った。NEWSのコンサートが一番すごい。でもやっぱり、当たり前だけど……手越くんはいない。手越くんのキーが出る人はきっと世界中探したらたくさんいるけど、手越くんのように歌える人はどこにもいないことを突きつけられた。Love Storyの「また明日ね」も、SUPERSTARのサビも、夜よ踊れとエスの手越くんパート全部も、URのこやまくんとのハモリも、手越くんの声で聞きたかった。こうして挙げ始めたらキリがない。私は、私が思ってる以上に手越くんの歌が好きだったんだと思う。手越くんの歌声がないNEWSは、前と同じようには愛せない。そして前と同じように愛せない自分も受け入れられない。NEWSを降りる、と決めた日。

私の辞書には、アイドルの欄に「歌に感情を乗せて大きな声で届けられるひと」と書いてある。そんな人NEWS以外にいないと思っていたから、NEWS以上に好きになれる人なんて現れないと思っていた。だから私のまんなかのNEWSが埋めていた場所は欠けてしまった。でもそれでもいっかと思っていた、のに、いた。欠けているところを埋めてくれる人が、いた。

誠也くんを初めて見たとき、勝手な見た目からの連想で、ファンサはあんまりしない人だと思っていた。だから、優しい笑顔で客席に手を振る姿に心臓を打ち抜かれた。ギャップってやつだ。ふにゃふにゃの笑顔を失っていたから、あれには弱い。それに誠也くんも金髪で華奢で小柄でかわいい。どんな偶然だよ、と笑った。いや、運命かも。

今となってはとても失礼な話だけど、ジュニアの歌にはハモリがなくて全部口パクだと思っていた。だから、Aぇを見たとき余計に驚いたんだと思う。ドリアイを見る前日、大阪に住む友達とテレビ電話を繋いで24時間テレビの歌唱シーンを見せてもらった。生歌で、全員でハモって、全身全霊で感情を届けてくれる歌。私が大好きなグループでの歌い方。

決定的だったのは翌日のドリアイで歌った『West side!!』だった。バンドのイントロが終わって、曲名を叫んだ瞬間の声は、私の欲していたもの。画面を通しているのに、その声で肌がぴりぴりした。その前にも、罪と夏やParty-Aholic、Stray dogs.で声量もハモリもすごいなと感じたけれど、West side!!は特別だった。ただ歌がうまいだけじゃなくて、声が大きくて、その声で会場全体を震わすような。私の大好きな歌い方を彷彿とさせた。

欠けたところは、思っていたよりも早く埋められた。埋められてしまった。あんなに4人が大好きだったのに、同じくらい好きになれる6人と出会ってしまった。手越くんの影を追いかけているだけかもしれない、なんて思いは数ヶ月かけて薄れていって、今では6人が大好きだと言い切れる。

今、いつか手越くんとご飯に行った話を聞きたいとか、音楽番組でコラボしてほしい、とは一ミリも思わない。むしろしないでほしい。NEWSでいないことを選んだんだから、NEWSとは違う道を邁進してほしい。もうNEWS担でない私が言うのはおこがましいけれど、NEWSの進む道を、3人の作るNEWSを、見ているだけにしてほしい。いっそ見てなくてもいい。

「選んだ道が正解」だとあのとき伝えてくれたように、手越くんの選んだ道を正解にしてほしい。そして私にも、手越くんの選んだ道は正解だったと思わせてほしい。ジャニーズ辞めてよかったね、じゃなくて、好きなことできてて幸せそうだねって、思いたい。わがままかな。わがままですね。NEWSのファンでいる間、ずっと幸せにしてもらってたから、手越くんにも幸せでいてほしいよ。NEWSでなくなってもこの気持ちだけは変わらないよ。これは、わがままじゃなくて願望です。こやまくんも、かとうさんも、ますださんも、てごしくんも、みんな幸せでありますように。私は私で、勝手に幸せになります。


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