筑波大学でのHPVワクチンキャッチアップ接種報道のお願い…茨城県内各メディアへの手紙…

2025年3月までのHPV ワクチンキャッチアップ接種を広げるため、各地での努力が続いております。筑波大学では学内で接種できる体制を整える「HPVワクチンプロジェクト@筑波大学」を進めています。大学内での接種を進めるだけでなく、これを地域に広げることこそが求められます。そのため、茨城県内の各メディアに以下の手紙を送付し、大学での接種を取材し、報道するよう依頼しました。以下に、送付した手紙の内容を公開します。
+++++++++++++++++++++++++++++
茨城県内各メディア支社、支局 御中
 
つくば市在住の佐々木徹と申します。記事として取り上げていただきたい話題がありお手紙を差し上げます。
実は4年前にも一度、県内各メディアにお手紙を差し上げたことがありましたが、一社を除いてお返事はいただけず、記事として取り上げていただけたメディアはありませんでした。その時から状況は大きく変化しておりますが、依然残された問題があることから、問題解決に向けご協力いただきたく改めてお願いする次第です。
HPVワクチン接種に関することです。ご承知かと思いますが、子宮頸がんの予防に大きな効果が期待されるHPVワクチンは2009年に承認されたのち徐々に接種が進み、2013年4月には定期接種化されましたが、その頃から接種後にさまざまな症状が現れたという報道が洪水のように流れて社会不安を招き、2013年6月に国は『積極的勧奨の差し控え』という措置によって、定期接種自体は継続したものの接種対象者への通知を停止いたしました。そのため一時は70%以上あった接種率は1%を下回るまで低迷する事態となりました。
諸症状がワクチンを原因とする副反応だという科学的エビデンスは何もなく、問題の諸症状は接種とは無関係に以前から臨床の場でよく見られたという指摘は当時からありました。しかし報道はそうした指摘をほとんど伝えず、ワクチンを原因として重篤な症状が発生したという印象が社会に植え付けられることになりました。
こうした状況が続く中、子宮頸がん対策のためにはワクチン接種を進める必要があると考えた当時つくば市議の山本美和現茨城県議は、2019年9月のつくば市議会で個別通知を求めて質問したのち、厚労省の姿勢を変えるために厚労省担当者にも直接面談して個別通知の必要性を訴えました。この努力が実り、茨城県では2020年6月に各市町村から接種対象者への個別通知が始まりました。私の4年前(2020年7月)の手紙はその状況を受けて、県内メディアの皆さんにこの動きを伝えてほしいとお願いしたものでした(資料1)。
一方、国は積極的勧奨の差し控え以降、厚労省厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会において継続的にHPVワクチンの安全性と有効性について世界中から信頼できる情報の収集を重ねていきました。また2020年、低迷する接種率に危機感を覚える若手医師らは「みんパピ!」というプロジェクトを立ち上げ、社会への啓発活動を始めました(資料2)。さらに大手メディアの中にも従来の報道姿勢に疑問を持つジャーナリストが現れ、科学的エビデンスに基づいてHPVワクチンの実態を伝えることの模索を始めていました。
状況がこうして変化しつつある中、国際HPV啓発デーに当たる2021年3月4日のNHK「おはよう日本」において、積極的勧奨の差し控え以降大手メディアとしてはじめて、HPVワクチンの実態を科学的視点に立って伝える特集が放送されました。これを機にメディア各社においても科学的な視点で問題を見直そうとの機運が生まれ、「みんパピ!」の活動と相まって、社会の意識は大きく動いていきました。こうした動きを背景に、ついに国も安全性と有効性についての十分なエビデンスが得られたとして2021年11月に「積極的勧奨の差し控え」を終了させ、2022年4月より個別通知を行うようになりました。また、積極的勧奨を控えている間に接種機会を逃してしまった平成9年度から平成19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)の女性に対し、改めて無料の接種の機会を与えるキャッチアップ接種を行うこととなりました。キャッチアップ接種の期間は2025年3月末までとなっております(資料3)。
このように、HPVワクチンを取り巻く状況は大きく前進しましたが、かつての薬害報道の影響か、あるいは社会の機運が高まっていないためか、いまだ接種率は十分に回復していない状況です。キャッチアップ接種の期間も残り少なくなった現在、この状況に危機感を持つ関係者はなんとか接種機会を接種対象者に与えたいと工夫を凝らしています。HPVワクチンは半年にわたって3回の接種を行う必要があり、1回目の接種は本年9月までに行うことが必要です。
こうした状況のもと、キャッチアップ接種対象者が多く在学する大学等で接種機会を作ろうとする試みが各地でなされています。茨城県では筑波大学で「HPVワクチンプロジェクト@筑波大学」という計画が4月以降進められています(資料4)。これは接種対象の学生に、ふだん行動するキャンパス内で接種できる機会を作ろうという取り組みで、教員有志が大学、大学病院の協力を得て進めているものです。筑波大学の取り組みはウェブメディアでも詳しく取り上げられました(資料5)。すでに1回目の接種が5月25日に、2回目の接種が6月8日に行われ、次回は6月22日に行われるとのことです。是非、関係者に連絡を取った上で、当日の様子を取材し、HPVワクチン接種の意義、キャッチアップ接種の意義を各メディアで伝えていただけないでしょうか。
こうした大学内での接種は、他にも旭川医科大学、東京女子医科大学、東京大学、千業大学、関西医大、滋賀医大、岡山大学、愛媛大学、福岡看護大、長崎大、福岡大、佐賀大、熊本大、宮崎大で行われているとのことです。こうした取り組みは大学だけで終わらせるのではなく、地域の接種対象の女性に広く伝え、地域全体での接種率向上につなげることが望ましいことは言うまでもありません。それにはメディアの皆さんのご協力が必須です。すでに、長崎県と福井県の取り組みはNHKニュースでも取り上げられています(資料6)。茨城県の各メディアにおいてもぜひ取り上げていただきますようにお願いします。
メディアの報道が社会をHPVワクチンの忌避に導いた事実があります。このままではキャッチアップ接種世代では、接種した世代より有意な死者の増加を招くと予想されていることから(資料7)、メディアの果たすべき責任は重いと考えます。是非、メディアの皆さんにはそのことを踏まえ、今から少しでも回復するためのご協力をお願いする次第です。3年前の積極的勧奨の差し控え終了の決定過程においてもメディアの果たした役割は大きく、ぜひ、前向きに検討いただけますようにお願いします。
筑波大学のHPVワクチンプロジェクトについては、関係者(資料8)に連絡を取っていただき、詳細をお問い合わせいただければと思います。
私、佐々木は数年前からこの問題に関心を持ち、この問題を懸念する県内関係者との情報交換をはかりながら、HPVワクチンに反対するグループ、つくば市当局、メディア関係者との対話を続けて参りました。そうした経緯から、今回、私からこのお願いをする次第です。
是非ご理解の上、取材と報道について検討いただきますように、よろしくお願い申し上げます。
 
