ひなビタ♪10「ふらふらフラッペチーノ」

倉野川市、日向美商店街。

元気のなくなった地方都市の商店街を盛り上げるために組まれたガールズバンド「日向美ビタースイーツ♪」。

今日は音楽スタジオで、日向美ビタースイーツ♪のバンド練習が行われている。
アマチュアであるが、音楽にかける情熱はプロ以上で、メンバーの音と音の熱いやり取りが繰り広げられている。

ジャーン!…ダカドンッ!

めうのドラムの締めで、曲が終わった。

「お疲れめう。…いや〜、この曲は疲れるめう…。」
「そうだよね。めうは、ツーバスを踏みっぱなしだし…。あたしも、フレーズが細かく動くから、覚えにくいしっ。」
「いぶぶも大変めう…。リズム隊いじめめう!」
バンドでは、ベース(一舞)とドラム(めう)のことを、リズム隊と呼ばれることがある。ボーカルやギターと比較して、地味な存在と軽んじられがちだが、どちらもバンドを支える大事な楽器であり、不安定だと曲が台無しになってしまう。

「…でも、二人とも、最初に比べるとかなり良くなったと思うわよ。」
「そうですよ。とってもとっても、安心して演奏出来ます。」
「…ただ、洋服屋はもう少し16分を正確に。はんこ屋はツーバスの粒をもっと揃えれば、より良くなるわね。」
褒めながらも、凛の指摘はシビアである。

「…やっぱり、リズム隊いじめめう…!」
「そうだよ、凛ちゃん!バスドラさんも、たくさん叩かれてかわいそうだよっ!」
「…何で、まり花ちゃんがバスドラムをかばうんですか?」
「…それは、次の練習までの課題ね。そろそろ、時間も終わるわね。」
と、凛がスタジオ内の時計を見た。予約の終了時刻が近付いていた。

「じゃあ、今日はここまで…、あっ、そうだ!日曜に、みんなで行きたいところがあるし!」
一舞が、かばんからチラシを取り出した。

「何のチラシですか?」
「チャスコに、フラッペチーノのお店が来るんだって!」

フラッペチーノとは、都会で大人気の、生クリームやフルーツをトッピングしたフローズンドリンクである。
倉野川市にはフラッペチーノの販売店舗はないが、次の日曜日から、チャスコに期間限定で出店をすることになったのだ。
地方に展開をしていない大手チェーンが、地方のショッピングモールやスーパーへ、イベントなどでの限定で出店をするのは、近年よく見られている。

「ふおおおっ…、倉野川にフラッペチーノさんが来るんだねっ!」
チラシを見て、まり花の眼が輝く。

「まり花…その言い方、ダサく聞こえるしっ!都会で大人気なら、あたしがチェックするしかないっしょ!行かないとか飲まないとか、ありえないしっ!」
「チャスコにフラッペチーノ…、どちらも、保身を感じますね…。」
「それは言わない約束めう…。そのままは、書けないめう…。」
「ねぇ、みんなで行ってみるしっ!」
一舞がみんなを誘う。

「行ってみようよっ!どんなのか、食べてみたいねっ!」
「行くめうっ!」
「そうですね。…凛ちゃんは?」
「…一時の流行や報道に惑わされ軽薄に足を運ぶのも、愚昧な行動だとおも」

ぐう〜っ…。

言うか言い終わらないかの絶妙のタイミングで、凛のお腹が大きく鳴った。

「…凛ちゃん、フラッペチーノさんのお話で、お腹がすいちゃったの?」
まり花にツッコまれ、凛の顔がいつものように赤くなった。

「…えっ、こっ、これは、その…。」
お腹を押さえて、うろたえている。

「アハハハ!凛、行くしっ!」
「そうめう!口ではカッコつけてても、身体は正直めう!」
「めうちゃん…。その言い回しは、とってもとっても、誤解しか生まない気が…。」

みんなが騒いでいると、

ガチャッ!

