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卒業生対談 vol.5 防衛大対談

今回のテーマは、防大(ぼうだい)!
防大とは、自衛隊のリーダーである「幹部自衛官」を養成する日本で唯一の教育機関、防衛大学校のことです。

対談者は、防大に通う現役学部生(本科生)の滝沢さん、丸山さんと、修士課程(研究科生)の笛木さんの3名です。あまり知られていない防大での生活から今後の進路の話まで、盛りだくさんな内容です!

※なお、この対談記事は、防衛大学校の許可を経て掲載しています。


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さっそくですが、皆さんが防大を目指したきっかけはなんですか?


笛木:きっかけは小学生の時の中越地震です。災害派遣で活躍する自衛官に感銘を受け、自衛官という仕事を調べていくうちに国防に興味をもちました。自衛官には、現場で主に働く「一般隊員」と、部隊を指揮する「幹部自衛官」(図1)という2つの道があるんですが、自分は、より責任のある仕事を行える「幹部自衛官」の働き方に魅力を感じ、最短ルートで夢を実現できる防大を目指しました。滝沢君はどうだった?

滝沢:私はもともと軍事に強い興味があり、せっかくなら自分の職業にしたいと思っていました。はじめは、普通の国立大から「一般隊員」になる進路を考えていましたが、調べていくうちに、組織を動かす「幹部自衛官」に興味を持つようになり、防大への進学を決めました。

丸山:私も笛木さんと同じで中越地震がきっかけです。中等時代、部活動の部長や体育祭での応援団長になった経験を通して、人を動かすことのやりがいを実感し、部隊を指揮する「幹部自衛官」になろうと決め防大を志望しました。


自衛官採用コース

図1 自衛官になるコースはたくさんあります!

(自衛隊総合採用案内より)


防大の入試制度について教えてください。


笛木:主に、推薦採用試験、総合選抜採用試験、一般採用試験(図2)の3つです。推薦は9月、総合選抜は1次試験が9月で2次試験が10月、一般は1次試験が11月で2次試験が12月です。ちなみに自分は推薦で入りました。
(※防衛大学校は、一般の大学入試とは異なるため、入学試験ではなく「採用試験」が正式な呼称となっています。)

丸山:私は陸上部の部長だったので、その経験が生かせると思い、総合選抜を選択しました。

滝沢:私は推薦を受けたんですけどだめで、最終的には一般で入りました。

笛木:1番遅い一般でも大学入学共通テスト直後には結果が分かるので、防大を受けておくと余裕を持って高校最後の生活が送れます!ちなみに、採用試験の時点で文系か理系どちらかの枠で入校し、2年生になる時に自分の希望と成績によって、陸・海・空のいずれかの要員に分かれます。私たちは3人とも「陸上要員」です。


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図2 学力と面接どっちも大切です!

(防衛大学校HPより)


普通の大学と違う防大の特色は何ですか?


笛木:大きな違いとしては、入校した時点で特別職国家公務員になることです。授業を自己都合で休むと職務違反で懲戒処分になるので、当然さぼったりできません。

滝沢:給料は月額約11万円、手取りが9万弱ですね。

笛木:あとは、入校式のあとに「銃貸与式」という行事があり、1人1丁、本物の銃が貸与されます!

丸山:銃をもって走る練習や射撃訓練があるので、特に1年生のときは銃が相棒ですね(笑)

笛木:ほかには、全寮制であることですかね。8人~10人ほどで、1~4学年が同じ部屋です。(図3)

丸山:私の先輩は親みたいに優しく接してくれるので、アットホームな感じです。

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(a) 居 室


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(b) 寝 室


図3 学生舎の部屋はこんな感じ

(防衛大学校HPより)


笛木:寮生活では、1日のタイムスケジュール(図4)が決まってます。起床の際はラッパが鳴り響くので、嫌でも起きますね(笑)。中等の6年間も濃かったけど、防大の寮生活ではそれ以上に濃い人間関係が築けます。普通の大学だと気が合う人とだけ付き合うことが多いと思いますが、私たちの場合は24時間一緒にいるんで、相手の良くないところも見えて喧嘩もします。本音で話して本音でぶつかりあう仲間に出会えるのが防大の良いところだと思います。

丸山:横の繋がり、縦の繋がりがすごく強いですよね。


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図4 充実した一日を送れます(笑)

(防衛大学校受験案内より)


笛木:そうだね。ほかに防大の特色といえば、一般大学よりも卒業までに必要な単位が28単位ほど多いです。(図5)(※卒業に必要な単位:一般大124単位、防衛大152単位)理由は「防衛学」等の授業が必修となっているためです。ちなみに、授業のほかに毎週1回の「訓練」があります。7月は「集中訓練期間」といって、1か月間勉強を一切せずにずっと訓練をします。(図6)この期間中は、全国の部隊に赴き、実際に働いている人たちと一緒に勤務もしたりします。


カリキュラム等

図5 取得単位数は多い!

(防衛大学校受験案内より)


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図6 演習場へ行き泊りがけで訓練!


滝沢:実際の部隊を見る、研修等の機会が多いのも防大の特徴ですよね。(図7)

笛木:一般の方が入れない硫黄島へ行く研修(図8)があったり、国家的な行事にも参加できます。(図9)他には、防大は普通の大学と違い夏休みが短いことですかね。普通の大学は2か月くらいですが、防大は約3週間です。ですが短いながらも色々できます!自分は、3年生の時にトルコ旅行に行きました。(図10)防大は留学生がいっぱいいるので、留学生の実家に連れて行ってもらう人もいます。


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図7 夏季休暇時、新潟地方協力本部の募集広報に協力

(体験的に搭乗)


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図8 米軍の艦砲射撃によって破壊された摺鉢山

(硫黄島研修時に撮影)


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図9 中央観閲式に参加!

