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2023年度 デジタルガキ大将キャンプ ご報告


担当:大豆村 伸也(まめむら しんや) 【キャンプネーム】しんちゃん

 今年初めての試みだったデジタルガキ大将キャンプ。担当の大豆村(しんちゃん)です。
 参加して下さった7人の方々、興味はあったもののご都合が合わなかった方々、そもそも存在をしらなかった方々に向けて、このキャンプはどんなものなのか。そして、どんな様子だったのかを紹介したいと思います。


 この「デジタルガキ大将キャンプ」、名前だけではどんな内容なのかピンとこないのではないでしょうか。なんだか、キャンプにデジタルを組み合わせ、近未来の道具を使い、最先端技術を、、、とイメージしてしまいそうですよね。実は内容はいたってシンプルです。キャンプの中でよく扱う火やナイフはとても便利な道具ですが、使い方を間違えてしまうと人の命を奪ってしまう危険な道具です。これはデジタルにも同じことが言え、それらを正しく扱い「道具に使われるのではなく、道具を使いこなせる人」になって欲しいという思いが込められているのが、このキャンプです。
 とはいえ、デジタルというのはとても幅が広いため、今回は地図というポイントに絞り、「大窪池(当校近くの小さな池)のデジタルマップを作る!」というのをテーマにし、2泊3日を過ごしました。

ここからは当日の様子を交えながら紹介していきます。


 まずはじめに、なぜ大窪池のデジタルマップを作るのか、にほんげんき株式会社の原山さん(ウリボー)から説明していただきました。実はこの大窪池はいくつかの伝説があるほど、白川村の人々に愛されてきた歴史があります。ですが、Yahoo!マップにはのっていない、知る人ぞ知る池でもあります。AIですら、捉えられていない未知の世界に踏み込み、デジタルを活用して作り上げていくということに、参加者はドキドキワクワク!モチベーションを高めました。


 ただ、これはキャンプでもあるため、テントという道具を立て、自分たちの拠点である基地を作り上げることから活動が始まりました。

 基地ができたら、本題です。そもそも地図とは何なのでしょうか。
 身近な地図と言えば、やはりスマホのアプリ。行きたい場所へ行く、会いたい人に会うために使うための道具ですが、原理を理解できている人は少ないのではないでしょうか。正直、私もGoogleマップ愛用者ではありますが、そこまで考え使っていませんでした。田舎で暮らし、アウトドアが好きな私ですら、初めての場所に行く時にスマホが無いのは怖いと思ってしまいます。ですが、これは言い換えると「道具に使われている」と捉えることができるかもしれません。このキャンプを通して私自身も再認識することができました。


 その理解を深めるためにコンパスやロードメジャー、iPadのGPS機能を用いて基礎を体験し、最終的には森に隠された宝箱をこれらの道具だけで探すゲームを行いました。宝の中身はなんと、当校オリジナルのシェラカップ!

 ただ、宝物を探すためだけに森を歩いたわけではなく、歩いたルートをGPSで記録し、本題に向けたイメージを膨らませることもできました。

 1日目の夕食メインはピザ。自分で熾した火を使って思い思いのピザを作り上げていました。

 自分で作ったからこそ、その美味しさに大満足!白川村の郷土料理である、すったて鍋と一緒にお腹いっぱい食べました。

 その後、温泉やたき火を囲み、大窪池にまつわる昔ばなしを聞いたのち、就寝。


 みんな元気に朝を迎えました。

 いよいよこのキャンプのメインである大窪池での活動がスタート。実はこの大窪池、ほとりを歩き、上流部へ行くと湧き水が湧き出ているところへ行くことができます。まずはそこを目指し歩き始めました。

 歩きながら、倒木や木の実、大きな葉っぱなど特徴的なものを観察しました。

 また、大窪池はミズバショウの群生地としても有名で春になると大きな花が咲き乱れます。

 湧き水まで最後の上り坂、とても急ですが、おいしい湧き水をゲットするために頑張りました。

 とうとう湧き水ポイントに到着!乾いたのどを潤し、湧き水を水筒にうつし、全員で協力して拠点へ運びました。持ち帰った湧き水はごはんと豚汁をつくるための水として使いました。白川村のブランド豚である結うま豚を使った豚汁はビックリするほどおいしく、みんな何杯もおかわりしていました。