「あの〜、まだですか?そろそろ次の方の予約が…。」
音楽スタジオの店員が、ドアを開けて声を掛けて来た。時計の針は、終了時間をとうに過ぎていた。

「やっば!早く片付けないと、延長料金を取られるしっ!」
「イブちゃんが、終わり間際にそんな話をするからですよ!」
五人はあわてて楽器を片付け、逃げるように音楽スタジオをあとにした。



次の日曜日。午前10時。

「みっ、みんな、おはようー!」
まり花が待ち合わせ場所の、チャスコ入口まで走って来た。

「おはよう、まり花ちゃん。」
「おはようめう!」
「…休日で、惰眠を貪ってたのね…。」
「遅いし、まり花っ!みんなもう、集まってるから。」
すでに、まり花以外の四人が揃っていた。

「はぁっ、はぁっ…。ごめんね、ちょっと寝過ごしちゃって…。」
「流行のチェックには、規則正しい生活も大事だしっ。じゃあ、みんな揃ったし、行こっ!」

口調と内容がまるで一致していないセリフを言い、一舞が四人を先導する形でチャスコの店内に入った。
日曜日ということもあり、店内はにぎわっている。

「それで、売り場はどこですか?」
咲子がキョロキョロ辺りを見回す。
一舞が、先日のバンド練習の時に持って来たチラシを見た。

「えーっと…、そこの突き当たりで、10時半オープン…、って、えっ?」

フラッペチーノのお店の前には、すでに20人程度の行列が出来ていた。

「マジっ!?もう、こんなに並んでんの?」
「ふおおっ、フラッペチーノさんの行列だよぉっ!」
「…まりり、その言い方だとスイーツが並んでるめう。」
「早く列に入らないと、後ろが埋まりますね。」
五人は列の「最後尾」の札が立っているところに入った。

『こちらがイベントのメニューになります。お待ちの間にご覧ください。』
チャスコの店員が、列に並ぶ人に順番にメニューの紙を渡していき、まり花たちにも行き渡った。

フラッペチーノのメニューは、
・メイプルシロップ
・マンゴー
・紫いも
・いちご
・イカスミ
の五種類である。

「うわぁ、どれもおいしそうだねっ!」
「イカスミは、明らかにネタ枠だと思うめう…。」
「あたしは、やっぱり一番人気のがいいし!」
一舞の言葉を受け、咲子がチラシを配っている店員に質問をした。

「すみません。この中で一番売れているのは、どれですか?」
『そうですね、一番人気で定番商品なのは、マンゴーになります。』
「じゃあ、あたしはマンゴーね!色も黄色いし、あたしにうってつけだし!」
一舞が、まるで子どもみたいにはしゃいでいる。

「うーん、いぶぶに取られためう…。」
「めうちゃんも、マンゴーを頼めばいいじゃないですか?」
「…何か、同じ味を選んでも、つまらないめう。ちょうど五人だし、みんな違う味にすればいいめう!」
「めうめう、面白いねっ!飲み比べも出来るし。」
「まりり、さすがめう!という訳で、めうはいちごにするめう。」
「よーし、じゃあ、私はメイプルシロップねっ!」
めうとまり花が、続けて頼む味を決めた。その勢いに、咲子と凛はあっけに取られている。

「あの…、私と、凛ちゃんは?」
「…愚昧な扇動に乗せられて我を忘れるなんて、恥ずべきことね…。」
「にひひ…!お腹を鳴らした人に、言われたくないめう!」
「うっ…、あ、あれは…。」
めうのツッコミに、凛は言葉を失う。
続けて、
「さききは髪が紫だから、紫いもでいいめう。りんりん先生はダークだから、イカスミめう!」
勝手に咲子と凛のメニューを指定した。

「そんな決め方、ありですか!?」
「…何で私が、ネタ枠のメニューを…。」
「いいじゃん、みんなイメージカラーみたいだし。それに、飲み比べをしたら同じだし!」
一舞が咲子と凛を、半ば強引に説得した。
そのとき、
『大変お待たせいたしました。ただいまより、フラッペチーノの販売を始めます。順番にお進みください。』
定刻の10時半になり、店員の販売開始のアナウンスが館内に流れた。
その間にも、五人の後ろに新しく列は伸びている。列全体で4〜50人くらいだろうか。

