#ちぇり怖とーく 【学校】

これはとある廃校になった高校のお話です。
その高校は昼間部と夜間部の二部門あり、どちらも完全定時制(昼は朝からで8:45~13:15、夜は18:00~22:30までのそれぞれ4時間ずつ)というちょっと変わった学校でした。

二部門のうち昼間部の生徒の方が高成績で倍率も2倍前後、一方夜間部は倍率1倍を下回っている年がほとんどで、昼に落ちた人が滑り止めで受けるような立ち位置でした。

昼の方は部活動もそれなりに盛んで、人によっては下校時間をすぎてものこり、夜間部の子達が来る頃まで居残っていた、なんてこともしばしば。

そうすると、夜間部の先生や生徒たちと鉢合わせることもあります。

ある日Aさんは、図書室での読書に夢中になってしまい、気づいたら夕方5時半を回っていました。
図書委員である彼女は1度図書室の鍵を閉めて返さなければならないことを思い出し、司書としての仕事が終わったかどうか簡単に確認します。

貸出図書の返却期日の超過有無
返された本を棚に戻す
床掃除などなど。

特に漏れがないことを確認し、図書準備室にも鍵がかかっていることを確認するAさん。

ふと気づきます。
図書準備室に「鍵がかかっている」?

図書委員もしくは使用者が1人でもいる時は、図書委員の顧問がいるはず。
顧問がいる間は鍵がかかっているはずがないのです。

ドアの横の、禁帯出の図書を渡す時にたまに使う小窓に手をかけたら開いたため、そこから中に声をかけます。

「先生…?いらっしゃいますか?」

返事はありません。

手元の鍵では準備室は開けられないので、急ぎ職員室へ。

昼間部と夜間部の教師がそれぞれ何人かずつ見えたので、Aさんは比較的仲の良いC先生声にをかけます。
「あの、B先生はいらっしゃいますか?」
「ん?Aさん、まだいたの?」
「すみません、本に夢中になっちゃって…。」
「B先生は見てないなぁ。ケータイ置いてるし、準備室に居ない?」
「それが、鍵がかかってて小窓から声をかけても返事がなかったので…。」
「それは変だね…。見に行ってきますか」
「一緒に行っていいですか…?」
「構わないよ。」

AさんはC先生と共に図書準備室に戻りました。
「確かに鍵がかかっているね。…合鍵で開けて、と。B先生?いますか?」

ドアを開けながらC先生が尋ねますがやはり返事はありません。

「電気つけますね」
「ありがと、う…?」

赤。
夕焼けとは違う、赤黒い空間。
床、机、棚、天井まで、赤黒い染みが着いています。
同時に、ツンとする鉄の匂いがAさんの鼻の奥を強く通り抜けました。

「…え?」

作業デスクにもたれ掛かるB先生と、その足元にAさんには見覚えのない男性がピクリともせずに倒れていました。

「救急車…警察…?」
C先生がつぶやいて、飲み込めなかった目の前の状況が理解出来てしまったAさんは、4階建ての校舎全体に響き渡る程の悲鳴をあげ、気絶してしまいました。

数週間後、何とかショックから立ち直ったAさんは、C先生からその事件のことについて詳しく聞きました。

B先生の足元で息絶えていた男性は夜間部の生徒Dだったそうです。
現場にはDの筆跡の遺書があり、恋心を踏みにじったB先生に復讐して自分も死ぬという無理心中をしたという内容でした。

「ただね、あの遺体、2人共死亡推定時刻が3日前…だったのよ。みんな、B先生には当日の朝会ってるのに…。」

「…わ、私、放課後1番で声掛けてもらいましたよ?」

「どっちにしろ、図書準備室で事件が起こるの、これで3回目らしいのよね…。」

「え?」

「全部、教師と生徒の痴情のもつれみたい。」

Aさんは、図書委員を辞めました。
夕方になると、鉄の匂いと赤黒いあの部屋を思い出してしまうから。

犯人であるDの遺体が笑っていたことを思い出してしまうから。

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