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新エネルギーで走る次世代モビリティ

TSCP(Tamagawa Sustainable Chemistry-powered-vehicle Project)

 私たちは持続可能な社会を目指し、再生可能エネルギーと資源循環型エネルギーを組み合わせたシステムによって走る、地球環境に優しい次世代モビリティの研究をしています。TSCPは1997年に太陽光エネルギーの利用技術を研究するためにソーラーカーの研究開発に取り組んできました。国内外の大会に出場し、 JISC/WSR、JISFCで総合優勝などの成績を残しています。
 その技術やノウハウを発展させて、現在は再生可能エネルギーとして太陽光エネルギーと、資源循環型エネルギーとしてマグネシウムを組み合わせたハイブリッド発電システムを研究開発し、それを搭載して走行するハイブリッド・ソーラーカーで実証検証しています。

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 実証試験はソーラーカー大会の新技術開発車両部門に出場したり、自動車専用試験路などで行っており、その成果は学会や公開セミナーなどで発表しています。

私たちの生活を支えているエネルギー

 日々、新しいテクノロジーが生み出され、私たちの生活は便利になってきています。それと同時にエネルギーの消費量が増えてきています。

 電気は様々な方法で発電することができます。現在は必要分を発電してすぐに使う方法が採られていますが、この先、得られた電気を一旦、別の形に変換して蓄えたり運んだりする「エネルギーキャリア」を活用することが重要になってきます。離れた場所で作られたエネルギーキャリアを運んでエネルギーを必要としている場所で発電すれば、それは蓄えた電気を運んだということになります。このエネルギーキャリアを多様化することで、環境負荷の軽減や送電網から独立した電源、地域の特性に合わせたエネルギーの地産地消など、選択肢を増やすことができるのではないでしょうか。

 私たちは海水からも調達でき、発電後に還元して再利用できる可能性を持っているマグネシウムの利用の研究に取り組んでおり、自動車に限らず様々な電源の燃料に利用できるのではないかと期待しています。そこでマグネシウム空気電池に着目し、産学連携にて車載可能にするための電池本体や周辺システムの開発を進めています。

未来を夢見るモノづくり

 TSCPではエネルギーシステムの研究だけでなく、それを実験する車両も自分たちで製作しています。

 これまでに開発してきた競技用ソーラーカーは、空力性能と発電性能の両立を目指した性能特化の設計でした。

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↑ 『Super Genbow』

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↑『White Dolphin』『Dolphin』

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↑ ハイブリッド・ソーラーカー『Apollondine』


 ハイブリッド・ソーラーカー『未来叶い』は、実験プラットホームとして実用車に寄せて2名の乗員の居住環境と車両性能の両立を目指す設計にしました。

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↑ハイブリッド・ソーラーカー『未来叶い』


 現在開発を進めているハイブリッド・ソーラーカー『S-Mg concept』は、実験車両ではありますが、新しいモビリティへの高揚感を呼び起こすプレゼンスのあるルックスと車両性能の両立を目指すデザインにしました。このサイズで4輪の車両だと、カウル後部の形状が大きくなりがちで良い空力性能を得ることは難しいのですが、 『S-Mg concept』ではシャーシ構造を工夫することでカウル形状に独自性を持たせ、後部での空気抵抗の低減を実現しました。マグネシウムを燃料にして走行できるプロトタイプモデルとして、今後実証試験を進めます。

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↑ CADで設計中の画像

2019年度からスタートした『S-Mg concept』の製作過程をご覧ください。

 まずは図面から作ったカウルの断面をつなぎ合わせて、マスター型をつくります。3Dで設計した曲面を実物大で再現するのは難しい!

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表面は照明が反射するくらいまでひたすら磨き込みます。

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 次にこのマスター型の形状を反転させた雌型を作ります。後になって形が歪んでしまわないように、ここは丁寧に作業しないといけません。

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出来上がった雌型もしっかり磨き込みます。かなり良い出来!

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この雌型にカーボンプリプレグを積層して、加熱します。

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 加熱成型が終わると、マスター型と同じ形状のパーツが出来上がります。更にこれらのパーツを組わせて接着。位置がズレ無いように注意しながら作業します。どうしてもできてしまった段差もパテで修正。やっぱり仕上がりがキレイなほうがいいですしね。

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シャーシの作りは車の性能に直結するので、図面通りの寸法になるようにしっかり精度を出しながら組み上げます。

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出来上がったシャーシに足回りの部品を組付けていきます。

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ようやくクルマの形になりました。

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さらにモーターやバッテリー、計測器などを組み込んでいきます。

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今回使うモーターは自分たちで手巻きしたもので、計測器も初マイコンのメンバーが挑戦。

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TSCPで開発中のメカニカル充電方式のマグネシウム空気電池を搭載します。

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完成までにはもう少し細かい部分の作り込みが必要ですが、実証試験が可能なレベルまで到達できました。

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テスト走行

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今後も『未来叶い』『S-Mg concept』の二台体制で、

マグネシウムをエネルギーキャリア=燃料にした充電スタンドなども含め、TSCP製マグネシウム空気電池の開発、マグネシウムの循環利用の基礎研究、インフラシステムや次世代モビリティの研究開発に取り組んでいきます。

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