「こんなに集まるなんて、すごいですね…。」
「倉野川のどこに人がいたの?って、感じだよね…。」
「やっぱり、ブランドの力は絶大めう。」
改めて、三人が感心した。

「私たちのライブも、フラッペチーノさんに負けないくらい、たくさんの行列が出来るようにならなきゃねっ!」
まり花が行列に刺激を受けたのか、言葉が強くなる。

「まり花…。もう、フラッペチーノが人の名前になってるし!」
「スイーツと音楽を比べるのも、いかにもまりりらしいめう…。」

そして、五人の順番がやって来て、
まり花…メイプルシロップ
一舞…マンゴー
咲子…紫いも
めう…いちご
凛…イカスミ
味のフラッペチーノを、それぞれ買った。
「すみません、スプーンもください。」
と、シェア用のスプーンも五本もらった。

「どこか、座れる場所はないかな…。」
まり花がキョロキョロしていると、店員から、
「あちらに特設のスペースがありますから、そこでお召し上がりください。」
と言われた。
見ると、空きスペースにテーブルや椅子がセッティングされ、すでに座っている客もいる。

「じゃあ、行こうかっ。」
まり花の呼び掛けに、五人は特設スペースに行き、席に座った。

「よーしっ!やっと、飲めるしっ!」
一舞がフラッペチーノを見て、わくわくした表情をする。
フラッペチーノは、フローズンドリンクの上に生クリームと、それぞれの味に対応したトッピング(マンゴー、紫いも、メイプルシロップ・イカスミのクッキーチップ、いちご)が乗っていて、見た目にも目を引きつけ、おいしそうに見える。

「溶けるから、早く飲むめう。」
「そうだねっ!じゃあ…」

『いただきます!』

「…。うわぁ、おいしい!」
一舞が喜びに満ちた顔をする。

「うん、すっごく甘くておいしいねっ!」
まり花も一舞に答えるように、おいしさに驚く。

「…こりが、都会の味めう…。」
めうが涙ぐんでいる。

「アハハ!めう、オーバーじゃん!都会じゃ、これが普通なんだしっ。」
「フラッペチーノさんが、毎日でも飲めるの?ふおおっ…、都会ってすごいねっ!」
「…さすがに毎日は、身体を壊すめう…。」
「ねぇ、イブとめうめうのも飲ませてよっ!」
まり花が、他の味に興味を示す。

「はいっ。じゃあ、まり花のもね。」
「飲んでみたいめう!」
と、三人でシェアを始めた。

「うん、イブとめうめうのも、とってもおいしいねっ!」
「果物がそのまま入ってる感じめう。」
「こりゃー、行列も納得だわ…、んっ?」
と、一舞がまり花のほっぺたに生クリームが付いてるのを見つけた。

「あのね…、何であんたは普通に食べてて、そんなところにクリームを付けるの?」
「えっ?ほっぺたに?じゃあ、イブ、ちゅーして取ってよっ!」
と、まり花が一舞にほっぺたを突き出した。

「…ちょっ、からかうなし!人前でそんなこと、出来る訳ないじゃん!」
一舞のほっぺたが赤く染まる。まり花はクリームを付けたまま、ほっぺたをふくらませた。

「えーっ…。…じゃあっ、誰もいなかったら、してくれるのっ?」
「そんなへりくつ、言うなし!」
「だったら、めうがするめう!」
めうがまり花に飛び付いた。

「めう、やめなし!あたしがハンカチで取るから!」
「まり花のほっぺたは柔らかそうだから、めうのちゅーで取るめう!」
「やめて、やめてっ、二人とも!私のために争わないでっ!」

まり花が一舞とめうの間に入るが、
『その前に、自分で取るしっ!(取れめう!)』
二人が、同時にまり花にツッコんだ。

三人の騒ぎぶりを横に。

「…イカスミ…。この予測不能かつ愚昧な取り合わせは、謎だわ…。」

凛はイカスミのフラッペチーノを前に、ひとり頭を抱えていた。自分の想像の範疇を超えたものが、目の前にある。

「…んっ?」

ふと横を見ると、咲子が紫いものフラッペチーノを、真剣な表情で飲んでいた。と言っても、一度にではなく、一口一口確認をするように飲み、スマホのメモ帳に、何かを入力している。