 午後も引き続き大窪池での活動です。
 この時間ではデジタルマップを作るため、メジャーやスケッチブック、iPadなど各々必要な道具を用いて記録をとりました。


 何m地点に蛇がいた、何m地点に栃の実があったなど、昨日の時間が活かされる場面も見受けられました。

時間いっぱい記録をとり、全員が大窪池を大満喫。明日に向けて気持ちを高めました。

 この日の夕食はフレンチのコース料理です。子どもたちは慣れないナイフとフォークに悪戦苦闘。保護者の方々はキャンプとは思えない時間にホッと一息。おいしい料理を味わいながら、ひと時を楽しんでいました。


 夜は松明を灯して夜の森へ出発!なんだか冒険へ出かけるようなワクワク感と静まり返った真っ暗な森の雰囲気にビクビク。

 夜の森を歩ききり、目的地は合掌家屋。昔の人の気持ちになって、囲炉裏の火だけですごしてみました。
 このキャンプはデジタルという新しい道具を使う体験だけではなく、私たちの先祖がどのように生活し、どうやって知恵を絞ってきたのかを体験することも大切にしています。そこに目を向けることによって、今ある便利な道具のありがたみを感じ、理解が深まるのではないかと思います。

 さて、最終日となり、昨日記録したものをデジタルに落とし込む時間です。プログラミングを経験したことのある人もない人も自分なりのペースで丁寧に作り上げていきます。

 デジタル担当の倉本先生(くらも)のアドバイスをいただきながら、自分が持つ「こうしてみたい」を叶えるために真剣な眼差しでパソコンに向き合い、見事全員で大窪池のデジタルマップを完成させることができました。
このデジタルマップはネット上に公開されており、以下URLより見ることができますので、よければご覧ください。
 https://scratch.mit.edu/projects/895381487
 人によっては「こんなものか」と思ってしまうかもしれませんが、一から産み出すというのは本当に大変です。ですが、最初の一歩としては大きな成果だと思います。参加者のみなさん。お疲れさまでした。

最後の活動は白川村という山に囲まれ、雪深いこの地で先人たちはどのように森の資源を自分たちの生活に活かしてきたのかを、実物を見ながら学ぶ時間をとりました。様々なものがあるのですが、その中でも合掌家屋の構造に使われているネソネリネソガケという伝統技術を体験しました。協力して力を込める姿は3日間で育まれた仲間との絆を感じ、完成した時、みんなで達成感を味わいました。

 参加した子どもが「誰がどうやって、発見したんだろう?いろんな植物を一本一本試したのかなあ」と言いました。私はその言葉を聞き、このキャンプの神髄に気づいてくれたのだなと思いました。きっと白川村の先人たちもたくさんの試行錯誤をしたのだと思います。現に、このネソネリ・ネソガケは主に「マンサク」という植物を使いますが、他の植物も使っていたことがわかっています。つまり、今も世界遺産集落として残っているこの村は先人たちの努力の結晶で、今住んでいる私たちはそのことを忘れてはいけないのではないかと思います。
 同じように私たちの生活を便利にしてくれているAIも誰かの努力の結晶で、もっと技術が進んでいくであろう社会は、このことを忘れてしまうかもしれません。このキャンプに参加した方々も日常に戻れば、忘れてしまうかもしれません。ですが、5年後10年後、いつになるかわかりませんが、ふとこのキャンプのことを思い出してもらえれば嬉しいです。

 最後に、このキャンプに参加してくださった保護者様から嬉しいコメントをいただいています。
 「大人が子ども達のために、本気になって創り上げたプログラムは全体をとおして感動に満ちていました。子ども達はもちろん楽しんでくれたと思うし、関わった全ての大人も、子ども心を取り戻す瞬間がいくつもあったのでは。そう思えることが、今の充実感に繋がっているのだと思います。ありがとうございました」

 今回、初めてという事で中々参加者を集めることができませんでした。ですが、私たちにとっても挑戦で、とても緊張していましたが、なんとか無事に終えることができたのは参加して下さったご家族と子どもを送り出してくださった保護者のみなさまのおかげだと思っています。本当に本当にありがとうございました。