(防大4年時)


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図10 カッパドキアの夜景を背景に・・・

(防大3年時のトルコ旅行にて)


滝沢:留学生の存在ってすごく大きいですよね。私はタイの留学生と同じ部屋になる機会が多かったです。留学生を通じて他国の文化に触れることができるのも防大の魅力です。

笛木:意外に防大、国際色豊かです!全生徒2000人中、150人くらいが海外からの留学生です。それと、防大にいると、外国の士官学校の行事に参加する機会もたくさんあります。

滝沢:世界各国の士官候補生を防大に呼び、軍事などの議題について討論する大会も毎年あります。

丸山:TOEICの成績によっては海外に派遣されたりもします。

笛木:最後になるんですが、他の大学と違う防大の魅力は、行事がたくさんあることですね。一年を通じて様々な「競技会」という行事があり、4つの大隊(寮)が常に競い合っています。一番有名なのが「棒倒し」(図11)です。


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図11 棒倒しはかなり激しめです(泣)

(防衛大学校広報チャンネルより)


丸山:半年前から準備しているところもあれば、1年間棒倒しのこと考えてる人もいますよね(笑)

笛木:6月と9月以外は毎月競技会等があるので、飽きることはないですね(笑)(図12)


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図12 多彩な行事が盛りだくさん!

(防衛大学校受験案内より)



有事の際、防大生が出動することはありますか?


滝沢:それはないですね。防大生は、学ぶことが任務になっているので。

笛木:ややこしいんですが、防大生は特別職国家公務員(=自衛隊員)ではあるんですが、「自衛官」ではないんです。卒業式の時に内閣総理大臣の前で宣誓をしてはじめて「自衛官」になります。なので、滝沢君と丸山君はあくまで学生という身分であり、有事の際に出動することはありません。自分は既に卒業しているので、「自衛官」という身分で勉学をしに来ている状態です。なので、本科生と違って、有事の際は勉学を中止し現場に戻され、出動します。ちなみに、自分のように「自衛官」という立場でありながら、修士課程で勉強しているのは少数派です。


中等に入ってよかったと思うことは何ですか。


笛木:やっぱり志の高い仲間に出会えたことです。今でも連絡をとりあい良い刺激をもらってます。あとは、皆が勉強する環境に置かれていることですね。入学した時はみんな志が高いですが、6年間の学校生活って普通、中だるみしちゃうじゃないですか?でも、中等ではみんな勉強することが当たり前だったので、周りを見て自分も負けてられないと思えましたし、中だるみしてもそのままズルズル落ちることなく夢に向かって努力できました。

滝沢:あとはやっぱり6年間一緒だったので、話したことない同級生はほとんどいなかったですよね。6年間の濃い交友関係が、今よりももっとありがたいなあと感じる時がいつか来ると思っています。

丸山:縦の繋がりでいうと、1学年から6学年まで幅広い年代の人と接することができた中等生活は、今の上下関係のコミュニケーションにも役立っていると感じます。

滝沢:この間まで小学生だった子から、大学受験に向け勉強している人までいて、色んな人と接することができるのはかなり大きいですよね。



皆さんの将来の進路、目標を教えてください!


滝沢:全員、基本的には「幹部自衛官」として仕事をすることを目標にしています!

丸山:その中で、それぞれがやりたい仕事があります!「自衛官」は災害派遣などで現場に派遣されているのが一般的なイメージだと思いますが、内部では、様々な「職種」に分かれていて、戦車で戦う「機甲科」、物資を補給する「需品科」、情報を集める「情報科」、隊員の給与の支払い等の会計事務行う「会計科」など、多種多様です!


笛木:需品科の幹部としての任務を果たすのはもちろんですが、今後の希望としては、戦車をはじめとする自衛隊の装備品の開発や研究の仕事にかかわっていきたいと思っています。夢は、現場の隊員の負担を減らすため、より良い自衛隊の装備品を開発し、日本の防衛に貢献することです。


滝沢:私はまだ職種が決まっていないので、今はしっかり基礎を学んで部隊勤務に望みたいと思います。今のところ希望職種は「機甲科」と「情報科」です。戦車部隊と作戦において非常に重要な情報関係の職に興味があります。

丸山:私は「普通科」に興味をもっています。有事の際に自衛隊の最前線で動く点に魅力を感じたからです。空挺団(くうていだん)やレンジャーといった精鋭部隊にも興味があります。今後の防大での生活を通して、自分の職種を決めたていきたいです。あと、直近の目標としては、世界中の士官学校が参加する競技会に出たいです!毎年アメリカで開催されていて、士官学校ごとにチームに分かれ、重量物運搬、射撃、船を漕ぐなど、部隊としての総合的な精強さを争う競技会です。



最後に、これだけは伝えたいと思うことをどうぞ!


笛木:防大ってあまり知られていないので、こういう機会を通じて、まずは知ってもらいたいですね。授業料も受験料もかからないので、調べてみて良いと思ったらぜひ受験してください!受けるだけ受けてみるのもアリです。

滝沢:制服は貸与されますし、寮費もかかりません。食堂があるので食生活で困ることはないです。ちなみに、私が使っていた赤本を中等の進路指導室に置いてきてあるので、受けたい方はそれを使ってください(笑)

丸山:興味を持った方は、ぜひ防大へお越しください。待ってます!


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図13 卒業式の帽子投げは最高の瞬間です!



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非常に興味深いお話が聞け、大変勉強になりました。国防という高い志をもつ皆さんのご活躍を願っています。


貴重なお話、ありがとうございました!




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