「…貴方は、何をしてるの?」
「あっ、凛ちゃん、ごめんなさい…。ちょっと、分析というか、研究をしてるんです。」
「…研究?」
「はい。まり花ちゃん達が飲んでいるフルーツとかの味は、元の素材がおいしいので、ある意味では誰でも無難に作れるんですよ。」
「…言われてみれば…、確かに、そうね。」
「でも、この紫いもや、凛ちゃんのイカスミのような、一見ミスマッチでくせのある素材は、本当に研究をしなければ、上手くスイーツに落とし込めないんです。」
「…なるほど。」
「ネタ枠、というと、軽い言葉だけで終わってしまいますけど、スイーツとして完成した商品として出すというのは、やっぱり大きな企業だから出来得ることだと思います。」
「…喫茶店でも、フラッペチーノを出すつもりなの?」
「アハハハ、それはしませんよ。ただの二番煎じになりますし、簡単に真似は出来ませんから。でも、どういった配合をしているか、味のバランスをどう取っているかを私なりに調べて、いいところは参考に出来たらと思ってます。」

咲子の研究熱心な姿勢に、凛は感心した。
そして咲子が、手を付けてないイカスミ味のフラッペチーノに気付いた。

「…あれ、凛ちゃん、まだ飲んでないんですか?」
「…そ、そうね…。何となく、ひるんじゃって…。」
「おいしいと思いますよ。勇気を出して、トライしてください。」
咲子に後押しされて、凛はイカスミ味のフラッペチーノを一口飲んだ。

「…。あれ?…悪くないわね…。」
意外なおいしさに、凛は目を見開いた。

「ちょっと、私にも飲ませてください。」
咲子も一口飲んだ。

「…うん、イカスミの風味が前に出てますけど、アイスの甘さとマッチしてますね。」
「…そうね…。思ったより、おいしいわね。」
「本当に、企業努力のたまものですね。私の紫いも味も、試してください。」
と、紫いも味のフラッペチーノを凛に渡した。

「…。こっちは色だけで、味は普通のいもね。」
「色が違うだけで、味は同じですからね。でも、いもの風味を活かしていて、こっちもすごいと思います。」

と、
「ねえっ、さきちゃんと凛ちゃんのも飲ませてよっ!」
「イカスミが気になるし!」
「いただきめう!」
まり花たち三人が、咲子と凛の方に駆け寄り、紫いもとイカスミのフラッペチーノを奪い取った。

「ふおおっ!おいもさんとイカさんのもおいしいっ!」
「うわっ!こっちもイケてる味だしっ!」
「ネタ枠なんて失礼めう!」

「ちょっと、まり花ちゃんたち…。」
三人のお祭り騒ぎのノリに、咲子と凛はすでについて行けなくなっている。

「…貴方たちの分は?」
凛が尋ねた。
すると、一舞がばつが悪そうに、
「えっ?…あー…、ごめん…。もう、飲んじゃった…。」
と話した。
さっきまで三人が座っていた机を見ると、空っぽの容器が3個あった。

「全部飲んじゃったんですか!?早過ぎますよ!」
咲子が驚くが、
「だっ、だって、おいしかったんだもん…!」
「そうめう!なくなるのは仕方がないめう!」
まり花とめうが、自己弁護のように答えた。

「まり花ちゃんたちのも、飲んでみたかったですね…。」
「…ネタ枠を押し付けられて、ネタ枠を取り上げられて…。…愚昧ね…。」

まり花たちが騒いでいる間にも、フラッペチーノは行列が途切れることなく売れ続け、チャスコは大繁盛だったという。

帰り道。
五人は騒ぎながらもフラッペチーノを飲んで、チャスコをあとにした。

「とってもとっても、大賑わいでしたね。イブちゃん、満足しましたか?」
咲子が一舞に話を振る。

「…うん、おいしかったよ。」
と答えるが、一舞の顔はどことなく浮かなく見える。

「…どうしました?あんなに楽しみにしてたのに。」
「うーん…。おいしいのはおいしかったんだけど…、なーんか、物足りなかったんだよね。何でだろう?」
「イブもなのっ?…うん。私も、そう思ったよっ。」
まり花も、一舞に同調する。
「めうも…、そうめう。確かに感動したし、おいしかったけど…、不思議めう。」
続けて、めうもこう言った。

