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七福

私の母を月に一度、かかりつけ医のところへ連れて行くことがこの一年余り続いている。
この医院の2階には、デイケアの施設が併設されていて、母も週2回、ここを利用させてもらっている。
送り迎えの車に乗り、楽しく通っている様子である。

ある日の月一通院日。
新年初めでもあり、余り混んでもなく、母の一方的なおしゃべりに先生も少し付き合ってくれているようだった。
母が「先生の車のナンバー、七福じゃなー。めでたいなあっていっつも思よったんよ。」
あー、また何をいらんことを言ってーと私が言うと、「あれは、僕の誕生日なんよ」と先生も応じてくださった。「まあ、そうじゃったんかなー」と、満足げな母。その声は、診察室から出るように促し、引っ張るように私に連れ出されている廊下に響いていた。

帰りの車の中、七福、しちふく、シチフク、、、誕生日は、、と運転しながら何気なく思い出していた私は、アッと声が出た。

先生の誕生日って、、しちふく、、しち、7、、ふく、、2、9、、7月29日、、7月29日!!私の親友の誕生日とおなじだ!!シチフク!七福!なんてめでたい!このかた40年近く祝ってきた私の親友の誕生日が七福というなんともめでたい読み方が出来るなんて一度も気付くことがなかった。一度も。それが、齢91歳の多少認知機能に不安の出てきた母に気付かされることになるとは。

年一の健康診断の血液検査の結果ももしかすると私よりも良好な母を後部座席に乗せ、初春の陽射しの中、幸せな時間をじんわり感じたのでした。

今年、60の歳を迎える親友に今更ながらの花向けの言葉を思い浮かべている。

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