佐々木徹

資料
1.     2020年6月に茨城県内において個別通知が始まったことによせての県内報道各社への手紙(佐々木note)
   https://note.com/tsasaki1955/n/n037e91474748
2.     みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト
   https://minpapi.jp/
3.     HPVワクチンに関する情報提供資材(厚労省)
   https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/leaflet.html
4.     HPVワクチンプロジェクト@筑波大学
   ・X(ツイッター)   https://x.com/hpvv_tsukuba
   ・インスタグラム   https://www.instagram.com/hpvv_tsukuba/
5.     HPVワクチンのキャッチアップ接種に大学が力を入れる理由(医療記者、岩永直子のニュースレター)
   https://naokoiwanaga.theletter.jp/posts/8cc26630-1fbc-11ef-970d-fdd9b54d8fcc
6.    各地の取り組みを伝えるニュース  
 長崎大学の取り組みを伝えるNHKニュース(6月7日)

   
 福井市医師会看護専門学校の取り組みを伝えるNHKニュース(6月13日)


   https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukui/20240613/3050018050.html

7.     HPVワクチン接種率の激減による 2000年度生まれの子宮頸がん検診細胞診異常率の上昇(大阪大学研究専用ポータルサイト)
   https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20211220_1
8.     HPVワクチンプロジェクト@筑波大学
   問い合わせ先:筑波大学医学医療系准教授 堀愛(ほり・あい)

 




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?