三人の感じた物足りなさとは、何なのだろうか。少しの間、沈黙が続いたが、凛が静かに話し出した。

「…私は、喫茶店の方がおいしいと思うわよ。」
「…えっ?」
「…マジ?」
「…本当ですか?」
「…めう?」
凛の意外な言葉に、四人が順番に驚いた。

「…全国展開のチェーン、特に、飲食のチェーン店は均一化、平均化の象徴で愚昧な存在と軽んじられて見られることが多いけど、如何なる時にも誰にでも受け入れられる及第点の味を提供出来るのは素晴らしいし、社会的にも意義のあることだと思うわよ。」
「…。」
「…だけど、喫茶店の味には店主の人柄や背景などを知っているから、元々の味の良さの上に情緒的な味覚も加わると、私は考えているわ。…依怙贔屓や廃れゆく商店街を思うが故のノスタルジーと言われてしまえばそれまでだけど、素材や技法のみではない味の要素もあると考えるのが、一番妥当な答えとみていいと思うわ。」
「…。」
「…?…貴方たち、どうして黙って…、えっ!?」

凛が後ろを振り向くと、まり花たち四人が立ち止まって涙を流していた。
それも、めうがフラッペチーノを飲んだときのような涙ぐみ程度ではなく、まるで滝のような滂沱の涙である。

「…りっ、凛ちゃん…!…な、何言ってるか全然分かんないけど、私たちのことが好きなんだねっ…!」
「…凛が、そんなことを言ってくれるなんて、ミラクルだしっ…!」
「…そこまで思い入れていただけて、とってもとっても、嬉しいです…!」
「…りんりん先生もいつの間にか、ぺったんたん以外は成長しためう…!」

「…ちょっと、大袈裟過ぎよ…?」
「りんちゃん!」
「リン!」
「凛ちゃん!」
「りんりん先生!」

まり花は凛の正面、一舞は左肩、咲子は右肩、めうは背中にと、四人が同時に泣きながら抱きついた。

「!?、あっ、貴方たち…?」
「うわぁーん!りんぢゃーん!…大好きだよぉっー!」
「リンーっ!…どこにも行かないでーっ!」
「凛ちゃん!…本当に、大好きですっ!」
「りんりん先生ー!めうも、大好きめうーっ!」

一気に抱きつかれたことと、まり花たちの思いと体温の高さに、凛は立っていられなくなった。

「…ふおおっ…。あ、あり得ないしっ…。公衆の面前で…、抱擁なんて…、とってもとっても…、破廉恥…めう…。」
凛は四人の口ぐせを言いながら、その場にへたり込んだ。
そして、

ぐう〜っ…。

凛のお腹がまた鳴った。続いて、

ぐう〜っ…。

咲子のお腹も鳴った。

「えっ?さきちゃんと凛ちゃん、お腹が空いたのっ?」
まり花の問いに、咲子があわてて顔を赤くしながら答えた。

「だっ、だって…、私たち、フラッペチーノを二口、三口程度飲んだだけで、それから何も食べてませんよ?」
「…そう言や、私たちがぶん取ったからだよね…。」
と、一舞がスマホを取り出して、時間を確認する。

「…って、もうお昼じゃない!ちょうどいいじゃん!お腹の音を聞いたら、あたしもお腹が空いて来ちゃったし。」
「シャノワールで、口直しをするめう!」
「そうだねっ!さきちゃんとこで、お昼ごはんを食べようよっ!」
「分かりました。じゃあ、ランチを作りますね。」
「さっすが、咲子!やっぱり、シャノワールが一番だしっ!」
「えーっと…、凛ちゃんは…。」
凛はまだ、へたり込んだままである。

「私とまり花で、抱えて行くし!」
「うん!…凛ちゃん、フラッペチーノさんで、ふらふらになっちゃったね。」
「…あ、貴方たちが、一気に抱きついて来るからよ…。」
凛はふらふらになりながらも、内心では嬉しさを感じていた。

終わり。





















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